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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
113/179

第113話 シャトル!

 先生が特殊な粉で召喚陣を地面に描き、魔法陣の構造や召喚呪文の説明をする。

 そして、いよいよ順番に召喚術を試すことになった。

 皆んなワクワクした顔で少年少女丸出しだ。こういうの楽しいよね。


 一人目が召喚を試みる。魔法陣がボワっと光った。

 おおー、と声が上がったが、光はすぐに消えてしまった。

 あぁあ、とため息が漏れる。

 皆んな意気込んで挑むが中々成功しない。本当に難しいんだな。


 順番が進み、12人目の女子のとき、光が収まったときに美しい緑の10センチほどの蝶が現れた。うわー、と歓声が上がる。


「契約の呪文を!」と、先生が指示する。

 女子は慌てて呪文を唱えるが、蝶はフッと消えてしまった。


「うん。素晴らしいね。ちゃんと召喚できてたよ。頑張ればすぐに契約できるようになる」


 先生も嬉しそうだ。


「先生は召喚獣と契約しているんですか?」


 誰かが質問した。

 すると先生が小さく呟き、左腕を横に伸ばした。

 左腕のあたりが白く光、次の瞬間左腕に停まる50センチほどの白銀の鷹のような鳥が現れた!

 すげぇ!これが召喚獣!


「私の召喚獣のシルバーだ」


 うわぁ、と歓声が上がる。


「シルバー!」


 先生が声をかけるとシルバーが飛び立ち、2メートルほどの大きさに変化して、ものすごいスピードで上昇した!なんだこれ!すげぇ!すげぇ!召喚獣欲しい!

 シルバーは光の矢となって急降下すると、先生の前で急停止し、元の大きさに戻って肩に停まった。


 ウワーッ!!大歓声だ!

 欲しい!絶対欲しい!


「シルバーはかなり強いよ。大抵の魔獣は一撃だ」


 何だよ、召喚獣で戦える人が目の前にいるんじゃないか!

 学生たちも目をキラキラさせて興奮している。


「さあ、頑張れば君たちも召喚獣を仲間にできるかもしれないぞ」


 シルバーがパッと消えた。どんな仕組みだよ?


「じゃあ次にいくぞ」


 現実の召喚獣を目にした学生は一段と気合が入ったが、そう上手くはいかない。

 いよいよ金袖の女子だ。しかし失敗。

 次は17人目。シルビアちゃんだ。

 シルビアちゃんも、シルバーを見て興奮したのか、先ほどのような不安はなさそうだ。

 シルビアちゃんが真剣な表情で呪文を唱える。

 これまでよりも強い光。そして光が収まると・・・。

 そこには輝くような青い小鳥が現れ、シルビアちゃんを見つめていた。


「契約を!」


 シルビアちゃんが契約の呪文を唱えると、小鳥が明るく光った。

 そして、ピーと鳴くとシルビアちゃんの肩にピョンと停まった。


「なんと、成功だ!1年生が契約するなんてどれくらいぶりだろう!素晴らしい!」


 大歓声が上がる。

 シルビアちゃんは呆然としている。


「君の召喚獣だ。もしこのまま育てたいのなら名前をつけてあげなさい」

「私育てます!どんな名前がいいんでしょうか?」

「それは君が一生懸命に考えるんだ。愛情をもってね」

「はい」

「全員が終わってから、送還や召喚のやり方を教えてあげよう」

「はい、お願いします」


 シルビアちゃんの周りに女子が集まり、可愛い、いいなぁ、と大騒ぎだ。


「さあ、次行こうか」


 先生の声に、気合十分のイアンが召喚陣に挑む。

 ボワっと何かの影が見えたが消えてしまった。おしい!

 ガクッと落ち込むイアン。次頑張れ!

 次はケビン。

 魔術にコンプレックスのあるケビンはあきらめ顔だ。

 しかし、俺の見るところ、ケビンにできないのは事象変換系の魔術だ。魔装は上手いし、マギシールドも出せる。魔力もかなり多いのだから可能性はある。


「ケビン!本気で!きっとできる!」


 俺はあきらめ顔のケビンに声をかける。

 ケビンはこちらを向いて頷いた。

 ケビンの表情が変わり、真剣に呪文を唱える。

 するとシルビアちゃんのときよりももっと強い光が放たれた。

 光が収まったあとには・・・はぁ?

