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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
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第103話 成敗

 俺自身はダンジョンやスタンピードで随分と馴染みになったが、本来王国周辺ではゴブリンは滅多に目にしない魔獣ということだった。それが王都の郊外にいるとはどういうことなのか。

 とりあえず始末はしたが、一応冒険者ギルドには報告しておいた方が良いだろう。

 最近ギルドに顔も出していないので、ついでに最近の様子も聞いておこう。

 そう考えて俺たちは王都への帰路についた。



 王都に戻り、ルクスを馬小屋に繋いで冒険者ギルドに入ると妙に人が少ない。

 どうしたんだろう。何かあったのか?

 受付に学院の野外実習の打ち合わせのときに世話になった女性がいたので声をかける。


「あ、ユーキさん。お久しぶりです。髪の毛随分短くされたんですね」

「ちょっとした気分転換です」

「短い髪型もお似合いですよ。それで今日はどういう?」

「王都の郊外で今日ゴブリンを2匹見かけまして、その報告をしようかと」

「え?ゴブリンですか?」

「はい。最近多いんですか?」

「いえ、そんな話しは初めてです。場所はどの辺りですか?」


 俺は、ゴブリンに遭遇した場所などを詳しく説明した。


「ありがとうございます。至急上に上げておきます。多分調査隊を出すことになるでしょう」

「死体は必要ですか?」

「え?お持ちなんですか?」

「はい。ストレージ持ちなので」

「まあ、それは助かります。ではお願いできますか?」

「もちろん。解体場の方でいいですか?」

「はい。それでお願いします」

「それにしても人が少ないですね。何かあったんですか?」

「えっ、それは・・・その・・・」


 受付嬢の視線がギルドの奥をチラチラと窺う。

 あっちは訓練場か?

 サーチで確認する。人が集まっている。訓練場では・・・何だ?5人が小さい者をいたぶっている?もしかして子供?

 俺は急いで訓練場に向かう。


「あっ、ユーキさん!」


 受付嬢が止めようとするが関係ない。

 走って進むと訓練場を囲むように人垣ができている。

 人垣を掻き分けて前に出る。

 そこには痛ましい光景があった。

 血塗れで転がる獣人の子供。それをニヤニヤと見下ろす5人の男。


「殺すなよ、売り物だ」


 どういう意味だ?胸糞悪い!


 隣の冒険者に事情を確認する。


「何があったんですか?」

「見ての通りだよ。またアイツらが・・・」

「なぜ誰も助けない!」

「え?お前知らないのか?相手が悪い…」


 チッ!これは誰も助けに出ないパターンか?


 男の一人が獣人の子供に近づき蹴ろうとしている。まずい!

 とりあえず魔弾だ!

 足を振り上げた男が吹き飛んだ!


「誰だ!」


 俺は訓練場にゆっくりと進み出た。

 人垣にざわめきが拡がる。誰か止めろなどのささやきが聞こえる。

 そうか、こういうことが常態化しているのか。


「何だぁこのガキ。誰だテメェ!」


 いかにもチンピラといった風情の男が俺を睨みつける。


「誰でもいいだろう。それより何をやっている」

「ああ?生意気そうなガキだな。訓練場でやることは決まってるだろう。訓練だよ」


 周りの三人がゲラゲラと笑う。


「ひ弱なニャンコに厳しい世の中を渡って行けるように教育してやったんだよ。どうだ、親切だろう」


 よし、下衆確定だ。


「クソッ、テメェがやりやがったのか!」


 魔弾で吹き飛ばした男がヨロヨロと近寄ってきた。


「ギャハハ、油断してっからだよ!こんなガキにやられやがって」


 仲間の嘲笑に顔を真っ赤にした男が剣を抜いて襲いかかってきた。


「ガキィ!死んで詫びろ!」


 スローモーションかよ。顎に右ストレートをかまして男を吹き飛ばす。こりゃあ顎が砕けたな。吹き飛んだ男は白目をむいて失神した。

 訓練場がシンと静まり返った。

 数秒後、訓練場を囲っていた人垣から、ガラの悪い連中がゾロゾロと現れた。お仲間登場か?


