真実
「おい、誰かいるか?」
「お呼びでしょうか」
天井から声がすると滴る水が集まり現れたのは、一人の神官であった。
「準備はどれくらいだ?」
「ほぼ終わりでしょうか」
「あの人間の死体が無くても平気か?」
「ほぼ問題ありません」
「そうか。なら安心だ」
我々の夢でもあるこの実験はようやく成就しようとしている。
「しかし、教皇様本当によろしいのですか?」
「何がだ?」
「この村は友好的な村ですし、ほぼまだ利用価値があるかと思いますが」
神官の言ったことに教皇は鼻で笑い、
「この国はもともと敵国だ。それに実験が出来る最高の場所じゃないか」
「では、ほぼ当初の予定通り行うのですね」
「その通りだ。まずは明日、村人全員に催眠をかけて傀儡とする」
「そして、それを盾に大都市に移動し、襲撃するということですね」
「そうだ。戦績を上げることが出来れば、我々も国に帰れるに違いない」
ようやく、国賊の汚名を返上する機会がやって来た。
長い時間がかかったが、これですべて報われるに違いない。
その時、何かが動く音がした。
「だれだッ!?」
教皇の叫びと共に、扉の前にいた何かが急いで逃げ出す。
「私が追います」
そう言った神官は体を液状にしてすぐに後を追う。
逃亡者は急いで階段を駆け上っていた。
聞いてしまった内容をみんなに伝える為に全力で逃げる。
恐怖と緊張で息を切らしながらも出口に向かって走り続ける。
そして、もう少しで出口の扉という時に、足を何か掴まれ転倒する。
体を床に打ち付け全身に痛みが広がる。
そしてすぐに何かに床に抑えてつけられて身動きが取れない。
そして、コツコツと足音を立てながら教皇はその逃亡者に近づき見下す。
「盗み聞きとはダメじゃないか。エアリス?」
エアリスは這いつくばりながらも教皇を睨みつける。
「あなたがやろうとしていることは絶対に許されない事だわ!」
「だからどうした?」
教皇は何の悪びれも無く返答する。
「言っておくが、私達は別にこの村のことなんてどうでもいい。目標さえ達成されれば、それで問題ないからな」
その教皇の言葉にエアリスは、急に悔しくなり涙を流した。
それでも声を絞りだし、
「……ユウトは死ぬために呼び出させたの……?」
「そうだが?」
「なっ……」
エアリスはその言葉を聞いて絶望した。
「エアリス。お前は催眠も無くなっているようだが、それでもまだ利用価値があるからまだまだ、働いてもらうぞ」
「そんなの嫌!これ以上私のせいで人が死ぬのは嫌なの‼」
「そんなことは知ったことではない。一回この術を使った召喚師は全員死んでいるが、何故かお前は未だに死ぬ気配すら感じない。これは、この術と相性がいいということかな」
教皇は気色悪い笑みを浮かべる。
泣きながら打ちひしがれるエアリスはどうする事も出来ない。
「明日の夜、この村の住人には強力な催眠をかける。そしてお前にも、二度と命令に背けない催眠をかけてやるから、それまで大人しくしているんだな。はーはっはははは」
「……ごめんね……ユウト……」
聖堂内に響き渡る教皇の笑い声の中、エアリスはひたすら自分を責め続けるのであった。




