第133話 弱肉強食
「ユーキ!大丈夫か!?」
爪がかすっただけで、俺の魔装は破壊され、肩を抉り取られた!
エドが敵の攻撃を躱しながら俺に声をかける。
俺は転がりながら自分の肩に治癒魔術を施す。
クソッ!しくった!
眼前にいるのは遂に遭遇したライオン。真っ白な身体に真っ白なたてがみのオスだ。
体高3メートル以上。サイより大きい。体長も5メートル以上はある巨大ライオンだ。
どいつもこいつデカすぎだよね。
俺は、開けた口内にパイルバンカーをぶち込んでやろうと、正面に回ろうとしたときにやられてしまった。前脚の振りが速すぎる!
コーザさんも何度も盾ごと吹き飛ばされている。
俺たちの攻撃も当たらないわけではない。
現に真っ白なライオンは身体のあちこちから、血を流している。
しかし、このライオン、攻撃力だけでなく防御も上手い。
決定的な一打を加えようとすると、そこの魔装が瞬時に硬化されるのだ。
俺の理想としている防御方法なんだけど、危機察知の能力が抜群なんだろう。
アキレス腱を狙っても、喉元や腹を狙っても防御された。
「ユーキ!すまん、右腕がやられた!」
コーザさんの右腕が骨折したようだ。
「上へ!」
俺はそう叫んで、天駆で上空に駆け上がる。
追ってきたコーザさんの骨折をあっという間に治癒する。
そう、治癒速度は抜群に向上した。毎日大怪我してるからね。
グオー!!!
ライオンが上空の俺たちに向かって咆哮を上げる。
まあ、待て。すぐに相手してやるよ。
アイツ、同時に何ヶ所硬化できるんだろう?傷を受けてるところを見ると、すべての攻撃箇所を硬化できるわけではない。まあ、試してみるか。ダメならまた考えよう。
俺は上空に集まった皆んなに作戦を説明する。
そして、散会して配置につく。
「行くぞ!」
俺は全力で土魔術を行使して、ライオンの4本の脚の真下に落とし穴を掘り、落下させたらすぐに土を硬化させて拘束した。放っておけばすぐに脱出されるだろう。
「ルクス!」
ライオンの正面に降り立ったルクスは、覚えたばかりの風のブレスをライオンに向かって思い切り浴びせかけた!これかなり強力なんだよ。
吹き飛ばされまいと踏ん張れば、脚を固定するので、ライオンは脚の拘束から脱出できない!
俺とシャトルはライオンの背後に回る。
「行くぞ!3、2、1!」
コーザさんの掛け声で、コーザさんとエドが正面上空から落下しながら、剣を振りかぶる!
俺とシャトルはライオンの後方から走り、シャトルが尻尾に噛み付く!これはオマケだ。
俺は気配を殺してライオンの腹の下から顎下まで瞬歩で移動する。
コーザさんがライオンの脳天、エドが首筋に向かって剣を叩きつけた!
ガキィンという音がすると同時に、俺は顎下から脳天に向かって全力のパイルバンカーを打ち上げた!
グサッ!
よし!刺さった!
グギャー!!!と上がるライオンの叫び!
もうひと推しだ!俺は刺さったパイルバンカーをもう一度全力で打ち込んだ。
ズガッ!
俺のパイルバンカーが遂にライオンの脳天を貫いた!
ドウン、と音を立てて倒れるライオン。
よし!討伐完了!
倒れた拍子に、脚元を固めていた土がバキバキと破壊された。
「上手くいったな」
エドがホッとしたような笑顔で言った。
「コーザさんもエドも囮役ありがとう」
「今のところユーキのアレが一番強力だからな」
そうなんだよね。パイルバンカーはなぜかイメージが上手くいくんだよ。魔刃のデカいヤツなんて、ギロチンみたいな感じだと思うんだけど、そんなもの見たことないからね。そこがイメージの差になってるのかもね。
お、シャトルが戻って来た。
ちゃんと尻尾を咥えている。
(ユーキ、ユーキ!やっと尻尾取れた!)
ブンブン尻尾を振るシャトル。可愛くてたまらん!
そのシャトルが遠くを見つめて唸り出した。
今度は何だ?俺もサーチ発動だ。
100匹以上の群れが、こちらにすごいスピードで向かって来ている!
ハイエナか?いや、ハイエナの気配はもう覚えた。初見のやつだ。
「あっちから何か来てる。100匹以上の群れだ。スピードも速い」
俺はコーザさんとエドに注意喚起をして、ライオンの死骸を素早くストレージに収納した。
土煙が見えてくる。俺たちも戦闘体制に入った。
すると500メートル手前くらいで、土煙が横に広がり、分散し始めた。
「囲むつもりか。狩り慣れしてやがる」
コーザさんが土煙を睨みながら呟いた。
「ハイエナかな?それにしてもデカい群れだね」
ようやく見えて来た姿。エドが言う通りハイエナに似ている。
しかし一回り大きい。耳も大きく丸い。斑模様。
「リカオンか!」
「リカオン?」
「ハイエナに似たヤツだ。より好戦的かもしれない。どうする?上から始末する?」
「いや、ちょうどいい。地上で集団相手の訓練をしよう。危なかったら上に行け」
コーザさんの言葉で地上戦が決定した。
とりあえず俺たちは背中合わせの円陣を組んだ。
「ルクス、シャトル、地上戦だ。気をつけろよ!」
ワン!ブルル!と気合の入った返事。
さあ、囲まれた!
まず先手を取ろう。
「行くよ!」
俺は、正面の集団に向かって魔弾の機関銃を発射する。バタバタと倒れるリカオン!
通用する!これでも魔弾も魔刃も強くなってるんだ!
