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いざ村へ

この話からクライマックスとなります。


ユウトは、教皇を倒しエアリスに無事会うことはできるのか。




 宿を出てユウト達は現在ガルフが用意した馬に乗って移動中である。

 

 空は曇天(どんてん)の曇り空で、今にも雨が降って来そうな雲であった。

 

 そして今進んでいるこの道はエアリスとの思い出がある道だ。

 

 それと同時にユウトはエアリスと一緒に歩いていた時の事を思い出す。

 

 あの時はただただこの世界に来たのを喜んでいた。

 

 多少不便(ふべん)な所はあったけど、常に新しい日常が楽しかった。

 

 依頼も受けることになった時も、どうしようか悩む事もあったがエアリスといられればそれも忘れられた。

 

 しかしこの道は辛い道でもあった。

 

 モンスターと初めて遭遇(そうぐう)するかもしれないあの日は、緊張(きんちょう)でほとんど覚えていない。そして、エアリスと一緒にいるのが辛い日もあった。

 

 最後はこの道に帰ることが出来なかった。

 

 そしてようやく帰ることが出来るこの日をユウトは待っていた。

 

 この先に待っている試練はユウトの望むところ。

 

 エアリスに会うのは少し怖いけど、これがユウトの選んだ選択である。


 「ユウ。もう少しでその村ですがその……大丈夫ですか?」


 「問題ないよ。俺は大丈夫だよ」

 

 ガルフの後ろから顔を覗かせたフィーに笑顔で答える。


 昨日の夜のガルフの問いかけにユウトはかなり動揺してしまった。

 

 しかし、今となってみれば、あの問いは感謝しなければならないのかもしれない。

 

 本当にその場面に遭遇(そうぐう)してしまったら、夜の事が無ければ何をしたか分からない。

 

 もちろん、そんな事が起きないことが一番であることは間違いない。

 

 ユウトは感傷に浸るのを止めて両手で頬を叩いて気合を入れた。

 

 村の門の手前に馬を止めると、門番に待つように言われる。

 

 そして、しばらくすると村長がやって来た。

 

 以前衛兵に聞いた話よりも村長は早く出て来た。そして出てくると同時に三人を見たのだが、特に目立った行動はしなかった。

 

 それもそのはずで、ユウト達はガルフに渡された憲兵の服に着替えており、さらにユウトは仮面を装着している。怪しまれるとしたら仮面ぐらいだが、特に気にされる事もなかった。


 「お疲れ様です。では、こちらが今回分の税になります」


 「確かに」

 

 ガルフは、税金が詰まった袋を受け取る。


 「では、今回はこれで終わりですのでこの後は気をつけてお帰り下さい」


 「いや、まだだ。今回は別の要件も兼ねてこちらの村に来ている」


 「ほっ……ほう。別の要件とは何でしょうかな?」


 「最近、我が国に密航者が入ったという話があり私、王国の騎士団副団長が近くにいたので念の為に確認に参りました」


 「まさか、副団長殿がいらっしゃるとは思いもしませんでした」

 

 しかし村長は焦りもせず淡々(たんたん)と話を続けた。


 「そうしたら早速ですが村長殿にお話があるので、村の中に案内していただけますか」


 「いや、あなた様のような身分の方が入る村ではございませんのでよろしければ、あちらの奥の方で、お話を聞かせていただけますか」

 

 村長が手を指した方には、机と椅子が用意されていた。

 

 机も椅子もそれなりに豪華(ごうか)なもので、ユウトがいた時には見たことも無いものだった。

 

 すでに、このような状況を予想していたのかと思えるぐらいあまりにも不自然な準備がされていた。

 

 しかし、ガルフはそれらに一切目もくれず勝手に進み門の中に入る。


 「おお、村長殿。私はそれほど、この村の気になりませんよ」 


 「それは、よかったです」

 

 村長は笑顔であったが、本心からではないことはここにいる誰もが分かった。

 

 そして勝手に村に入ったガルフに続いてユウトとフィーも村の中に入る。

 

 またこの状況に仕方なしと言わんばかりに村長は村の中に案内する。

 

