経緯
その後赤蜥蜴人を無事引き渡し今は宿屋の部屋にいるのだが、ユウトは目の前の問題に悩んでいる。
「なぁ。フィー本当にお前も泊まるのか?」
「もちろんですよ。フィーとユウは仲間ですからね。一緒にいても問題ないですよ」
いや問題大ありだろ。
フィーはどう見たって中学生ぐらいだろうし親だってきっと心配しているだろうからと、何度も言っているのだが、心配はいらないと一点張りだしユウトも正直こういうのに慣れていないから困っている。
そして、さらにユウトを困らせるのが、フィーがユウトの顔を見せろと言っていることである。
フィーは仲間であるならしっかりと見せろともし見せられないのであれば、ギルドの受付さんに言うぞと脅しまでかけられている。
フィーはまだ小さいのに、これ程圧をかけられるというのは何故なのか。
しかしそれに観念したわけではないが、仲間ということであれば、見せてもいいかと思い仮面を外すことにした。
「分かった。その代わりこの事は誰にも言わないでくれ」
ユウトは仮面を外すとその顔をフィーに見せる。
「おー。ユウはあの時に会った人だったんですね」
「俺とどこかで会ったか?」
「あの時ですよ。フィーがギルドに入る時にぶつかった時ですよ」
フィーに言われてからなんとかしてその時のことを思い出す。
ほとんど覚えていないが、ぶつかった子はそういえば今のフィーの格好と同じだったかもしれない。
あの時はそれどころじゃなかったから忘れてしまっていた。
「でもあの時のユウは何というかもっと頼りないというか、あんまり強そうな冒険者じゃなかったような……。それに髪だってあの時と違いましたよね」
正直すぎるくらいストレートに言ってくるフィーに対して苦笑いをするしか出来ないユウトであった。
まぁ確かにそうなんだけさ。もう少し言い方を考えてくれていると助かるなぁ。
「それには理由があってな。少し聞いてくれるか?」
それからは、ユウトが何でこうなった経緯を説明できる範囲で説明した。
フィーはあまりにも馴染のない話ばかりであまり理解出来てなさそうだが、とりあえずはユウトの言っていることは分かろうとしてくれた。
「ええっと。つまりユウはエアリスという女性に別の世界から召喚されて、もてはやされて冒険者になって、それで一回死んで生き返ってまた冒険者になってエアリスを救う為仲間を集めているのでしたっけ?」
「……大体そんなところだな」
何だろう。ユウトがこの世界に来てからやって来たことって簡単にまとめるとこんな簡単に説明できてしまうことに気づいてしまい、今は何とも言えない気持ちである。
「じゃあ、次は俺からの質問だな。なんでフィーはそんなに強くなる為に冒険者に?」
フィーは、すぅと少し息を吸い話し出す。
「それはですね。自分で出来ることを増やしたかったからですよ。私の父は過保護でして、このままだと私は自分で何もできない人間になってしまうのと、もし誰も頼れる人がいなくなった時にその時に自分で状況を打破できる力がない場合のことを考えてしまったら恐ろしくなってしまって、度々こうやって出ているのですよ」
自分が思っていた以上にフィーは覚悟を決めていたことに驚きを隠せない。
考えてみればこの世界は常に今あるものがすぐになくなる可能性がある世界だ。
だからこそフィーはそのことに恐怖して少しでも自分でできるようになる為にこうして危険な場所へと来ているのだ。
こんなに小さい女子なのにすごいとしか思えない。
「でも正直言って出て来て良かったと思っています。心術の実戦も出来ましたし、こうしてユウと一緒に冒険出来ていますし」
「そもそも何で、俺と一緒に冒険に行こうと思ったんだよ。俺は初心者冒険者だぞ。余程じゃないと、普通見返り無しで一緒に行こうなんて思わないだろ」
「それはですね。ユウトが強い人だからですよ。強い人と一緒に行動すれば、それだけ違う世界に行けます。でも危険も多いのは承知です。……でも!そうじゃなきゃ……そうしないと、フィーは弱いままなんですッ!…って……すいません。ちょっと熱くなりすぎました」
フィーは顔を手で覆い落ち着こうとしている。