 二本足で立つ猫がいた・・・。


 猫がケビンをじっと見つめる。

 ケビンも唖然とした表情で猫を見つめる。なんてシュールな光景だ。

 周囲もあまりの事態に声もない。


「お前が呼んだのかニャ」


 も、もの言うた!いかん、ビックリして方言が出た。もとい、猫が喋った!


「ケット・シー・・・」と先生が小さく呟いた。


「あ、ああ・・・」ケビンが戸惑いながら返事をする。


「はっきりするニャ!」

「あ、ああ、僕が呼んだ」

「ミューとキズナ結びたいんかニャ?」

「キズナ?」

「キズナニャ!仲間になることニャ!」

「仲間になってくれるの?」

「そのために来たニャ!」

「ありがとう!うん、仲間になって!キズナ結びたい!」

「頭出すニャ」

「頭?」

「早くするニャ!ミューが消えるニャ!」

「あ、は、はい」


 ケビンが猫に頭を差し出す。

 二本足で立つ猫が自分の額をケビンの額にくっつけた。

 光が一人と1匹を包む。

 少しして光が収まった。


「これで安心ニャ」


 そう言って、猫がニッコリ笑った。猫笑うんかい・・・。


「ミューって君の名前?」

「そうニャ」

「僕はケビン。よろしくねミュー」

「ケビンニャ。仲良くするニャ」


 ケビンの目には薄っすら涙が浮かんでいた。


「すごい!すごい!すごい!ケット・シーなんて初めて見た!そうか!契約ではなくキズナというのか!キズナを結べばこちらに存在できるんだ!現れたのに消えるのは存在時間に限界があったのか!色々わかってきた!すごい!」


 先生が大興奮している。そして大歓声が起こった!

 あ、ミューがビクッとした。


「ミューさん!ミュー様!ミュー先生!色々教えて下さい!」

「なんニャこいつ、気持ち悪いニャ!」

「先生やめて下さい!ミューが怖がります!」

「あ、スマン。つい興奮してしまった」


 先生が頭をかくと大爆笑が起こった。


「ダメだよ先生、猫ちゃん怖がらしちゃー」

「落ち着いてよ先生ー」

「日頃の威厳はどこ行ったー」


 などと野次がとび、笑いに包まれる。


「いやぁ、悪い、悪い。あとユーキが残ってたな。よしユーキ!こうなったらお前もなんか出せ!」


 再び笑いが起きる。

 なんか出せってなんだよ。でも俺も召喚獣欲しい。


 俺は召喚陣の前で真剣に呪文を唱えた。

 するとケビンのときよりもさらに眩しい光が!

 そして光が消えないうちに、茶色毛玉が飛び出してきて俺に飛びついて来た!


 (ユーキ!ユーキ!会いたかった!ユーキ!)


 毛玉が俺の顔中をベロベロ舐める。

 まさか・・・。


 (ユーキ!ユーキ!やっと会えた!会いたかった!)


「シャトル!」

 (そうだよ!ボクだよ!ユーキ、やっと会えた!)


 俺は茶色毛玉を抱え上げる。

 柴犬の子犬。ハルが拾って来た頃の姿。シャトルだ!


「シャトル!」


 俺はシャトルを抱きしめる。


 (ユーキ!ユーキ!会いたかった!寂しかった!やっと会えた!)


 小さな尻尾をブンブン振りながら俺の顔を舐め回すシャトル。

 俺は涙が止まらなくなった。

 嗚咽が出る。

 人目があることも忘れて。

 ユーキ、ユーキと言い続けてくれるシャトル。


 え?

 え?え?

 シャトルと会話してる?

 なんで?


 試しに心話で話しかけてみる。


 (シャトル、しゃべれるの?)

 (しゃべれるよ。前からしゃべってたじゃない)


 通じた!そうか、元の世界では俺が心話ができなかっただけで、シャトルはいつも話してたのか!


