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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
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第104話 モブの小物

 「誰だ、お前?」

「黙れ!さっさと答えろ!」

「コイツらが訓練つけてやるって言うから相手しただけだよ」

「これのどこが訓練だ!」

「さあな。実剣振り回してくるコイツらに聞いてくれ」

「ふざけるな!全員重症じゃないか!」


 唇をブルブル震わせながら、閣下に何と言えば、と呟いている。

 なるほど、こいつスタンリーの回し者か。

 こいつの傘の下で、獅子の咆哮が好き放題してたってことかな?


「貴様、名前は!」

「俺はお前を知らん。人に名前を聞くならまず自分が名乗れ」

「き、貴様ぁ!私はこのギルドのサブマスター、モブ・コモーノだ!」


 モブの小物かよ!ピッタリすぎだろう。

 スタンリーの寄子にコモーノ男爵家があったな。決まりだ。

 スタンリーは王都のギルドにまで手を回して何を企んでるんだ?


「ユーキだ」

「あ?」

「名前知りたいんだろう?ユーキだよ。耳が悪いのか?」

「クッ・・・。貴様冒険者だな?」

「そうだな」

「よし、貴様は冒険者の資格を剥奪の上、衛兵に引き渡す!」

「へえ、理由は?」

「傷害罪、いや殺人未遂だ!」

「事情も聞かずにか?」

「必要ない!見れば明白だ!」


 確かにこの現場だけ見たらそうかもね。思わず笑いが漏れる。


「何が可笑しい!」

「いや、お前、少し頭が弱いみたいだから説明してやるよ」

「何だと貴様!」

「まあ落ち着け。まず冒険者ギルドは、厳格に規定された冒険者ギルド規則に則って公正に運営される。それ故に冒険者ギルドは各国から大幅な自治を認められている。この規則の運用が適正に行われない場合、ギルドの信用は失墜し各国はギルドの自治権を剥奪するだろう」

「それがどうした!」


 周囲を見ると、皆ポカンとした顔をしている。難しいかな?


「ギルド加入者、つまり冒険者だな、その懲罰および資格剥奪には、三名以上のギルド幹部で構成される査問会を開き、冒険者に聴聞と弁明の機会を与えなければならない。なお、査問会の記録は文書で残し、20年間保存しなければならない」

「は?」

「お前、ギルド規則も読んだことないのかよ。つまりちゃんと会議を開いて冒険者の言い分を聞けってことだよ」


 周囲がザワザワしている。「俺、言うこと聞かないと首にするぞって言われたぞ」、とか「俺も」、と言う声が聞こえる。なるほど、そういうやり方で抑えつけてたわけね。


 モブ君は顔を真っ赤にして唇を震わせている。


「次に、冒険者の懲罰ならびに資格剥奪に関する権限は、当該冒険者が所属するギルドが保有する。冒険者が所属ギルド以外の管轄で起こした事案については、その管轄ギルドで査問会を開催し、その結果に意見を付して当該冒険者の所属ギルドに、その身柄とともに文書で報告しなければならない」

「ど、どういうことだ?」

「お前、本当にサブマスか?つまりよそのギルドの冒険者の処分は、ここではできないんだよ」

「貴様は・・・」

「俺はランカスターギルドだよ」


 そう言って、ストレージから取り出したギルド証を見せる。


「エ、Aランク!」


 周囲のざわめきが大きくなる。


「そして最後に。さっき言った二つのケースで、決定権を持つのはギルド長、つまりギルドマスターだ。サブマスのお前に資格剥奪の権限はないんだよ!」


「嘘だろう」

「騙された」

「散々脅されたぞ!」


 様々な驚きの声が聞こえる。コイツ今までどれだけ悪さしてきたんだ?


「き、貴様ぁ!許さん!不敬罪で斬り捨ててやる!」


 お、切れやがった。名前どおりモブの典型だ。

 面白いからもう少し遊んでやろう。


「俺のどこが不敬罪に当たるんだ?」

「私はコモーノ男爵家の五男だ!貴様は平民でありながら貴族の私に逆らった!立派な不敬罪だ!」

「お前本当に馬鹿だな。貴族に逆らっただけで不敬罪になってたまるか。王国法はそんな理不尽じゃないよ。ちゃんと勉強しろ」

「何だと!」

「不敬罪とは、平民が正当な理由なく王族、貴族の名誉、尊厳を毀損することだ。何でもかんでも貴族に逆らうなということじゃない。貴族の横暴に逆らっても不敬罪は成立しない!」


「マジか…」、「知らなかった」、という声が聞こえてくる。


「うるさい!貴様はここで斬り捨てる!」


 ありゃ、この馬鹿とうとう剣を抜きやがったよ。


「へえ、剣を抜いたか。じゃあもう一つ教えてやる。俺の名前はユーキ・シェフィールド。シェフィールド伯爵家の四男だ。貴族らしく決闘でもするか?」

「え・・・」


 モブ君がポカンと口を開け、手に持っていた剣がガチャンと音を立てて落ちた。


「さて、そろそろ終わりでいいかな?」


 パンパンと手を叩きながら、銀髪の細身のイケメンが現れた。

 誰だ?かなり強い。


「初めましてだね、ユーキ君。僕は一応ここのギルマスをやっているエンシスだ。よろしくね」


 軽いノリで話しているが隙がないな。


「ランカスターギルドのユーキです」


 軽く頭を下げる。


「おーい、この人拘束して地下に入れといて」


 エンシスさんは、モブ君を指差してギルド職員に指示を出した。


「あれ?いきなり拘束ですか?」

「うん、もう少し泳がせとくつもりだったけど。まあ、8割がた証拠は揃ってるから、後は本人に聞こうかな」

「ということは、これまでも色々?」

「そうだね。君のおかげで予定が早まったけどね」

「泳がせてる間に被害者が出ますよ」

「耳が痛いね。ただバックがバックだけに慎重にね。僕も所詮雇われの身だし。わかってもらえるとありがたいけど」

「なるほど。できれば被害者の補償はお願いしたいところですが」

「了解だ。さて、そこのゴロツキどもの処理もやらなきゃいけないし、予定外に忙しくなっちゃうよ。君、うちで働かない?」

「まだ学生なんで」

「そうかい。君みたいな人が来てくれると僕もサボれるから楽なんだけど。ほら、僕じゃあ冒険者になめられるからね」

「ご冗談を。僕では相手にもならなさそうですが。それで、今日はお終いでいいですか?さっきの獣人の子供も気になるので」

「ああ、悪いね。任せていいかい。今日の顛末については後日連絡するよ」

「わかりました」


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