コーザさんは大剣でスラッシュを放ち、エドは俺と同じく魔弾機関銃、ルクスは炎のブレス!
おお、シャトルは吠えている。
これで敵は大混乱になるかと思いきや、攻撃を逃れたヤツが次々と俺たちに襲いかかってきた!
俺たちも、剣が振るいやすいように、散会して対集団戦に突入する。
これだけ敵が多いと、さすがに躱しきれずに身体中に攻撃を受ける。どのくらい魔装が強化できているか、成長具合を見るのにちょうどいい。
俺は魔刃刀を振るいながら、蹴り飛ばし、跳躍で躱しながら、また刀を振るう。
俺の学んだ剣、肥前タイ捨流は、戦国時代の剣術で、乱戦を想定しているため、蹴りも跳躍もある荒々しい剣術なのだ。
今のところ魔装はびくともしていない。だいぶ成長したな。死にたくなくて必死になるから、それなりに強化できている。
前方味方がいないことを確認してスラッシュを放つと、一気に10匹くらいを斬り裂いた!
ルクスは強烈な蹴りや踏み付けで、蹂躙している。
シャトルはリカオンに勝るスピードで、小さな身体で密集を潜り抜けながら、敵の喉元に噛みつき絶命させている。すごい!めちゃ強い!ここ36階だぞ!
10分もかからず戦闘は終了した。
夥しいリカオンの死体の中に、俺たちは全員が無傷で立っていた。
更に3日が経過し、俺たちが川沿いを探索しているとき、魔獣同士の激突に遭遇した。
どうも、このサバンナフロアでは魔獣同士も争うようで、ライオンがシマウマを襲っていたり、ヒョウとハイエナが争うシーンなどをしばしば目にした。
ただ、今目の前で繰り広げられているのは、巨大魔獣同士のど迫力シーンだ。体高5、6メートルの茶色の金属を纏ったような巨大なカバと、体長10メートル以上はありそうなトゲだらけの緑の表皮の巨大ワニ。カバには鼻先にサイのような角まである。
カバがその巨大な口を四角に開けて、ゴー!と吠えて前進する。すごいな、何でも丸呑みできそうだ。上顎から生える2本の太い牙もえげつない。
一旦後退したワニが、これまた巨大な口を開けてカバに襲いかかった。カバはその口に目掛けて角を突き刺し、そのまま持ち上げて振り回す。
10メートルほど先の林に放り投げられたワニは、木々をバキバキとへし折りながら転がった。
そこにカバがダッシュで駆け寄り、ワニに噛みつく!
ゴキゴキ!と音をたてながら、カバはそのままワニを噛み砕き、飲み込んでしまった。
対岸の木の陰から見ていた俺たちも唖然とする戦いだった。
「・・・アレ何だ?ワニがあっという間に食われたけど・・・」
「アレがカバだよ」
エドがまだカバから視線を外せずにいる。
「顔は穏やかそうなんだけど・・・」
「見かけに騙されるな。アレは凶暴だ」
コーザさんも驚いている。
「アレは止められんな。普通に突進されても跳ね飛ばされそうだが、さっきのように口を開けて向かって来たら、飲み込まれるしかない」
そうだよね。まるでブルドーザーだ。
「それに全身硬そうだよね。首筋もどこかわからないし」
「確かに。ワニの噛みつきがまったく効いてなかったな」
エドとコーザさんが、どう戦うか思案している。
でも、俺、なんか相性良くないか?
「ヤバッ!気づかれた!」
エドが小さく叫ぶ。
カバがこっちを見ている。あ、目が合った。なんか可愛い。
グワッと巨大な口を開く!急に可愛くなくなった。
「来るぞ!川辺はまずい!下がろう!」
コーザさんの指示で、ダッシュで川沿いの林を抜けて、草原に出る。
後ろを見ると、カバが川を渡りきり、木々をなぎ倒しながらドスドスと追いかけてくる!
草原に出たカバは、グオー!と雄叫びをあげて、巨大な四角の口を開いた。
「ちょっと俺に試させて」
そう言って俺は数歩前に出る。
「ユーキ!」
「多分いけると思うから」
カバが前に出た俺に向かって、舐めるなとばかりに突進して来た!
「パイルバンカー!」
俺は大きく開かれた口に向かって、斜め上にパイルバンカーを撃ち込んだ!
グシャー!という音と共に、パイルバンカーがカバの脳天を突き破った!
ズン、というカバが倒れる音が響く。
「ね」
「ね、じゃないよ!一撃じゃないか!」
「まあね。大体口内が魔装で覆われてることはないから、口内にパイルバンカーを撃ち込めればほとんど倒せる。でも、普通は避けられたり、正面に立たせてもらえないから、中々難しいんだ。でも、コイツ自分から口開けて向かって来るからね」
「なるほど」
「ユーキとは相性抜群ってわけか」
「そういうこと」
カバを倒した後、川沿いのルートを遡っていると、遂に次の階段を見つけた。
「次の階段見つけたよ!」
「やった!やっとかぁ!」
エドが喜びの声を上げる。
このフロアに来て何日だっけ。確かにやっとだよね。
それでも、以前このダンジョンに来たときは、自分たちがゾンビみたいになっていた。
今回は、コーザさんにルクス、シャトルと戦力も増えて、服はボロボロだけど皆んな元気だ。ヒゲもちゃんと剃ってるしね。俺の髪も少しは伸びてきた。
何度か魔獣と遭遇しながらも、順調に階段への道を進んでいると、シャトルが唸り始めた。
シャトルの感知能力はメンバーで一番だ。
シャトルの唸る方向をサーチだ確認する。
来てる!デカい!




