第128話 司教(役職は司祭より上です)
「照明を上げます!」
俺はそう言って、俺たちの上空に持続型の照明弾を放つ。
周囲がパッと明るくなる。
うわぁ!前方から骸骨の馬に乗ったフルプレートの騎士たちが、槍や剣を構えて大量に向かってくる!鎧の胸には何か十字のような紋章が入っている。
「消していいですか!?」
相手が騎士なので、一応コーザさんに確認だ。
「頼む!」
了解を得た。俺は向かって来る騎馬騎士群に、浄化を連射した!
一面に舞い上がる光の粒子。
ガコンと音を立てて転がるフルプレート。
しかし、フルプレートの騎士たちが次々と立ち上がってきた。消えたのは骸骨の馬だけ。
「騎士に浄化が効きません!」
「どういうことだ?人間なのか?」
「わかりません!でも、あちらさんはやる気満々みたいですね」
騎士たちは、剣や槍を構えて、足音をたてながらこちらに向かって来る。
話し合いできるのか?人間相手はやはり躊躇いが出る。
でも骸骨の馬に乗ってたよね。どう考えても普通の人たちじゃないよな。
「一応俺が声をかけてみる。しかし、ここはダンジョンだ。敵と考えておけ。乱戦になるぞ」
「はい!」
コーザさんが一歩前に出て、騎士たちに向かって大声で叫ぶ。
「こちらはここを探索中の冒険者だ!そちらは何者だ!」
騎士たちは返事の代わりに、剣を振りかざして走り始めた!
「やるぞ!人間と思うな!相手は魔物だ!」
「はい!」
先制攻撃だ!俺は魔弾を騎士たちに向かって乱射する。
カンカンカン、と魔弾が弾かれる!
嘘だろう!鉄くらいなら貫通するはずだぞ!
エドのファイヤボールも鎧に弾かれる!
騎士たちが斬りかかってきた。
剣を躱して右斜めから袈裟斬りにする!
スパンと、騎士の肩口から鎧ごと斬り裂いた!
血飛沫が舞い上が・・・らない。
え?
「中はスケルトンです!」
フルフェイスの兜がゴロンと外れ、骸骨がこちらを睨んでいる。
「なるほど!じゃあ遠慮はいらんな!」
そう言ってコーザさんが大剣の一振りで騎士数体を吹き飛ばした。
俺は駆け回りながら、次々とスケルトンの騎士たちを鎧ごと斬り伏せていく。本当にこの刀は物凄い斬れ味だ!
エドの剣はクリスさんからもらった剣だ。返そうとしたら拒否された。そしてなぜかクリスさんの腰には同じ剣があった。
そのエドの剣は、鎧を斬り裂くことはできないようだが、何しろ剣速が速い。エドの動きまで加速してくれているようだ。エドはその剣速を活かして、関節部分の装備の薄い箇所を斬り落として回っていた。エドが走った跡には、手足を斬り落とされた騎士がバタバタと倒れていた。
コーザさんは大剣のスラッシュや剣の直撃で、騎士たちを吹き飛ばしまくる。そして兜の取れた頭蓋骨を叩き潰していた。
ルクスは跳ね回りながら、騎士たちを蹴り飛ばし、踏み潰していた。踏み潰された騎士の鎧はグシャリと潰れている。すごい威力だな!
ある程度騎士たちを倒したところで、俺は天駆で駆け上がり、上から騎士たちに向かって浄化を放った。一部でも身体が露出した騎士は、この浄化で光の粒子となった。
あと7体。
コーザさんが素早く兜を吹き飛ばす!