「おいおい、小僧、テメェ誰に手ぇ出したかわかってんのか?」

「知らないな。生憎しゃべるゴブリンを見たのは初めてでね」

「テメェ!!」


 全部で13人か。どいつもこいつも人相が悪い。揃って剣を抜きやがった。


「まあ待て。おい、威勢のいい坊主。条件次第じゃ五体満足で見逃してやるぞ」


 リーダー格らしい髭面の巨体がニヤニヤと話しかけてきた。


「金貨1,000枚持って来い。分割でもいいぞ。テメェ腕に少しは自信あんだろう?金貨1,000枚貯まるまで俺たちのために働けや。どうだ、いい条件だろう」


 俺は髭面を無視して人垣に向かって声をかける。


「誰かその子の手当を」


 あ、さっきの受付嬢がオロオロしながら出てきた。それにつられて数人の冒険者が出てきて獣人の子供を抱えて連れて行った。

 それを確認してから俺は振り返る。


「ゴブリンに金貨は遣えないだろう」

「ははは、気の強えガキだな。俺たちゃ獅子の咆哮だ。聞いたことくらいあんだろう」


 また獅子の咆哮か。ゴキブリみたいにどこにでもいるんだな。


「さあ?知らないな」

「ほう、そうかい。じゃあ忘れられなくしてやろうじゃねえか。いいか、ガキィ。テメェはこの後泣いて金貨を払わせて下さいと言うことになる。まあ生きてればだけどな。ちなみにこれからやるのは訓練だ。訓練で怪我しても死んでも文句言うんじゃねえぞ」

「自分で吐いたセリフだ。少ない脳味噌で覚えとけよ」

「テメェ!やれ!」


 十三人のゴロツキが俺をぐるりと囲む。どうやらいたぶり方はわかっているようだ。

 容赦はいらないな。もっとも剣を抜くまでもないけど。

 前方から一人、背後から二人が同時に俺に向かって攻撃してきた。

 俺は魔装を纏い、一瞬で三人の剣を持った腕を魔刃で斬り落とした。

 死なれても面倒なので、治癒魔術で血止めだけを施す。


 ギャアと3人の悲鳴が上がる。うるさいので蹴りとパンチで顎を砕いて黙らせる。

 再び静まり返る訓練場。

 俺の周りには気を失った三人と、斬り落とされた三本の腕が転がっていた。


「・・・テ、テメェ何者だ・・・」


 リーダー格の髭面が驚愕の表情で聞いてきた。


「ゴブリンと会話する気はない。やるのは討伐だ」

「・・・テメェ、獅子の咆哮を完全に敵に回したぞ」

「元から敵だ」


 ニコリと笑ってやる。まあ、演出だけどね。


「あ、あ、こいつ学院の野外実習のときの・・・」


 一人の男が震える手で俺を指差しながら呟いた。

 ああ、馬鹿王子の護衛にいたヤツか。それより人を指差すな!


「チッ、報告にあったヤツか。最初から気づきやがれ!油断するな!全員でかかるぞ!」


 何だよ、全員腰が引けてるじゃないか。

 いちいち相手にするのも面倒だ。少し強めの魔弾を次々に顔面に叩き込む。

 髭面を除く全員が、あっという間に顔面を血塗れにして吹き飛んだ。


「さあ、一人になったぞ。訓練してくれるんだろう?かかって来いよ」


 髭面は震える両手で大剣を握りしめて、オロオロと周りを見ている。

 ふと誰かを見つけ、喜色の表情を浮かべた。


「ミラジの兄貴!助けて下さい!」


 見ると、あの胡散臭い白髪のミラジが俺に向かって手を振っている。


「馬鹿言うな。俺はとっくに抜けたんだ。ダンナに喧嘩売ったんだろ。命があるように祈っとけ!」

「そんな・・・」


 髭面の顔が絶望に染まる。


「俺も暇じゃないんだ。さっさと終わらせるぞ」


 そう言って俺が近づくと、何と髭面は背を向けて逃げ出した。

 逃がさない。

 俺は一瞬で髭面の前に回り、大剣を持つ両腕に魔刃を振り下ろす。


「待て!」


 人垣の方から慌てた声が上がるが待たん!

 俺の魔刃が髭面の両腕を一気に斬り落とした!


 ギャア!と上がる悲鳴。まあ、血止めはしといてやるよ。


「何をやっている!」


 訓練場に神経質そうな貴族服の痩せたちょび髭男が駆け込んできた。

 誰だこいつ?


「何をやっていると聞いている!」


 甲高いキンキン声がうるさい。


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