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イベントという名の試練その二


 「ああ、とうとう着いちまったな」


 「とにかくなんとかしてでも審査を通りましょう。それに審査さえ通ってしまえば、仲間も集めやすくなりますから……」

 

 フィーの言葉にも元気がない、正直フィーも心の中では無理だと思っているに違いないがそれでも、ユウトの事を気遣(きづか)ってくれている。

 

 正直、受付にユウトの存在が知られることは問題ないのだが、問題はユウトが生きていることが教皇に知られる事である。

 

 バレたら、教皇が何をしてくるか分からない。

 

 いっそのこと傭兵(ようへい)でも雇って明日にでも強襲(きょうしゅう)するか。……でもそんな金はないしなぁ。


 「とにかく、ここを終わらせないとエアリスの救出どころじゃなくなりますから」


 「そうだな」

 

 ユウト達はゆっくりとギルドの中に入り今回の依頼の報告をする。

 

 予想通り受付さんはユウトを別室(べっしつ)に案内して座っているように指示される。

 

 一応そこでも仮面を外すように言われたが、人に見せられないのでと言うと簡単に信じてもらって、外すことなく椅子に座って待機(たいき)している。

 

 事前に聞いたフィーの話であれば、審査は一対一になるらしい。

 

 それであれば、上手(うま)くいけば何とかなるかもしれないといった期待もある。

 

 だが今の状態は嫌な緊張がユウトの全身を駆け巡っている。

 

 逃げられるのなら全力で逃げたい気持ちである。


 「お待たせしました。それでは中に入って下さい」


 「はっはい!」

 

 緊張(きんちょう)で声を裏がえしながら返事をして審査室の中に入ると、三人の女性が椅子に座っており、部屋の中央には椅子が一つ置かれている。

 

 予定では、一対一のはずだったが、まさかの三対一に変更とは思っていなかった。

 

 仮面のおかげで表情が分からずに済んだのは良かったが、間違いなく顔には焦りが出ていたと思う。


 「では、そちらにおかけください」

 

 そんなユウトを気にすることなく(やわ)らかに、にこっと、笑う受付さんを見てユウトは思った。

 

 はい。死んだ。


 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢


 「では、これから審査の方を始めます。あなたは一昨日に来て依頼を三件達成されております。その事に間違いはありませんね」


 「はい、間違っていません」


 「あなたは、本日冒険者フィリス様とゴブリン討伐に出かけられ、無事依頼を達成されたので、冒険者としての(くらい)をつける為に審査となりました」

 

 来たー!ここが大事だぞ!

 

 というかその前に。ん?フィリス様?誰だそれ?


 「では、これから審査を始めますがまずはその仮面を外していただいて顔の方を確認しますので外していただいてもよろしいですか?」


 「あの、その……すいませんちょっといいですか?」


 「はい。なんでしょう?」


 「あの……さっきも言ったのですが、私はちょっと他の人に素顔(すがお)を見せるのに抵抗(ていこう)がありありまして、出来ればやめてほしいのですが……」


 「ダメです」

 

 受付さんは先ほどと同じ(やわ)らかな笑顔できっぱりとユウトの申し出を断る。


 「どうにか出来ないですか?」


 「出来ません」

 

 受付さんはずっと笑顔なのだが、どうも目が笑っていないような気がしてすごくこえぇ。


 「です――――」


 「外してください」


 ユウトが何か言おうとすると、受付さんはユウトに仮面を外すように言う以外は何も話さない。続く沈黙(ちんもく)に耐え切れず万事休(ばんじきゅう)すかと思った時だった。


 「お願いします!どうかユウの顔を見ないであげて下さい!」

 

 突然、室内に入って来たフィーが涙を浮かべながら懇願(こんがん)する。


 「ユウは、子供の時に顔に大きな火傷(やけど)を負ってしまってから人に顔を見せなくなってしまったのです。でも、ユウはフィーと仲間になる時に、顔を見せてくれました。ユウが悪い人ではないことはこのフィーが保証(ほしょう)します!」

 

 フィーの発言により、ざわつく受付さん達。

 

 最高のタイミングで入って来てくれたフィーは涙を流しながら必死にユウトのことをかばってくれている。

 

 もしかしてこれは、いけるのか。

 

 というか、部屋の隅にあんな小瓶あったけ。


 「フィリス様申し訳ございませんが、それは無理でございます」


 「なっ!?」


 「フィリス様もご存知かと思われますが、我が国は我々のような者達が国内に悪さをするような人間を外から入れない様に監視(かんし)をする役目がございます。その為、フィリス様のご推薦(すいせん)があったとしても受け入れられません」


