教皇の成り行き
今回は教皇の話です
エアリスが部屋から出て行き、部屋の中は教皇一人となる。
教皇は近くにある椅子を自分の方へと引き寄せて腰かける。
仮面を外し服の中から、一本の葉巻を取り出して心術で火をつけ、ゆっくり吸い込み吐き出す。
教皇は椅子に深く座りながら今までのことを思い出す。
私はある国の研究者であった。
その国では戦争の為に使われる心術を日々研究していた。
戦争の抑止力となる力をひたすら生み出すことに一日を費やす毎日であった。
国と国の争いは多くの年月が過ぎても止むことはない。
国との争いが落ち着けばすぐに次の国の対処に追われる。
そして、さらに困らせるのがモンスターの存在である。
領土を侵略するのは人間だけではない。
モンスターは時に災害級に厄介なものもいる。
それに加えて選ばれた人間も恐ろしいほど厄介な存在である。
そして、その人間を生み出すのが九十九武器。
名前の通り九十九通りある武器。
それは人間が生まれる前にいた存在の亡骸が、生まれ変わったものだという。
そして九十九武器はその時いた神が転生させ、生まれた武器と言われている。
この武器の使い手は武器により選ばれるが、他の制限を付けて欲しいものである。
だが、現実は制限などなくその力は猛威を振るい選ばれた人間は世界を変える。
一瞬にして、国の代表になれるのだからすぐに勇者や、英雄にもなれてしまう。
しかしまだ九十九武器はこの世界に散らばっているという。
各国は必死に収集に出ているのだが、そう簡単には見つからない。
仮に見つかったとしても今度はその使い手を見つけなければならない。
また、本当に九十九武器だったのかも、使い手が見つかり力を発揮した時分かるのだ。
難は多いがもし見つかればそれは国にとって大きな力となる。
だからこそ各国は、必死に九十九武器を探すのだ。
そして、私が創っていたのが、九十九武器に少しでも対抗しようとしたものであった。
戦争になれば、九十九武器の強さが戦況を大きく変える。
でも、それに対抗できる何かがあれば対抗もしくはそれ以上に戦える。
その事を常に思いながら創った心術は今までとは違う召喚術であった。
初めはよくわからない小さな物ばかりを心術で引き寄せていた。
しかし、この小さなものは調べるとこの世界の物ではない事が判明した。
この時私は夜も寝られないほど盛大に歓喜した。
だが、この心術は体力を多く失う。
初めの頃は、何度意識を失ったか忘れる程であった。
だけども、この心術に将来性を感じた私は死ぬ気で改良を重ねた。
そして私は、ついに異世界の小さな生き物を召喚することに成功した。
この時、私はこの成功を誰かに知ってもらいたくてうずいていたが何とか押し殺した。
なぜなら、この時自分の国がまともな状態ではなかったからである。
国は戦争状態となっていた為、私の召喚術よりも殺傷能力が高い術を欲していた。
その為、私が創った術など見向きもされないのだ。
もし、この術を評価してもらいたいのであれば、戦火で結果を出してからである。
だが、この心術はまだそれほど力を持っていない。
その為私は体力が戻れば、何度も召喚を続けながら心術を磨いた。
そして、ある日この心術についてあることを見つけ出す。
それは供物の提供である。
それなりの供物を用意すれば、さらに召喚の幅が広がることが判明した。
だが、その代償も大きいものであった。
私はいつも通り召喚を行おうとしたが、途中で無意識に心術を中断した。
それは体がこれ以上体力を消費すれば、危険と判断したからだ。
しかしこれでは研究が進まない。
悩んだ末に、私が行ったのが心術の扱いに長けた者を探すことであった。
ようやく術師を見つけ出すことが出来たのは結局戦場であった。
ちょうどモンスターの討伐に出ていた術師にお願いしたら快く引き受けてくれた。
私は戦場で主に置いて行かれた武器を供物として召喚術を始めてもらった。
私は術師を励ましながら召喚の時を待った。
術師は苦悶の表情を浮かべながら、心術を発動する。
そうして、術師は一人の若い男を召喚したのであった。
現れた男は何が起こったのかが分かっていない様子であった。
言葉も理解出来ないし、ただただ怯えていた。
疲れ切った術師は肩で息をしているが意識はある。
とりあえず部下に術師を介抱させ、すぐに男を調べる。
だが、その時だった。
突如、討伐対象のモンスターが拠点を襲撃した。
怒号と、爆音が入り混じる状況は最早混沌と化していた。
私は召喚した人間を見失わないようにしていたが何かが頭に当たり意識を失った。
そして目を覚ました時には、拠点は崩壊していた。
中には、無事な者もいたがほとんど者が負傷もしくは死亡した。
私はすぐにあの男のことを思い出した。
様々な臭いに何度も嗚咽をしながら懸命に探した。
そして、見つけた時には私は絶望した。
男は死んでいたのである。
頭に何か当たったのか頭部から血を出していた。
ようやく成功したのに、これではまたやり直しである。
だが気を持ち直し死体をバレない様に運び出し私は帰還した。
しかし、戻ってすぐに私は歓喜した。
調べてみるとこの召喚された人間は、この世界には無い力を秘めている。
そして、この力はこの召喚術との相性が素晴らしかった。
この時私の頭に電気が走る。
もっとこの人間達を集められれば、何かすごいことが出来るのではないか。
そう思った私はその後はとにかく国中の術師に頼み召喚を行い続けた。
召喚された人間を逃がさず殺し保存する。
国のためと言い賛同してくれた部下と共に、可能な限り続けた。
だが、問題が起きた。
召喚に携わった術師の多くがその後死亡していたのである。
そしてそれは国にも伝わり、私は何か企んでいるのではと疑われた。
危機感を感じた私は、すぐに国から部下と共に逃亡した。
何とか隣国の領土に逃げ込んだ私は、心身ともに疲れ果てていた。
また、部下達も同じであった。
だが、彼らは私を恨んではいなかった。
彼らもまた、この研究に期待しているのだ。
私達には休んでいる暇はない。
すぐに、行動し実験体を増やした。
怪しまれない様に行動して村人たちを使い召喚を行わせた。
そして自国で使われている催眠の心術で、いいように誘導し思い通りに行動もさせた。
場所を変えても徹底的にそれらは行った。
結果異世界からの多くの人間を召喚させることに成功した。
単純に弱い者、勢いしかない奴、召喚した人間と一緒に逃走を図った者もいた。
だが、貴重な実験体は一切逃がすことはなかった。
そして、それらを上手くして利用して現在に至る。
この村は私のこの研究の集大成の場所である。
その為、このような施設も作った。
そしてこの村にいたエアリスも、また上手く仕事をしてくれた。
だが召喚した人間に友好的に接している分、余計なことがないか心配な部分もあったがそれでもエアリスは容量が良く比較的安心して見ていられた。
念の為に保険の心術もかけてあるので、その点でも十分管理出来ている。
そして、従順に私の言ったことに従ってくれているエアリスは役にたった。
しかし、今回は目的である異世界の人間の死体が手に入らなかったのが誤算である。
早く死んでくれとは思っていたが、死体が手に入らないのでは意味がない。
そして、ラファール王国がどうやら私のことを嗅ぎつけたらしい。
それでもここまで準備が出来たのであるからあともう少しの辛抱である。
本来ならばあの少年の死体があれば、今頃完成していたのだが仕方ない。
だが、なくても最早十分な素材は揃えてある。
あとは、もう少し時を待つだけである。