 (そうだったのか。うん、今はシャトルの話し、全部聞こえるよ)

 (嬉しい!ユーキ!会いたかった!ハルは?みんなは?)

 (ハルも皆んなもいないんだ。ここは俺だけ。ゴメンねシャトル)

 (そうなの?皆んなに会いたい。でもユーキに会えた!ユーキに会えた!会いたかった!)

 (ありがとうシャトル!またずっと一緒にいような!)

 (いる!ユーキとずっと一緒にいる!)


 俺の涙が止まらない。

 この世界に来て良かった!またシャトルと一緒にいれる。


「ユーキ」


 先生がそっと声をかけてきた。


「あ、はい、取り乱してすみません」

「それは犬でよいのかな?見たことがない種類だが」

「はい、犬です」

「君が知っている犬なのか?」

「はい、子供のころからの友達、いや家族です。死んでしまったのですが」

「それが召喚されたということか・・・」

「はい、理屈はわかりませんが」

「君の家族だった犬に間違いないのかね?」

「はい、本人が言っています」

「言っています?どういうことかな?」

「えっと、心話ってわかりますか?心というか頭の中で会話するんですが。それでこの子と会話しました」

「心話は知っている。上級のテイマーのスキルだな。そうか、心話か・・・。しかし、これまたすごいことが起きたな。それで、君たちは契約というか、キズナを結んでいないようだが、存在が消えないな」

「言われてみれば・・・。どうなってるんでしょう?」

「こっちが聞きたいよ」


 元々キズナがあるんだからいいんじゃないかな?


 シャトルをそっと下ろして皆んなの方を向かせる。


「シャトル、ここにいるのが今の俺の友達たちだよ」


 シャトルがワンと吠えて、尻尾を振りながら皆んなの方にトコトコ歩いて行く。


 キャー、カワイイ!

 女子たちの歓喜の悲鳴が上がる。

 シャトルが女子たちに囲まれて撫でられまくっている。

 シャトル、人懐っこいからね。


「しかし今日は何という日だ!1年生で3人も召喚契約に成功するなんて!その上、ケット・シーに死んだ犬の復活。今日だけで一生分の研究テーマが揃ってしまったよ。とりあえず契約した三人に送還と再召喚のやり方を教えよう。皆も聞いておくように」


 送還は「戻れ」を意味する呪文を唱える、再召喚には魔法陣は不要で呪文だけで再召喚ができるということだった。

 するとケット・シーのミューが異議をはさんだ。


「呪文なんていらないニャ。言えば戻るニャ。呼べば出てくるニャ」

「え?」


 キョトンとする先生。


「ケビン試してみるニャ」

「うん、ミュー、戻って」


 するとミューがパッと消えた。


「ミュー、出てきて!」


 今度は光と共にミューが現れた。


「ニャ!呪文は強制送還と強制召喚のためニャ。無理矢理しなくても大丈夫ニャ」

「何と!そうだったのか!」


 先生が早速試している。

 おお、呪文なしにシルバーが出てきた!送還も上手く行った。

 先生が大はしゃぎだ。今日ですっかり威厳が消滅したな。


 俺も試そうとしたら、シャトルが嫌がった。また会えなくなるのはいやだと言って泣き出す。

 そう言われると俺も不安になってきた。


「大丈夫ニャ。帰るのはソイツの中ニャ。いつも一緒ニャ」

 (ホント?)

「ホントニャ。気持ちいいニャ」


 ミューに説得されて恐る恐る試してみる。

 シャトルが消えた。


 (わぁ、ユーキの中だ!ユーキと一緒!)


 シャトルの声が頭に聞こえる。


 (シャトル、聞こえる?)

 (聞こえるよ!わーい、ユーキと一緒だよ!)

 (出ておいで)


 シャトルがポンと出てきた。

 ワン!と吠えて俺にじゃれついてくる。おかげで俺の顔はベトベトだ。


 (ユーキと一緒!ユーキと一緒!)

 (そうだね、ずっと一緒にいられるね)


 俺はこの世界に来て初めて女神様に感謝した。

 また涙が溢れてきたよ。


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