 その際にはお互いに一切話をすることなく村の中を歩き続けた。


 村の住人が怪しい人を見るようにユウト達を見てくる。


 ガルフはそれでもお構いなしに歩き続ける。


 ガルフは、ユウトと見た目だとそれ程年が離れていないように見えるのに堂々としている。


 やっぱり、王国の騎士団の副団長をしているだけの事があると思い知らされる。


 そしてユウトとフィーはその視線に少し慣れていないせいか歩きにくさを感じていた。

 

 ユウトに関しては、以前いた村とは思えないほどその光景は異様に思えた。


 そして村長の家に到着して中へと案内される。


 「大した家ではございませんがどうぞ」


 「失礼します」

 

 ガルフの後に続いて家の中に入る。


 ユウトは部屋に入り最初に思ったのはエアリスの家と変わらないことだった。


 エアリスからは当初、村は貧乏だということは聞いていたがそれでも驚いた。

 

 しかしその事について遠慮することなくガルフは言う。


 「この村は、聞いていた以上に苦しいようですね」


 「お国の為に精一杯やっていますので、我々に残るのはほとんど無いでございます」


 「それにしては、門の外に用意した机と椅子はそれなりに豪華(ごうか)だった気がしたが、あれは村長の私物ですか?」


 「あれは……その…」

 

 村長は言葉を(にご)らせる。


 「仮に、あの机と椅子があなたの物だとしても、この家には不釣り合いでしょう」


 「国の偉い奴だからって言いたいこと言うんじゃねぇ!」

 

 言い寄られる村長に変わって近くにいた一人が声を荒げる。

 

 確かこの人は村長の息子だったような。

 

 ユウトが、以前村であった時はとても温厚そうな人であった。


 そんな人がこのような事を言うのは意外であった。


 「部外者は黙っていてもらえますか」


 ガルフの一言に対して村長からも息子をなだめた。

 

 息子はそれでも悔しそうに黙りこんだ。


 「では、本題の方に移りましょう。今回我々が来たのは税の回収と、この村に指名手配中の人間がいるのではないかという報告があったので、その調査に参りました」


 「……作用でございますか……しかし、我々には、そんな人間がいたという記憶は無いのですが……」


 「いや、あるはずですよ。それにこの村からは最近行方不明者が出ていますし。こちらが調べた限りだと、この村にはいない人間ですがあれは誰ですか?」


 「それは……というよりも、そんな人間が街では行方不明扱いになっているのですか?私達は街に行くことはないので、知っているとしたら若い連中だと思いますが、恐らく何かの手違いではないでしょうか?」


 「いや、手違いではないですよ。それにその依頼を出したのはエアリスという若い女だと、ギルドから連絡を受けていますので。そうしたらまずはそのエアリスという女はどこにいますか?」

 

 実際ガルフの言っていることは嘘も混じっている。エアリスはユウトの捜索の依頼は出していない。ユウトの行方不明の知らせはギルドが用意したもので報酬も何もない。だが、エアリスという村にいるはずの人間を出すことで、村長が本当に捜索の依頼を出したのか確認が取れるということも聞くことが出来る。

 

 そして、もし出てくるのであれば、それはそれでエアリスの現状を知ることが出来るという質問なのである。

 

 だが、その質問に村長は唇を噛みしめてうなるように言う。


 「あっ…と、確か今は体の調子が良くないようで外に出られないということで、その為、家で彼女は療養しております」


 「そうしたら、その女の元に我々を案内してくれますか、詳しくはその女に聞くとしますから」

 

 ガルフはそう言い椅子から立ち上がると、すぐに村長がガルフを呼び止める。


 「待って下され!彼女は今、人に移る病を患っておりまして、その……副団長様に移りでもしたら、大変な事になってしまいますぞ!」


 「そうか、そうしたらその移る(やまい)病名(びょうめい)を教えてもらえるか?」


 「なっ……ええっと……」


 「一応言っておきますが、私に嘘をつくような事が万が一あれば、どうなるかはお分かりですよね」

 

 ガルフ少しずつ確実に、村長を追い詰める。

 

 まるでこうなるかが分かっているように、誘導(ゆうどう)しているようにも思えた。

 

 だが、ユウトはそれとは別に焦りのような気持ちに襲われていた。

 

 その原因は村長がエアリスを出したがらないことだ。

 

