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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
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第114話 夏休み

 夏休みが始まった。

 学院終了日、ランカスター家に帰って、シャトルを皆んなに紹介したときは大変だった。

 特にエリカお姉様、エミーちゃん、ケイトさん、アニカさんだ。女性が可愛いものが好きなのはこの世界でも同じだ。

 皆んなに構ってもらいシャトルもご機嫌だった。

 シルビアちゃんの小鳥ももちろん人気だったが、ジェームス様たちはむしろシルビアちゃんが召喚に成功したことに驚いていた。ちなみに小鳥の名前はパールだ。


 トーダとシャトルはすっかり仲良しだ。トーダは2人目の弟ができたと喜んでいる。シャトルにもトーダは見えるようだ。トーダ兄ちゃんと呼ばされている。

 シャトルとルクスもすぐに仲良くなった。会話も通じているようだ。俺も早くルクスと自由に会話したい。

 エミーちゃんとルクス、シャトルは、一日中三人?で遊んでいた。勉強は大目に見てもらった。というのも、俺たちは明後日からランカスターに戻り、レクシャールのダンジョンに潜るからだ。

 エミーちゃんは、ルクスがいなくなることでメソメソしていたが、エリカ様に諭されて我慢することになった。なので今日と明日はルクスと遊ばせている。


 ダンジョンに潜るメンバーは俺とエド、それに真司。そしてコーザさんにケビンだ。

 真司は、俺たちと行動するなら力が足りない。奇襲戦に強さはあるが、素の力をつける必要がある。本人も自覚している。腐っても元公安の外事課の警察官だ。訓練耐性は十分にあるだろう。

 コーザさんは、あの事件をきっかけにもう一度やり直すことを決意した。やはり元近衛騎士団副団長だ。国や民のためという気持ちは消えていなかった。

 俺たちがダンジョンに行くというと、鍛え直したいので同行させて欲しいと申し出てくれた。これはすごい戦力だ。

 そしてケビン。

 ケビンは、俺やエドを見て、自分の力が圧倒的に足りないことを自覚した。そして強くなりたいと熱望し、強くなると決意した。

 さらに諦めていた魔術で召喚術ができたことで、自分の魔術にまだ可能性があることを知った。

 俺たちがダンジョンに潜ることを知ると、是非連れて行ってくれと頼み込んできた。ケビンは、今回のメンバーでは圧倒的に弱い。なので、ついてくるのは無理だと言ったが、どんな目に遭おうと必ずついて行くと必死で頼んできた。

 ケット・シーのミューも、ミューが助けるニャ、と言っていた。

 猫、強いのか?

 結局ケビンの熱意に負けて同行を許可することになった。ただ、実家の目を避けるため、俺たちと別行動で現地のギルドで落ち合うことにした。


 今回のダンジョンでは40階を目指す。まだ誰も到達していないはずだ。

 これまでの事件で、俺は自分の力がまだまだ足りないことを痛感した。古代獣には1人では到底勝てないし、仮面の男たちにも勝てるかどうかわからない。いつ何が起きるかわからない。早急に力をつける必要がある。


 ジェームス様たちは夏も王都だ。

 陛下の命で、このまま王都に残りスタンリーを調べ上げるそうだ。こちらの件は俺に手伝えることはないが、獣人の子供たちの行方は是非解明して欲しい。


 1日をダンジョン活動のための買い出しに費やし、俺たちは早朝にランカスター領レクシャールのダンジョンに向け、馬で出発した。

 真司とコーザさんには新しく馬を購入してもらった。

 コーザさんには俺から資金を提供した。拒否されたが、ダンジョンに行くためには装備と馬が必要だとして押し切った。

 コーザさんは、自身の持っていた資産をすべて亡くなった部下の家族に贈与して、愛用の大剣以外に財産がなかった。ジェームス様からその話を聞いた俺は、迷わずコーザさんに資金提供を申し出たのだ。

 ちなみに俺の預金口座には、知らないうちにランカスターとシェフィールドから、スタンピード鎮圧の報酬として、日本円にして数億円ずつが振り込まれていた。いらんのに。しかもシェフィールドは俺の実家の領じゃないの?