 「ですが、このフィーが保証すると言っているのですよ。それならば、問題がないということで間違いないではないですよ」


 「申し訳ございせんが、それは受け付けることが出来ません。それにもし、万が一このユウト様が何か事を起こした場合、フィリス様及びそのご家族またそれらに連なるすべてに影響(えいきょう)(およ)ぼしますので、ここはお引き取りをお願い致します」 


 「そんなぁー!」

 

 さすがのフィーでもここまで言われてしまったら何も言うことが出来ず、その場にへたり込んでしまった。


 「ですが、もしそうなのであれば、ギルドマスターに確認をしてもらいますので、少々お待ちください」

 

 そう言って部屋を出てギルドマスターを呼びに部屋を出て行ってしまった。

 

 そして、しばらくすると先ほど出て行った受付さんではない一人の女性が部屋へと入って来た。

 

 来たのは先ほどの人よりもさらに落ち着いた年上の女性であった。


 「あなたがそうなのね。私はこのギルドのギルドマスターだけど、今は少し急いでいるから早めに終わらせてもいいかしら?」

 

 ギルドマスターはどこか急いでいるようであった。

 

 残りの二人の受付さんに退出さるように(うなが)して、一対一となる。

 

 入って来たギルドマスターは急いでいるようだしもしかしたら、それ程気にせず審査を終わらせてくれるかもしれない。

 

 ユウトは僅かな可能性に賭けて仮面を取ろうとした時だった。


 「審査中、失礼するよ。ここに腕の立つ冒険者が審査を受けていると聞いたが、君のことかな?」


 「なっ!?なんでガルフがここにいるのですか!?」


 「おっ!フィリスこそ何でこんなところにいるんだ?」


 「ガルフ様、なんでこちらに来たのですか?」


 「俺もミシェラと一緒に審査をしようと思いまして」

 

 ユウトは入って来た男には見覚えがあった。

 

 確か聖剣を抜くときにいたあの男か。


 「まぁ、フィリスのことは良いとしてそこに座っているのが、そうなのかい?」


 「ええっそうですが、どうやら顔に見られたくない傷があるようなので……」

 

 フィリスが話している途中に遮るようにガルフはユウトに話し出す。


 「ふーん。なぁ君、本当に傷なんてあるのか?あるとしても火傷(やけど)じゃないよな」


 「……なんでそう思うのですか?」


 「そうだなぁ。特に理由は無いが少しだけ心当たりがあるといったところかな」

 

 ガルフと呼ばれる男はどこか楽しそうに話している。


 「心当たりですか」


 「そうだよ。俺が偶然担当した時に出会った少年じゃないかなと思って」


 「人違いですよ」


 「そうか?俺はそうは思わないけどなっ!」

 

 ガルフは突如出現させた槍でユウトに襲いかかる。

 

 突然の行動に部屋にいた者は一人を除いて何一つ動くことが出来なかった。


 「ひどいな。最初から分かっていたくせに」

 

 ユウトは審査の前に隠しておいた聖剣を出現させ槍を受け止める。

 

 その時の風圧で、紙が舞い上がりそうなのをギルドマスターは抑えていたが、何枚かは宙に舞った。

 

 フィーにおいては、何が起こっているのか理解できず口を開けてぽかーんとしていた。


 「君が一向に言わないから、実力行使って事でぶつけてみたけど、本当にあの時の君なのかな?」

 

 その言葉にユウトは仮面を外して顔を見せる。あの時とは多少変わっていたが、それを見たガルフは、少しも驚く素振(そぶ)りを見せなかった。


 「あれからいろいろあったんだよ。それに異世界からやって来た奴は強いのが相場だからな」


 「ガルフ様!ここでの武器使用は禁止されておりますよ!それにあなたも武器の持参(じさん)は禁止されておりますよ!」

 

 宙に舞い地に落ちた書類を回収しながらミシェラは、少し乱れた髪を気にすることなく、ガルフとユウトを注意する。


 「すいません。ちょっと試したくなってしまって」


 「ちょっとって、あなた様は副団長なのですからしっかりしてください……それにあなた全然顔に傷なんて無いじゃないの!それにあなた、もしかして行方――――」

 

 ミシェラが思わずユウトにとって、一番言って欲しくないことを言おうとした瞬間(しゅんかん)にガルフが口を覆う。

 

 そして、ミシェラにしぃーと、人差し指を立てて落ち着かせてから、手の覆いを外す。


 「君的にもこれでいいよね」


 「助かるよ」


 「もぅ。一体なんなのよ」

 

 恐らく一番の被害者であるミシェラは最早涙目である。


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