 こんな質問ただの(おとり)のようなものなのに。エアリスを出せば簡単に返せるものなのに何故これ程、躊躇(ためら)うのだ。


 「すいません。今は……年のせいか忘れっぽくて思い出せないのですが、とにかく、危険な病でして」

 

 濁った言葉に、苛立ったのかガルフはとうとう、


 「もういい!お前たちが隠そうとしていることは、もう分かりきっている!お前が言えないなら代わりに俺がその病を言ってやろう。俗にいう心術疲労(しんじゅつひろう)という奴だ。ただ、それはもちろんただの心術疲労とは違い回復する事が通常無い。そして、その状態になるのは、とある召喚術をした者のみ起こる。また、その召喚術を広めて何か悪事をしようとしているのが、今回の手配犯(てはいはん)だ」

 

 ガルフの言葉にユウトは驚愕(きょうがく)する。

 

 ユウトが事前に呼んだ事件記録では、確かに一部ではそう書いてあったのを覚えている。

 

 だが、回復しないとは知らなかった。

 

 ということは、エアリスは今も苦しんでいるのでは……?

 

 そして、出て来られないということはエアリスの体の状況はそれ程悪いのか。

 

 それとも、最悪話も出来ないような状態まで衰弱(すいじゃく)してしまっているのか。

 

 その事を思ってしまって急に心配になってきてしまう。


 フィーはそんなユウトが心配になり、大丈夫かと声をかけてくれる。


 ガルフも一瞬ユウトを見たが、すぐに村長に続けて言う。


 「では、村長殿。もう一つ質問ですが、あの村の端にある建物はなんですか?」


 「あれは、村の聖堂でして……」


 「あの聖堂とやらは、我々は知っておりませんが?」


 「それは、最近建てたものでしてまだ報告をしておりませんでした」


 「そうしたら、その聖堂とやらを調査させていだきます」


 「お待ちください!あの場所は聖域(せいいき)でして、我々も許された人間と、決められた日しか入ることが出来ないのです」


 「そんなものは知るか」


 「お待ち下され、あの場所は神聖な場所で関係者以外は入ってはならないのです」

 

 「村にあるもので村長すら入れない場所などあり得るか」

 

 そう言って、部屋からガルフが出ようとするのを必死に村長は引き止める。

 

 しかし、気にすることなくガルフは部屋を出ようとする。

 

 ユウト達もそれに合わせて部屋を出ようとすると、息子の手元で何か光った。

 

 それを不審(ふしん)に思ったユウトはフィーを自分の元に引き寄せた瞬間。

 

 轟音(ごうおん)と共に大きな(おの)を持った女が部屋の壁をぶち破って来た。

 

 間一髪、ユウトとフィリスは攻撃をかわせたが、


 「ガルフ‼」

 

 ユウトがそう叫ぶと、


 「これで確定だ。お前ら全員国賊(こくぞく)として処分する」

 

 ガルフの手元には、先ほどまで無かった槍が握られていた。

 

 黒く漆黒に染まり、金の装飾が施された槍。

 

 その姿はギルドで打ち合った時や大蛇を討伐した時とは別の姿でありその時は何かの装飾をしてあった槍は本当の姿を出している。

 

 そしてその槍の強さは、見ただけ伝わってくるほど強烈な物であった。

 

 またそれはユウトの聖剣に劣らないほどの強さを秘める槍であった。


 「ユウト‼ここは俺とフィリスに任せてお前は聖堂に迎え‼」


 「分かった!」

 

 ユウトは、出口めがけて走り出す。

 

 行かせまいと、女が斧を振ろうとしたが、横からフィリスが放ったファイアボールが直撃し体に火が燃えうつる前になんとか消火される。


 「ユウト……じゃと、まさか生きておったのか」

 

 村長は驚きのあまり思わず声を出してしまっていた。


 「なんだ、やっぱり知っていたのか」

 

 しかし、村長はガルフの予想に反して、


 「わははははははは‼まさか生きておったとは!これで、教皇様の夢が成就するぞ!」

 

 村長は狂いながら笑いだす。

 

 そして、辺りを見渡すと家の周りに村人たちが集まりだしていた。


 「これは……少し良くないな……」


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