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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
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第130話 瘴気に侵された師匠

 俺はシャトルの側に行き、床をサーチで探る。

 ん?何か遮られているが・・・、地下室か?

 皆んなで周囲を探すと、祭壇の裏にスイッチのようなものが見つかった。

 それに魔力を流すと、ゴゴゴ、と床がスライドして、地下に続く階段が現れた!

 階段はかなり長いが、その先はボンヤリと明るくなっている。

 俺は、サーチで先を探る。今度はスムーズに探知できる。

 円形の部屋があり、中央に人?

 誰かが横たわっているのか?

 するとトーダが俺の頭の上から脱兎のごとく飛び出した!


「あ、トーダ!」

「アカン、ユーキ!イオンや!」


 イオンさん?嘘だろう!

 俺もトーダの後を追いかける!


「ユーキ!」


 後ろでエドの声がするが、それどころではない!

 トーダがあれほど慌てているのだ!


 地下の部屋に飛び込む。

 そこには、魔法陣のようなものの中央に横たわって目を閉じているイオンさんがいた!


「イオン!イオン!」


 トーダが必死で呼びかけている。

 俺もすぐに駆け寄り、イオンさんの状態を見る。

 美しい顔のあちらこちらに五百円玉くらいのどす黒い斑点がある。

 両腕は指先まで真っ黒だ。

 裸足の両足も脛あたりまで真っ黒で、その上は顔と同じような斑点がまばらにある。

 瘴気だ!

 なぜこんな!


「イオン!イオン!なあユーキ!イオン助けたって!頼む!助けたって!」

「当たり前だ!俺が死んでも助ける!」


 トーダがボロボロ涙を流している。


「トーダ!上に上がる!この魔法陣は魔力を吸い取っている!」

「わ!ホンマや!はよ!はよ、イオンを!」

 俺は素早くイオンさんを抱え上げて、魔法陣から引き離す。

 そこにエドとコーザさんがやって来た。


「ユーキ!一体なに・・・、その人は?」

「メイデン師匠だ」

「え?」

「話しは後だ!この部屋はまずい。上に戻るぞ!」


 返事も聞かず俺は階段を駆け上がる。

 トーダがずっとイオンさんの上で、名前を呼び続けている。

 くそっ、何があったんだ!まさか師匠がこんなことになるなんて!

 俺は一気に階段を駆け登ると、後ろのエドに向かって声を上げる。


「階段は元に戻しといてくれ!」

「わかった!」


 俺は必死で元の礼拝堂の広間に戻り、ストレージからベッドを出してイオンさんをそっと寝かせる。

 トーダは、イオンさんの上で泣き叫んでいる。


「トーダ!退いてくれ!瘴気を吸い出す!」


 ピョンと飛び跳ね、トーダが俺の肩に乗った。


「ユーキ!頼む!助けたって!イオン助けたって!」

「任せろ!」


 俺は横たわるイオンさんの顔に手をかざす。

 しかしひどいな。ルクスのときより瘴気の汚染がひどい!

 よし!全力で浄化だ!


 瘴気や雑菌、臭気などの浄化になると、単なる放出と違って、一旦出た魔力が瘴気などを集めて俺の中に戻ってくる感覚になる。特に瘴気の場合は強烈だ!オエッ!

 しかし負けてられん!一刻も早くイオンさんを助けなければ!

 瘴気は身体の末端から侵食しているような気がする。感覚的に、頭に行ってしまうのは不味いように思う。だからまず顔や頭部から浄化だ!オエッ!


 全身から汗が吹き出す。俺の顔からも汗がボトボト落ちる。トーダの涙も。

 しかし、やめられない!

 顔から首の辺りは終わった。

 胸にから腹部にかけて、やむを得ず服をめくって中を覗くと、やはり黒い斑点が随所にある。

 焦るな!落ち着いてやるんだ!


 胸から腹部が終わり、腕に移る。

 これ、手を握って吸い出した方が早くないか?

 俺はイオンさんの右手を両手で握り、瘴気を吸い込む感覚で浄化を念じる。


 ウオエーッ!!!


 俺は顔を背けて、盛大に腹の中のものを吐き出した!


「ユーキ!」

「だ、大丈夫」

「しかし!」

「ホント大丈夫だから」


 今まで黙って見ていたエドが駆け寄って来た。

 しかしまだ浄化をやめるわけにはいかない!

 いやぁ、この吸い込む感覚でやると、一気に瘴気が吸い出せる。吐き気も一気にくるけど。

 イオンさんの真っ黒だった腕が、少しずつ黒さが薄くなってくる。オエッ!

 クソッ、女神様め!中途半端な能力寄越しやがって!ゲボッ!


 その後俺は何度吐いたのだろう。

 横に桶を出して、そこに吐き続けたが、途中から胃液しか出なかった。


 何時間経ったのか?