そして自分の想いを全て吐き出したフィーの叫びを、聞き届けたユウトはなんとか受けきれたその想いに応えるべく、
「フィーそれは違うよ。俺も弱い。最初から強ければ良かったなんて何度も思ったよ。でもな、俺にはフィーが期待しているほどの力は無いかもしれない。でもな、戦って強くなりたい想いは一緒だ!だから強くなってやろうぜ!」
「その通りです!絶対に強くなりましょうね」
「おう!」
その瞬間ユウトの腹ぐぅと鳴り、
「続きは、夕飯食ってからにするか」
「そうですね。そうしたらフィーはこの丸焼き料理が食べたいです!」
フィーがいつの間にか持っていた、ルームサービスのメニュー表に書いてある丸焼き料理はユウトも説明文を見ただけで美味そうだと思い速攻で注文した。
だが、この料理はこの宿で一番高い料理であったことに支払いの時に気づき、これからはしっかりと確認してから注文しようと思うのであった。
「ふわぁー!ごちそうさまでした!」
「美味かったか?」
「初めて味わった味ですが、とっても美味しかったです!」
出てきた丸焼きは鳥のようなモンスターの丸焼きで、肉はうま味たっぷりで皮はパリッとしていて、さらに味付けが絶妙に合わさってまさに絶品であった。
しかし、ゆっくりと味わっているとフィーにほとんど食われそうだったので、ユウトも負けないように食べていた。
食事を終えて片付けをそれぞれ済まし、
「さて今度はフィーが聞く番ですね。ユウのここまでの経緯は分かりましたが、ユウは、これからエアリスに合ってどうするのですか?」
「俺の目的はただ一つエアリスにもう一度だけ会って話をしたいと思っている」
「エアリスというのは、さっき言っていた話によると、ユウを召喚した人ですよね」
ユウトはゆっくりと頷く。
「それで?何を話すというのです?」
「教皇についてだ」
教皇はユウトの異世界召喚に関係するもう一人の人物である。
そしてエアリスを含めあの村の人達は教皇を崇めていた。
また、教皇のことを少しでも貶めるようなことを言えば、エアリスは怒りさらに言えば急に息苦しくなるという現象に襲われていた。
あのことについて後で分かったことは当時のユウトには召喚された時にある程度の術がかけられていた。
ユウガによると強制的な契約が出来ておりそれは、主人の意思で躾のように対象者を操作できるものらしい。
そしてそんな術をかけていたかという理由は簡単なことであった。それはユウトを完全に支配するためであった。
「とにかく、俺はエアリスに会って教皇のことを聞き出して、いっその事怒らしてみて確認を取りたいと思っている……ってフィーなんだよ。その顔は」
「えーっと正直、エアリスが少し不憫というか、なんというか。死んだと思っていたユウが生きていて喜ぼうとしていたのに、その教皇のことで怒らせてみるとか。少しは考えてからいえばいいのに」
フィーは、半目でユウトのことを見ている。
だけどやっぱり教皇がユウトの敵であり、エアリスと会う為にもここはもう一度しっかりと確認を取らなければならない。
最悪、本当にあってはならないが、エアリスだって武器を向けてくるかもしれないのはユウトも覚悟している。
ユウトも出来ればこんなことはしたくはないけど、悩んだ結果だということをフィーに伝えると、「それでもフィーは嫌ですね」と言ってくる。
しかし、その事は気にせず、まずはどうやってあの村の中に入って会えばいいものか。
ユウトは死んだ扱いの人間である。教皇のこともあるから正面から入るのも出来ないだろう。そうすると、夜に侵入してそのままアイリの寝室に侵入……ってそれはダメだろ。
一人でいろいろと考えているユウトのことに興味を無くしたのか、大あくびをして眠そうなフィーは、
「では、ユウのことも聞けたことですし、フィーはもう眠いので寝ます……の…で」
言った通り寝息をたててすぐに寝てしまった。
「本当にもう寝ちまった」
一応、この寝床は二人同時に寝られるのだがユウトは、フィーに寝床を譲り武器や道具の手入れなどを終えてから身の周りを整えて寝袋を借りて寝るのであった。




