水の神官
ユウトは仮面を外して急いで聖堂めがけて走り出していた。
後ろに見える村長の家には村人たちが群がっており一瞬二人の事が心配に思ったが、あの二人ならきっと大丈夫だと思いユウトはさらに加速した。
「止まれ!ここから先は行かせないぞ!」
「ごめんなさい。今はあなた達にかまっている暇はないので」
他の村人もユウトの進行を止めようとするが、するりと避ける。
村人達も諦めず後ろからそれでも止めようと捕まえようとするが、ユウトはそれを振り切る。
ユウトはそのままの勢いで、聖堂の扉を破壊して中へと突入する。
中に入ると薄暗い部屋の中央に誰かが一人立っていた。
「あら?あなた死んだはずじゃなかったかしら?」
「死んでも死にきれないので戻ってきましたよ」
「それはほぼよかったわね。これでほぼ完成だわ」
俺の目の前にいる女の神官は、特に驚くことも気にすることも無いように話し出す。
「ここには、あんたしかいないのか?」
「そうよ。私はここを守るように教皇様に言われているの。だからあなたがここを通れることは、間違いなくないわ」
「そうかい、でも俺はあんたを倒して教皇に会ってやる!」
「行けるもんなら行ってみな!」
「手加減はしない!」
ユウトは神官を切りつけたが、手に何も感触が伝わらない。
その違和感からすぐにユウトは女神官から距離をとった。
「あら、ほぼ強くなったと思ったけど、切りかかってくるとはほぼ思っていなかったわ」
「お前いったいなんだ」
「あなたはここで死ぬから教えてあげるけど、あなたごときじゃ私は切れないわよ」
そう言うと神官は手を液状に変化させ肩を大きく後ろに動かして振り抜いた。
振り抜かれた腕から何かが放たれ、ユウトはその放たれた何かを避けた。
そのままの軌道で進んだ何かは壁にぶつかり消滅し、当たった場所は大きくえぐれておりその威力を表しているのが分かる。
「どう私の心術は?」
「どうもこうもないよ。俺はここを通ってエアリスに会うからな」
女神官は自信たっぷりに言うが、ユウトを揺さぶることすら出来なかった。そしてその態度が気にいらなかったのか逆に女神官は声を荒げた。
「それも絶対にありえない!あなたはここで死ぬのよ!」
神官はさらに、先ほど同じように振りかぶり打って来る。
なんとか当たらずに神官へ切りかかるが、また感触がそれ程感じられない。
くそっ。どうしたらいい。
「あなたは絶対にここは通れない!それにあなたが連れて来た仲間も私の仲間たちが絶対に始末してくれる!そしてここから私達の野望は始まるのよ」
「それは良かったな!でもそれ、始まる前に終わっているぜ」
「黙れ!そして死ね!」
お互いに攻撃が当たらない膠着状態となってしまっているが、この状況が続いてしまうのはユウトとしては好ましくない。
何とか突破口を開いて急いでエアリスを探さないといけない。
だからこそ、こいつを倒さなければいけないが焦るな、俺。
一進一退の攻防が続くがユウトはとにかく間合いを詰めるしかないと思い、女神官が振りぬいた弾をかわし全力で間合いを詰める。
すぐに防御態勢を取る女神官だが、俺は一撃目にわざと振り抜こうとした剣を止める。
そしてすぐに、反転し本来切ろうとした反対側を切りつける。
「ぐっ、こざかしいッ!」
それを察した女神官は態勢を替えて回避をしようとしたのだが、その剣からは明らかに先ほどとは違う感触が伝わった。
そして、攻撃を受けた女神官は患部を抑えるようにしてユウトから距離をとった。与えた傷はそれ程大きいものではなかったが、当てた場所に回復術を使っているということは、やはり予想は当たっていたようだ。
「やっぱりそうだったか、体を水に出来るなら俺の攻撃を避ける必要なんて無いからな」
「くっ!調子に乗るな‼お前ごとき私の敵では絶対にない!」
「それは、俺が言う言葉だ‼」
俺は呼吸を整え体に力を入れる。
その姿に警戒した女神官はすぐに腕を振り上げ、弾を放とうしたがそれはもうすでに遅かった。
ユウトは地面を蹴り一瞬で女神官に詰め寄り対応される前に一閃の一撃を与える。そしてその一閃が神官を切り裂いた。
鮮血が傷口から吹き出し、確実な斬撃を与えたのだ。
「きょ……うこう……さ…ま」
女神官は地に倒れる。
ユウトが女神官の元を見ると自然に傷口が回復する術が元からかかっているのかその傷口はゆっくりであるか修復されようとしていた。
だがユウトは止めを刺さず気を失っているのを確認して、使える心術で縄と杭を作りだして女神官をすぐに動けない様に縛っておいた。
そして聖堂内部の事はある程度の事は覚えているので地下へ続く階段をすぐに見つけるのであった。
また村人たちもたとえユウトが入ったとしてもこの中に入って来ることは無く、中を覗くことすらなかった。
それだけ、ここには部外者は入れないような心術が使われているのかと思うと村人たちに対して悲しみのような気持ちすらこの時のユウトにはあった。
早く村人のみんなとエアリスを救うためにもそして俺の気持ちにも区切りをつける為にもユウトは急いで教皇を探しに行くのであった。
「無事でいてくれよ、エアリス!」




