この世界の日常
外では、大人たちは自分たちの仕事をして子供たちは走り回って遊んでいる。
ユウトはまず近くでごしごしと洗濯板で洗濯をしているガタイのいい女性に話かけた。
「あのー。すいません」
「なんだい?お前さん、もしかして昨日教皇様が言っていた例の少年かい?」
近くに置いてある布で手を拭いて、ユウトと向かい合う。
その姿はユウトが隠れるぐらいあるので、ユウトはその姿に少し圧倒される。
「しかし、だいぶ頼りなさそうなのが来ちまったようだね」
早速、貶されたような気がしたが気にせず、
「そうなんですよ。まだ俺この世界に慣れていなくて、まずは村の人のことをもっと知りたいと思って挨拶に周っているんですよ」
「そうなのかい。この村にはそれ程人はいないからすぐに終わっちまうだろうよ」
「あの、あなたは昔からずっとこの村にいるのですか?」
「そうだよ。一旦は、出ていたけど、少しして今の旦那と一緒に戻って来たんだよ」
女性は少し照れ臭くなってしまったのか、ユウトから顔を背け洗濯を再開した。
正直ユウトはこの人の事をそれ程気にしていないので本題の話を聞く。
「その時から、教皇様はいるのですか?」
「いや、教皇様は最近いらしたばかりだよ」
ユウトはその事に軽く驚いた。
最近来たばかりなのにこれ程村に馴染んでいるのである。
ユウトは違和感を持ちながら刺激しない様に話を続けた。
「あの教皇様ってどうしたら合うことが出来ますかね?」
「教皇様は忙しいから私達だって満月の日くらいしか会えないからその日が来るまでは待つしかないね」
「あとどれぐらいで満月になるか分かったりはしませんか?」
「そうだねぇ。こないだなったばっかりだから、まだまだだね」
「そうですか。早くお会いして話したいことがあるけど、まだそれは出来そうになさそうですね」
「まぁ、待っていればくるさ、それにあんたを呼んだエアリスちゃんは、教皇様のお世話をしているから、そんなに伝えたい事があるなら伝言でも頼んでみればどうだい」
「そうですね。お願いしてみます」
もちろんエアリスに伝言は頼まない。エアリスは本っ当に優しくて可愛くていい子だけど、教皇の事になると地雷の連鎖爆発起こして結果は嫌な事しかならない。
それに先ほどの話によると満月の日、その日に教皇に会うことが出来る。その時にこのモヤモヤをどうにか出来るのであれば、とりあえずその日まで生き残ればいいだけだ。
聞きたいことを聞き終え、ユウトはお礼を言ってその場を立ち去ろうとした時だった。
「おい!お前さん!」
急に呼びつけられて、心臓の鼓動が早くなる。
まずい、何かやっちまったか。
ユウトはおそるおそる後ろを振り向くと、
「一緒に住んでいるからってエアリスちゃんに変なことをしたら許さないよ!」
ユウトはその事について安心しながら落ち着いて言う、
「何もしませんよ」
その言葉をそのまま信じてもらえたのか女性は下を向いて洗濯を続けるのであった。
ユウトはその後も、村人たちに声をかけて話を聞いていくのであった。
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ユウトが家に戻った時には、日が落ちかけて暗くなる前であった。
あの後も話を聞く以外に手伝わされたり、一緒に遊んだりしてそれなりに忙しかった。
手に入った情報を整理してたどり着いたのは、教皇に会うまでにはまだ数十日はあるということである。
話であったのは満月の日。
その日までに力を付けて抵抗出来れば、きっと打開できるのだが、
「一体どうすれば……」
ろくにモンスターも倒せていないユウトはそんなに強くなれるのか不安であった。
そして考えているうちにエアリスが帰って来たのでユウトは槍磨きに集中している素振りをした。
「ユウト。帰ったわよ」
「ああ、お帰り」
「教皇様が良くやったって褒めていたわ」
「そうか。それは嬉しいな」
ここで、また悪態をついたら何が起こるか分からないからここは大人しくしておく。
「それでね。その才能を評価して、明日から一人で依頼をしなさいって言っていたわ」
「なっ!?」
ユウトは思わず槍を手から落とす。
槍が床と当たる音がしていてもエアリスは気にすることなく話を続ける。
「今日のことを話したら、ユウトは今までの召喚した人間とは違う素質を持つから、もっと早く経験を積ませるために、厳しい環境にいないといけないと教皇様は言っていたわ。だから明日から教皇様の期待に応えられように頑張ってね!」
今日の話とはいったいどこまでの話なのかということを聞くのは怖くて聞くことが出来なかった。
しかし絶対に嫌だ。と言ったらまた結果は見えているので、ふつふつと湧いてくる感情を抑えつつユウトは冷静に返事を返した。
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次の日ユウトは、エアリスと一緒にまた街へとやって来て、ユウトがギルドで依頼書を選びエアリスは内容を確認して村へと帰ってしまう。
結果的にユウトは危なげなく依頼をこなしたが、正直このままでは体が持たないと悟った。
だがなるべく休まず依頼を終えてすぐに村に戻らないと、夜の道を帰ることになり危険が伴うことになる。
そしてさらにユウトを苦しめるのが昨日の話の続きである。
依頼を一人で受けること自体がユウトの試練の為手助けは情けとなり、将来の油断になるということなので誰とも一緒に依頼を受けることは出来ない。
しかしこの事についても誰かと一緒だと報酬もその人数で割ることになるので、教皇の手元に入る分が減るからだと思っている。
また、誰からも支給品は一切無い。
すべて自分で調達しないとならない。
どこまでも考えてくれているのだろうかとユウトは恨みながら思う。
ユウトには手持ちの銀貨があるがいずれは尽きるので、そう簡単には使えない。
その為ユウトの手持ちは、心もとない回復ポーション、安い槍、使えるか分からない聖剣だけである。
それに今日も星が低めの依頼でどうにか納得してもらえているが、この先命令でさらに危険な依頼に挑戦しなくてはいけなくなった時など、見えている課題を正直どうすればいいか悩みながら帰宅した。
帰宅するとエアリスがいつもの笑顔で、ユウトを向かい入れてくれたが、すぐにその笑顔でエアリスから伝えられたことを聞いたユウトは、その日が来てしまった事を嘆くのであった。