 今後国からも報奨金や古代獣の買取金が入る予定だ。俺とエドはバブルなのだ。


 スローな馬車旅では1週間ほどかかる行程を、馬を走らせて2日でレクシャールに着いた。

 レクシャールの代官屋敷に馬を預けて、冒険者ギルドにダンジョンに入る申請をしに行く。

 冒険者ギルドに着くと、ロビーの酒場で女性冒険者に囲まれたケビンがエールを飲んでいた。

 よし、あいつは仲間から外そう!


「やあ、予定通りだね」

「どちら様でしたっけ?」

「何言ってるの?」

「あいにく女性に囲まれるような方に知り合いはいないんで」

「・・・あれ?なぜか演武会の打ち上げの記憶が甦ってきたな」

「汚いぞ!」

「拗ねる方が悪い!」


 そんな馬鹿なやり取りをして、今回のメンバーが集合した。

 皆でテーブルにつき、飲み物を頼んでから初対面のケビンとコーザさん、真司を紹介する。

 ケビンはコーザさんが元王国五剣と知り驚いていた。真司については、本当は野外実習で見ているはずだが、真司があのときのミラジだとはまったく気づいていなかった。


 その後、受付に行き、コーザさんとケビンの冒険者登録を行った。受付嬢が俺たちのことを覚えており、ギルドマスターを呼んでくれたので、スムーズに登録ができた。コーザさんは元王国五剣ということもありAランク。当然だろう。

 ケビンについては、俺たちの保証込みでDランク。今のケビンの実力ではこの辺りが妥当だろう。

 真司はこの際だからと、所属ギルドをスタンリーからランカスターに変更した。

 ケビンのランクがダンジョンの入場制限にかかるため、全員でパーティ登録をする。

 パーティ名は、すぐには思いつかないので『ネームレス』にしておいた。


 ギルドを出るとき、女性冒険者たちが「あれエド様じゃない?」とか浮ついた声で囁いていた。俺には敵が多い。


 代官屋敷で一泊し、翌朝5時からダンジョン『タイガーピット』に向けて出発する。

 今回の探索にはルクスを連れて行くことにした。まだ子供で可哀想な気がするが、トーダの勧めと本人のやる気で決意した。皆んなは心配してくれたが、まあ見ててくれ。


 ダンジョンの入り口に到着。

 ぽっかりと開いた黒い洞穴。周辺の屋台。久しぶりのダンジョンは何も変わっていない。


「予定通り今日は1日で10階まで行く。リーダーは、コーザさんを差し置いて申し訳ないが俺がやらせてもらう。最初の何階かは力を見たいのでケビンと真司中心で行く。何か質問は?」


 するとコーザさんが申し出た。


「ユーキ様。私も実戦は数年ぶりです。少し肩慣らしをさせてもらえないでしょうか?」

「了解です。ただ、様と敬語はやめて下さい。あの件はもう終わりです。よし、リーダー命令で敬語禁止!俺のこともユーキで。いいよねコーザさん」

「わかりま・・・いや、わかった。ユーキ、よろしく頼む」


 俺はニッコリ笑ってコーザさんに頷いた。


「じゃあ行くよ!怪我は気にしないでくれ。俺が全部治す!」


 例の不思議な感覚を感じながら入り口をくぐり、懐かしのダンジョンに入る。


「10階までは慣らしだ。気配察知と魔装を鍛えてくれ。特に魔装は10時間以上連続展開できるようになってくれ。下の階に行ったら、魔装なしでの移動は命取りになる」

「雄輝さんは、魔装どのくらい続くんすか?」

「俺とエドは今なら一日中でも大丈夫だぞ」

「一日中!」

「何度も死にかけたらできるようになるよ」


 真司とケビンの顔が引き攣っている。真司、お前はAランクだろうが!





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