各々の実力
「あれが、その住処ですか」
「思って以上に大きい洞穴だな。これは注意が必要だ」
フィーとユウトは、ガルフよりも前に出て大蛇の住処を確認する。
周辺は、静かすぎるぐらい静まっており緊張感漂う雰囲気であった。
「では、フィーがあの洞穴にファイアボールを打ち込みますので、ユウはその後の援護をお願いします」
「ファイアボールは気をつけて撃ってくれよ。この間の赤蜥蜴人の時も、貰い玉を受けそうだったからな」
「分かっていますよ。ちゃんと大蛇を狙いますよ」
フィーと確認を終えて、ガルフに合図を送り送り返されたのを確認し手からフィーに言い戦闘を開始する。
「よしっ。フィー打ち込んでやれ!」
「分かりました。いけ、ファイアボール!」
フィーの持つ錫杖から放たれた、複数の火球は吸い込まれるように洞穴の中へと入り、奥で爆発を起こしていた。そして、それからすぐに地鳴りのような音が周囲にし始め周りがざわめきだしそして、
「キシャアアアアアアアアアアアッッ‼」
火球により呼び起こされた大蛇はその体躯を怒りに震わせながら洞穴から姿を現すのであった。
ユウトはすぐにフィーを抱え込みその場を離れる。
そして震える地面に戸惑うことなくユウトは大蛇の出方を伺う。話しに聞いていた通り大蛇はかなりの大きさに成長していた。間違いなくこの周辺の主である。
大蛇は自分を襲撃した獲物をそのうねる巨体で周辺の草木をなぎ倒しながら探し続ける。その怒りは呼吸からも伝わるほど荒々しかった。
「ユウ。まずは上手く出来ましたね」
「ああ。そうしたら次はどうしたものか」
こんな大蛇がいるとは思っていなかったが、この大蛇が成長を続ければ、あの蜥蜴人の村だけでなく他の場所にも被害が出るに違いない。
「おいおい。二人共、攻撃しただけでその後をどうするか考えていないなんて駄目じゃないか」
声の主は暴れ狂う大蛇の前に立つガルフであった。
大蛇はガルフの存在に気づき、すぐにその大顎を全開に開き、ガルフの周辺を食らいつくす勢いで、噛みついたが大蛇の口には草木や土ばかりで肝心のガルフが入っていなかった。
「さすがは大蛇と言ったところか。それにしても、久しぶりに勢いのあるモンスターだな。これは楽しめそうだ」
瞬時に跳躍していたガルフは大蛇の頭上を取っていた。そしてその頭部めがけてその手に持つ黒槍で切り裂いた。
「キシャアアアアアアアアアアアッッ‼」
大蛇は痛みとそれによる怒りで激昂した。さらに体を大きく使い先ほどよりも強い地鳴りを起こしながら暴れ狂う。
「さて、俺は一撃与えてやったよ。次はどっちがやるのかな?」
「そうしたら、次はフィーが見せ場を作りましょう!ユウはそのままフィーを抱いたまま走りまわって下さい!」
「おっ?おう!わかった」
ユウトはすぐにフィーの考えを理解して言われた通り、大蛇の周辺をフィーに負担をかけない程度で、絶妙に調整をしながら走り回った。
「さて、行きますよぉ!フィーの最大の最高火力をお見舞いしてやりますよ!」
フィーはそう言うと、錫杖からファイアボールを連続で放ち続けた。その数は数十発にも及び、その威力は大火力となり、大蛇を包み込んだ。
「ギシャアアアアアアアアアアアアアッッ‼」
ガルフの攻撃からの連撃に大蛇の怒りも頂点になり目の色を変えて、大蛇はさらに大暴れをした。そして、そのおかげもあってフィーが放ったファイアボールによる周りの延焼は防げたが、大蛇は最早、嵐の様に暴れまわっている。
「フィリスの奴無茶苦茶やりやがるな。まぁ、周りに燃え移ったとしても俺が消しまわるからいいけど。さて、残るユウト君は何をしてくれるのかな?」
「フィー!滅茶苦茶放ちまくったな!」
「そうでしょう。これがフィーの実力というものですよ。さてそうしたら次はユウトの番でしょうから、どこかにフィーを降ろしてくれますか?」
ユウトはフィーに言われた通り、安全な場所に降ろしてすぐに大蛇の元に向かう。
大暴れをして疲れたのか、はたまた二人の攻撃により消耗したのか大蛇は動きが最初よりも鈍っていた。
だが、目の前に現れたユウトを目にして大蛇の目は再び輝きだし、ユウトに向か食らいつくが、ガルフ同様ユウトも瞬時に回避する。しかし大蛇もその行動は読んでおりすぐに次の攻撃に転じた。
その尾を全力で振り回し、岩肌や地面をえぐりながらも振り回した。だが、がむしゃらともとれるその攻撃は最早大蛇の最後の足掻きであった。
ユウトはそれらの攻撃を回避しつつ大蛇の体に飛び乗り、木々を上手く使いそして大蛇の頭部に乗り聖剣を突き刺した。
「ギシャアアアアアアアアアアアアアッッ……‼」
大蛇の巨体が動きを止め硬直したかと思った後すぐに力が抜けていき大蛇は体を地面に打ち付けるようにして倒れる。
ユウトは力が抜けると同時に聖剣を抜き木へと移動していた。
「討伐完了だな。フィー、今迎えに行くからな」
「分かりました!待っていますよ」
安全な場所に運んでいたフィーをユウトは向かいに行く。その間にガルフは大蛇が死んだことを確認し、今回の依頼を一人で振り返る。そして結果にそれなりに満足する。
「聖剣を手に入れてからここまで出来るとは上々だな」
少してフィーと共にユウトが戻って来る。そして、それとほぼ同時に茂みからゾフ達の声がする。
「冒険者様、ご無事ですか!」
「ああ、問題ないよ」
薬草や、その他諸々を手に持ちゾフ達はやって来た。実はゾフ達も遠くの安全な場所で初めからいて、地面の揺れが止んだのですぐにやって来たのだ。
「おおっ!本当にあの大蛇を討伐されたのですね。これで我が村は平和になりますぞ。御三方本当に……本当にありがとう!」
ゾフは泣きながら三人に感謝した。周りの蜥蜴人も各々泣くほど感謝していた。
それ程、この大蛇は蜥蜴人達にとって脅威だったのだ。
それを討伐してもらい、ようやく楽になれたのだ。
「では。依頼も終わりましたし戻りましょう」