俺はすぐに浄化で光の粒に変えてやった。
「100体くらいいましたかね」
「そうだな。しかしこの鎧は・・・」
俺は転がっている鎧に向かって、ファイヤボール、アイスバレット、ストーンバレットを次々に撃ち込む。しかし、それらは全部弾かれた。
「どうも魔術を弾くみたいですね」
「それに硬い。俺の剣は普通の金属鎧なら斬れるが、これは斬れなかった」
「ユーキの剣、刀だっけ?それすごいな!スパスパ斬ってたね」
「ああ、俺も驚いてる」
「いずれにしても、この鎧は貴重だ。全部回収して行こう」
俺は、転がっている鎧や剣、槍を片っ端からストレージに放り込んでいった。
「さて、あの中、入ってみますか?」
俺は、聖堂のような建物の方を見ながら二人に聞いた。
「良いことが起きるとは思えんが、ダンジョンだからな。入らない法はないだろう」
「ですね」
そうだよね。地上なら不法侵入だが、ここはダンジョンだからね。
そう考えて、建物の方に向かおうとしたとき、また変化が起きた。
建物の中から続々と何者かが出て来たのだ。
「今度は何だ?聖職者か?」
確かに出て来る者たちは、揃いの司祭服か司教服のような白い祭服を着て、手には杖を持っている。胸には先ほどの騎士の鎧と同じ十字のような紋様が赤く染められていた。
「おいおい、今度はミイラか!」
続々と出てきた聖職者のミイラたち。100人くらいか?
彼らは、聖堂らしき建物前で整列して立ち止まる。こちらには向かって来る様子はない。
何が始まるんだ?そう訝しんだとき、彼らの持つ杖が強い魔力を帯び始めた!
「ヤバい!魔術攻撃が来ます!」
俺は咄嗟にマギシールドを張る!
「こっちに集まれ!ルクスも!」
俺たちがいる周辺に向かって、光の球のような攻撃が、正面からも上からも降り注ぐ!
俺はマギシールドをドーム状に展開する。
マギシールドがガンガン音を立てる!質量を持った光の球かよ!
攻撃が止まない!
くそっ!いつまで続くんだ。反撃ができない!
5分ほど続いた攻撃がやっと終わった。
と思ったら、今度は炎の攻撃だ!
俺たちを囲むように数メートルの炎が立ち昇り、頭上からはファイヤボールが降り注ぐ!
「こりゃたまらんな!これだけの魔術師の集団攻撃とは」
コーザさんが思わず叫ぶ。
こっちもたまらないよ!結構攻撃の威力が強くて、マギシールドに集中せざるを得ない。
これは持久戦か?敵の魔力が枯渇してくれるのを待つしかないか。
ファイヤボールも5分ほどで止んだ。俺たちを囲む炎の壁は消えていない。
終わりか?と思った瞬間、危機察知が最大警報を鳴らした!
上だ!
マギシールドが、ガゴッ!と大音量を立ててピシッとヒビが入った!
まずい!
俺は全力でマギシールドを強化する!
間断なく降り注ぐ岩石群!隕石かよ!
俺は必死でマギシールドを強化する。頼む!保ってくれ!
岩石群の衝突音が凄まじく、会話も聞こえない。
あっという間に、俺たちは岩石に埋もれてしまった。
ようやく音が止む。
真っ暗になったマギシールドのドーム内。
俺は小さな照明を出した。
皆んな顔が引き攣っている。俺もそうだろう。
「すみません、ミスりました。散会しておくべきでした」
俺は判断ミスを謝罪した。
「いや、結果論だ。俺もこんなに強力な魔術攻撃を見たのは初めてだ」
「そうだよ、気にするなユーキ。それより攻撃は止んだのかな?」
「多分。俺たちが生き埋めになったと思ったんじゃないか?」
さてどうするかな?
やられっぱなしではいられないよね。
「ユーキ、策はあるか?まずはここから脱出だが」
「大丈夫です。俺が全部吹き飛ばします」
「できるのか?大量の岩石だぞ」
「重力魔術で軽くしてから吹き飛ばすんで平気です」
「そんなことができるのか!」
「はい。それで吹き飛ばすと同時に全員散会します。魔装は強化しておいて下さい。的を絞らせないうちに、天駆で上空から突っ込んで、一気に接近戦に持ち込みます。俺は上から浄化します。浄化は俺たちには悪影響はありませんので、思い切り行って下さい」
飛び出す方向だけ打ち合わせてから反撃開始だ!
