①⑤
しばらくまどろみの中に漂っていた美香は、あぁ私は夢を見ているのか、と思った。
実際、夢なのか、想い出にすがっていたのか、美香もハッキリしなかった。
けれど、夢である方が現実逃避しやすいから、と美香本人が感じたのだろう。
だから夢だと判断したようだった。
その中で美香は泣いていた。
目に涙を溜め、潤んだ瞳で真っ直ぐ前を見つめながら、泣いたらダメと言い聞かせていた。
けれど両の瞳から、ポツリ、ポツリと一粒、二粒と頬を伝わって落ちた。
あぁあ。我慢し切れず泣いちゃったじゃん。
ダメな女。2度と泣かないって決めてたのに。
目の前で女性が落下したあの日、美香は号泣した。
号泣した事を誰かに責められた訳でもないのに、美香は自分がいやしい人間に思えて仕方がなかったのだ。
あのような惨事を目の当たりにすれば、大の大人の男であっても恐怖で泣き喚く事もある筈だ。
なのに美香は泣いた事で、大勢の人から優しい言葉をかけられ、抱きしめてもらい、介抱してもらった。
それが嫌だった。女という部分を理由したように感じたからだ。
実際、その時最初に美香を助けてくれた男と半年だったけれど付き合ったわけだから、やはり自分はいやしい人間、いや、女なのだと理解していた。
女を武器にするのが悪だと思う女性がどれだけいるだろう。
自分もいやしいといいながらも、メイクもするしオシャレに気をつかい、下着だってエッチな物も買ったりしている。
矛盾している事はわかっていた。
武器にしたくないのであれば、すっぴんで髪の毛も伸ばし放題伸ばし、ムダ毛処理もしないで、肌ケアもせず、風呂に入らなければいい。
極端な発想だが、女という性を武器にしないとそういう事なのだ。
だが、3度目に泣いた時は、明らかに私は女だった。




