状況
少し落ち着いてからミシェラの案内で、別部屋へと移動する。
ミシェラはユウトの審査結果を受付さん達に伝える為に、現在はこの部屋にいない。
また、ミシェラの計らいでユウトは未だに行方不明ということになっている。
そしてミシェラがいない間に、ユウトはガルフにどのようにして現在の状態になったのかを正確に伝えた。
もちろん、理解できない部分もあったようだが、あまり多くの人には知られたくないということもあって、とにかくガルフはユウトがこの世界に来てから今まであったこと全てを何も言わずに聞いてくれた。
「急に強くなったのは、それが原因って事かな」
「そうだ。俺は一回死んだ。それで強くなって戻って来た」
嘘偽りなくユウトは言う。
それに対してガルフは、そんなユウトの言葉疑うことなく聞いた。
「それで、最近はたまたま出会ったフィリスと一緒に冒険に出ていたという訳か」
「そういう事だ」
「フィーも、ユウの話は今でも分からないことが多いです。でも、ユウが嘘を言っている気もしませんし、ユウトは強いのでフィー的には何も問題ありません」
フィーは何も迷いもなく自分が思ったことを言っているのだが、それを聞いているユウトは照れてしまう。
フィーはちょこちょここういう事を言ってくるから反応に困る。
「なるほど。それにしても君は珍しい体験をしているし、フィリスは勝手に行動しているし驚かされることばかりだな」
「フィーは、ただ強くなりたいだけです。あの両親では、とてもじゃないですけど強くはなれませんので」
「俺は関係ないからそれは別にいいけどな。ただ、巻き込まれた奴は大変だろうな」
ガルフはちらっとユウトの方を見るが、特にユウトは気にしないでむしろ、
「そういえば、フィーって愛称だったのか?」
「へっ!?」
「だって、ガルフはフィリスって呼んでいたし、受付さん達なんて様付けだったけどそれって?」
「ユウト君、それはね。一応社交辞令みたいなもので、誰にでもしていることなんだよ。そうだよね、フィリス」
「そっ、そうです。名前が知られている冒険者はそうやって言われているのですよ」
「でもさ、俺もそうしたらフィリスって呼ぼうか?」
「いや、ユウはそのままフィーと呼んでくれて構いませんよ」
「そうしたら、俺も本当はユウトって言うけどユウのままでいいか」
「やっぱりユウとは別の名前だったのですか⁉」
この時フィーはガルフがユウのことを、ユウトと言っていることについて疑問に思っていたのであった。
「まぁ一応、俺は行方不明扱いだったし、あの時はとっさに言ってしまったからな。ごめんな」
ユウトはフィーに頭を下げて謝る。
「まぁ、事情が事情だったですから。でも、これからは、ちゃんと伝えてくださいね」
「ああ、やっぱりフィーはいい子だな」
「ちょっ、ちょっとやめてください」
ユウトはフィーの可愛さに頭を撫でる。
「お待たせしてすいません。少し手間取りまして……」
慌てた様子で部屋に入って来るミシェラは申し訳なさそうに部屋に入って来たのだが、部屋の状況を見て固まってしまい、フィーもそれに気づきユウトの撫でる手を払いのけたのだが、空気が微妙な感じとなってしまった。
「そうしたらみんな揃ったようだし始めようか」
「そっ、そうだな」
その時ガルフが場を整えるように言ってくれたのに対して、ユウトも乗る形で部屋の空気を整えそれを感じたミシェラが落ち着きながら椅子に座り話し始める。
「では、お話の前にユウト様の審査は終わりましたので、これからも引きつづき依頼達成をよろしくお願いします」
「ありがとうございます」
これで、正式に審査も終わり堂々と依頼を受ける事が出来るわけとなり、予定通り仲間集めが出来る。
「そうしましたら次は本件の事についてですが、こちらは本当に彼らに話してもいいのですか?」
「ああ、頼むよ」
「わかりました。では、こちらが今回の件についての地図になります」
出された地図は、ユウトがいた村の全体図の地図であった。
しかし、この地図にはあの教会らしきものが記載されていない。
「なぁ、君は確か村で召喚されてこっちに来たって言っていたけど、あの村に怪しい奴はいなかったかい?」
「……いるよ。今すぐにでも倒したい怪しい奴が」
「やはりか」
「ガルフ?やはりというのはどういうことですか?」
「それが、俺も緊急で入った任務のことで……」
「ガルフ様!その事は言ってならないはずでは!」
あくまでミシェラはユウトから情報を提供してもらうものだと思っていたため任務の事となると思わずガルフに注意をしてしまったのだが、その注意に対してガルフ気にすることなく話を続ける。
「安心して、この二人は問題ないよ」
「え?」
ミシェラは目を丸くして驚きを隠しきれない様子である。
最近、ミシェラが聞いた話では憲兵が税の徴収に来た時にも、かなり門の前で待たされてから税の支払いを終えたという。
最近はその傾向が更に厳しくなったと憲兵から報告があったのである。
「そして今回の任務に最も参考になるのが、このユウトという訳だ」
「えっ!?この子が?」
ユウトは先ほどから、ミシェラさんの見た目はクールそうな感じがするけどリアクションが上手だし、感情も豊かな人なのだろうなと思いながら、
「そうです。俺はその村にいました。そして今は知っての通り状況ですが、俺もあの村に大事な用事があるので」
「そういう事だから、この話をフィリス含めここで進めても問題ないという訳だよ」
「フィーはユウの仲間ですから!」
「そういうことであれば、現在の情報をここで説明させていただきます」
ミシェラは知っていることのすべての情報を三人に伝えた。
そして、斥候から報告された不穏な存在の話。
ユウトはそれらを全て聞き終え、
「どうかな?君に心当たりのありそうなことがあったかな」
「ああ、十分にあったよ」
「そうか。恐らく君の倒したいという奴が恐らく今回の一番の標的だな。それにしてもなぜ今まで上手く姿を隠していた奴が、君の行方を捜しているのだろうか」
「恐らくそれは、俺の死体に利用価値があるからだと思っている」
「死体に?なぜそう思うのかい?」
「エアリスが言っていた事だけど、教皇は勇者となる素質を持った人間は死んでもその力は衰えることが無いって言っていたのを覚えている」
「なるほど、その奴っていうのがその村で教皇と言われていて、そんなことを言っているのか」
ガルフは、椅子に深々と座り直し、ふーっ、と大きく息を天井に向けて吐き勢いよく立ち上がる。
「よし!決まりだ。俺は君達をその村に連れて行く」
「いいのか!?」
「最初からそのつもりだったからな。さて、そうしたら次は俺の情報を開示しないといけないな」
ガルフは、何枚かの報告書を服の中から取り出しすべてを机の上に広げて報告書の一枚をユウトに手渡すのであった。