「行きます!3、2、1!」
俺は重力魔術で軽くした岩石を、風魔術で吹き飛ばし、天駆で駆け上がる!
重力魔術解除!
質量を取り戻した岩石が、近寄ってきていたミイラ聖職者たちを押し潰す。
敵は散会して上空に駆け上がった俺たちを捕捉できていない。
最も速いルクスが敵の集団に上空から襲いかかった!速い!
俺も、すかさず敵の一団に向けて浄化を放つ!
敵の一画が光の粒子となる。
コーザさんとエドも左右から敵に襲いかかり、首を刎ねて回る。
俺は、上空から次々と浄化して回る。
よし!
戦闘はあっという間に終了した。
「接近戦になれば楽勝ですね」
「まったくだ。遠距離で先制攻撃されると、これほど厄介だとは思わなかったが」
エドとコーザさんが顔を見合わせて笑っていた。
俺はミイラ聖職者たちが持っていた杖を回収して回った。多分この杖、魔術の威力を増幅する効果があるぞ。
しかし、あの隕石みたいな魔術はヤバかった。流星群か?俺もやってみよう。
「さて、ようやく入れますね。魔装はできるだけ強化しておいて下さい。何がいるかわかりませんから」
気配察知で中を確認しても何もいない。でも、こういう場合、ラスボス的なヤツが待っているのはお決まりだからね。
俺たちは慎重に建物の中に入った。
礼拝堂。はるか上まで続く吹き抜けの天井と正面のステンドグラス。
中央の祭壇。
そして、その祭壇の前には、ほらね、ちゃんといましたね。
豪華な祭服を着て、頭に宝石だらけの王冠を被ったミイラ。手には宝石が散りばめられた杖。
それにしてもデカい。身長3メートルはあるんじゃないか?
「ほう、三人か。神殿騎士も神官も倒したか」
喋った!ザラザラとした不快感を催す声。知性が残っているのか?
「ここに入って来た愚か者は初めてじゃな」
あれ?ここは次の階に行く必須ルートじゃなかったのか?
だったら、ヤバそうなヤツだし、出た方がいいかな?
「あのう、ご迷惑なら帰りますが・・・」
「グエッ、ゲ、ゲ、ゲ。まあそう言うな。ゆっくりして行くがよい」
今の笑い声?キモッ!しかもヤバい気配がビンビン伝わってくる。
コーザさんとエドもかなり緊張している。
「いえ、お忙しそうですし、我々も先を急ぎますので失礼しようかと」
その瞬間!
俺たちは空中で十字に磔の形で固定された!
ルクスは地面に這いつくばっている。
ぐっ、ヤバい!身動きが取れない!
「せっかちな奴じゃのう。そう急くでない」
不快な声が笑う。
「1000年ぶりの客じゃ。ゆっくりして行け」
しまったな。双翼の人たちはここに来てないのか。
「あの、私たちも先を急ぐんで、帰してもらうわけには・・・?」
何とか無事に帰れないか聞いてみるが、ダメだろうな。
「せっかく来た客をもてなしもせずに帰すわけにもいかんじゃろう。グエッ、ゲ、ゲ」
まあそうだよね。ヤバいな、コイツレベルが違うぞ。浄化は効くのかな?
横目で見ると、コーザさんもエドも身動きが取れずに脂汗を流している。
「古き者どもが献上してきた贄では汚れ過ぎておってな。お主らは新鮮そうじゃ。ちょうど良い。贄の足しくらいにはなろうて。ゲ、ゲ、ゲ」
何の話だよ!どう考えても、楽しくない話なんですけど!
クソッ、交渉は無理だ!
どうする!?




