赤蜥蜴人
目的の赤蜥蜴人は、自分の縄張り内で休息をとっている。
見たところ、今はチャンスなのだが情報によると相当警戒心が強いらしい。
その為、今は休息を取っているようだが、何かが縄張りの中に入れば、すぐに戦闘となるだろう。
「さて、そうしたら俺が一気に切り込むから、フィーはそこにいて待っていてくれ」
昨日の依頼は正直楽に終わってしまったのでこの赤蜥蜴人ぐらいが、今の実力を測るのにちょうどいい相手だろう。
そしていざ縄張りに入ろうとした時にユウトはフィーに肩を引っ張られ、振り向くと何やらフィーは不満そうにしていた。
「ちょっと待ってください。それではフィーの出番がありません」
「えっ?」
「だーかーら!それでは、フィーの出番が無いのですよ。折角フィーが強くなる為にこの依頼を選んだのに、ユウが一人で片付けてしまっては、意味がなくなります!」
何を言っているんだ、このフィーは。
ここは、一つ教訓を教えてやることにした。
「でもなぁ。モンスターって結構危ないし、最悪死んでしまうことだってあるんだぞ」
ユウトは一度あっけなく死んだような体験をしている。
そんな過去があるからこそ慎重に戦うべきだと言っているのだが、それでもフィーは収まらない。
「とにかく、フィーが最初の攻撃をしますから、ユウはその後に援護してください」
「ッフィー‼」
「えっ……」
フィーの目の前には、さっきまで寝ていた赤蜥蜴人がその強靭な爪で襲ってきたのを瞬時にユウトが剣を出して抑えている。
「言わせておけば……小娘ごときに俺が倒せるとでも思っているのか!馬鹿にするんじゃねぇぞ‼」
赤蜥蜴人はさらに力を込めてフィーを襲おうとするが、ユウトはそれを抑え込む。
「おい!仮面の!お前はあとで相手してやるから先にその小娘と戦わせろ‼」
「やだね。目の前でフィーが襲われているのなんて見たくないからな!」
ユウトは力を入れ赤蜥蜴人を押し返す。
「ぐぉ……!」
赤蜥蜴人が体勢を崩した瞬間すぐに二撃目を与えようとするが、跳躍され間合いを取られる。
「危ない、危ない。仮面の。お前、相当やるじゃねぇか」
「そりゃどうも」
ユウトはユウガによって鍛えられて強くなった。
だが、実戦の経験は、ひたすら戦って身につくものだとユウガも言っており、その為少しでもその感覚を身に着けられればと思っていると、
「ファイヤーボール!」
赤蜥蜴人の目の前にいるユウトめがけて火球が飛んできたのをギリギリ回避してその発射元となる後ろを見る。
「フィー!お前何撃ってんだ!当たったらどうするんだ‼」
「だーかーら‼こいつはフィーの標的だって言っているでしょうが‼」
フィーはすぐに二撃目のファイヤーボールを俺と赤蜥蜴人めがけて打ち込んできやがるのをお互いに回避した。
「くそっ!フィーも敵なんじゃねぇかっとッ!」
回避直後に、赤蜥蜴人がユウトめがけて攻撃してくるのを受け流す。
赤蜥蜴人もユウトを狙って攻撃してくるし、フィーもやたらファイヤーボール打ち込んでくるし正直やりにくい。
よし。決めた。
フィーに後でいろいろと言われるだろうが、ここはまずフィーを上手く使うしかない。
ユウトはそう決めるとまずはフィーめがけて走り出す。
フィーは、ユウトを追ってくる赤蜥蜴人が近づいて来るのに戸惑いながらも、ファイヤーボールの照準を合わせて打ち込むその瞬間。
「今だっ!」
ユウトは反転し今まさにユウトを切り裂こうと、腕を振り上げた赤蜥蜴人より先に喉元に剣を当てると、赤蜥蜴人は腕を振り上げたまま停止する。
「ユウ!避けて下さい!」
フィーが放った火球がジリジリと音を立てながらその熱気と共に近づいて来るのが分かるが、ここで避ければまた赤蜥蜴人に逃げられてしまう。
ユウトは、すぐに左手を飛んでくる方向に向けて聖剣の鞘を出し火球はその鞘に当たると同時に吸いこまれるように消滅するのであった。
「勝負あったな」
降参した赤蜥蜴人を縄で縛ってから依頼開始前にもらっていた通信道具を使ってギルドに依頼終了の知らせを送る。
そしてすぐに来た返信には、場所を確認したと通知され到着する時間もそれ程かからないと書かれていた。
さてと、そうしたら到着する前に、
「フィー頼むから機嫌を直してくれよ」
「ふんだっ。フィーの獲物を横取りするなんてユウはひどいです!」
赤蜥蜴人を縛り終えてから、フィーはずっとこの調子である。
どうやら、本気でこの赤蜥蜴人を自分の力で倒したかったのに、ほとんどユウトが片付けてしまったので、何も面白くなかったようである。
「だから悪かったって。今回が初めての共闘だったから、フィーの戦い方が分からなかったからつい一人でやっちまった」
「……それなら、これでフィーのことも少しは分かったでしょうし、次はフィーに倒させてくれますか?」
ユウトはフィーのその言葉に喜びながら、
「それって、俺と仲間になってくれるってことか!」
「言っておきますがフィーは強いんですから次は一番活躍してやりますよ」
ユウトは差し出されたフィーの手を握り一人目の仲間を得ることが出来たのであった。