 俺はようやくイオンさんの浄化を終えた。

 裸にするわけにもいかないので、服を捲ってそっと確認したが、黒い斑点はどこにも見られない。浄化をしても、瘴気が入ってくる感覚はない。

 俺はストレージから椅子を出して、グッタリと腰かけた。

 周りを見ると、俺の吐瀉物だらけだ。汚ねえ!慌てて浄化をかける。


「トーダ、終わったよ」

「大丈夫か?イオン助かるか?」


 か細かったイオンさんの呼吸は正常に戻っている。

 まだ目覚めないが、もう大丈夫だろう。


「多分大丈夫だ。呼吸も安定してるし。多分魔力が枯渇してるんじゃないかな?」

「ホンマや!魔力がメチャ減っとる!」

「大丈夫、自然に戻ると思うよ。スキャンして見たけど、魔力以外にはおかしいところはないし。あとは自然回復を待てばいい」

「ありがとうな、ユーキ!ありがとうな!」


 トーダが俺の腕にしがみついて、またボロボロ涙をこぼす。


「こんなの当たり前じゃないか。だって仲間で家族なんだろう?」

「せや!ワイらは家族や!」


 そう言って、また泣き出した。

 トーダは本当に純粋でいいヤツだ。

 ルクスもシャトルも心配そうに俺の顔を見ている。

 俺はニッコリ笑って見せる。

 シェフィールドの家族もできたけど、トーダもルクスもシャトルも、皆んな俺の家族だ!


「ユーキ、終わったのか?」

「ああ、ごめんエド。どうにか終わったよ」


 エドとコーザがベッドの側に来た。


「大丈夫か?顔が真っ青だぞ」


 コーザさんが心配そうに聞いてきた。


「大丈夫です。すぐに戻ると思います」

「それでユーキ、この人は?さっき師匠がとか言ってたけど」

「エド、信じられないと思うけど、この人はメイデン師匠だ」

「ええ!?だって・・・」


 エドの目がまん丸になる。

 そりゃそうだよな。こんな超絶美人があの意地悪婆さんだなんて。

 そこで、俺はメイデン師匠が半精霊で、長い時間生きていること、その不自然さを隠そうと、魔術で老婆に変身しているけど、こっちが本当の姿であることを説明した。


「目覚めたら本人に確認するけど、一応秘密だと思うから、そこんとこよろしく。コーザさんもよろしくお願いします」

「わ、わかった。でも、まだ信じられないよ」

「俺も承知した。しかし、あの高名なメイデン様がこんな美しい女性だとは」


 コーザさん、また顔を赤らめてるよ。この人、そのうち悪い女に引っ掛かったりしないかな?


 結局、イオンさんの治療には3時間ほどかかったらしい。

 疲労感はそれ以上だ。

 今日はもう休みたいが、ここで休むわけにもいかないので、セーフティエリアまで戻ることにした。

 イオンさんはルクスの背中に乗せて行く。

 途中の戦闘は、俺が疲労しているため、トーダが全部やってくれることになった。

 トーダは現れた魔獣やアンデッドを一瞬で吹き飛ばすか燃やすかして、コーザさんを驚かせた。おかげで、俺たちは、まったく速度を緩めることなくセーフティエリアに帰還することができた。トーダが強すぎな件。




 セーフティエリアで一夜を過ごした俺たちは、一直線で36階への階段に向かった。

 イオンさんが目を覚さないのを心配したトーダが、夜のうちに飛び回って、階段を見つけてきてくれたのだ。とにかく、今はイオンさんを早くランカスター家に連れて行き、回復させることが第一だ。このため、途中の魔獣たちはすべてトーダが処理してしまい、3時間ほどで階段に着いた。

 35階の休憩エリアには、双翼のポーター役の人たちが待機していたが、軽く挨拶だけして俺たちは地上に帰還した。

 その後、レクシャールの代官から馬車を貸してもらい、一気にランカスターの城に戻った。

 ランカスター城には、ジェームス様たちの不在を預かるため、長男で後継のチャールズ様が在城して領政を行っている。

 城に着くとすぐにチャールズ様と面会し、メイデン師匠救出を報告した。

 チャールズ様は、流石に次の領主ということで、メイデン師匠の秘密を知っていた。ただし、素顔は見たことがなかったそうで、客室に寝かせられた師匠を見て、その美貌に驚いていた。


「ねえ、ユーキ君。先生って、こっちの姿の方がいいと思わないかい?」と、こっそり聞いてきたのだ。俺もそう思う。イオンさんのときの方が優しいし。あ、また殴られそう。


 ランカスターで一泊したが、イオンさんはまだ目を覚さなかった。呼吸も安定し、顔色も良くなっている。身体的にはもう問題ない。ようやく落ち着いたトーダも、イオンさんの状態をじっくり観察して、魔力が戻れば問題ないと安心していた。その魔力も徐々に回復している。

 なので、俺たちは再度ダンジョンに戻って、下を目指すことにした。ケビンたちとの約束の日まで、まだ2週間近くあるし、何より俺もエドもコーザさんも、強くならなければという焦燥があった。トーダも、イオンさんはもう大丈夫ということで、一緒に行ってくれるという。俺だけではシャトルが心配だそうだ。


 師匠救出の詳細は、昨夜のうちにレポートを仕上げ、朝一番でチャールズ様に渡しておいた。チャールズ様が、王都にいるジェームス様に送ってくれるらしい。

 それから、だいぶ減ってきた食糧の調達を街に出てせっせと行い、再びレクシャールに戻った。


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