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凡人の異世界転移物語  作者: 小さな枝切れ
最終章 見果てぬ夢
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報われなかった夢

土曜更新する様なこと言っておいて更新できなかった為、本日2話更新します。

恐る恐る後ろを見る。


ルースミアがいる。


ルースミアの後ろに兜を被った男が立っていた。すぐにスレイドだと分かった。


ルースミアの腹から剣が突き出ていた。


「おー!本当に傷つけられたぜ!」


ルースミアが顔を歪めながら、腹から出ているフローズンデスを見る。

傷口からは血は一滴も流れてないが、血の代わりに傷口に霜が出来ている。


「さてさてサハラ、その鞄をこっちによこしな。

どの道コイツは生かしておいたら仕返しされかねないから殺すが、鞄を渡せばお前らは殺さないでやるよ」


スレイドが兜を取り、何か喋ってるが俺の耳には入らなかった。


「る、ルースミア…」

「ルースミア様」


あの無敵チートだと思っていたルースミアが腹を剣で貫かれている。


「おらさっさと鞄を渡しゃ死に目ぐらい拝ませてやるって言ってんだ!」


ハッとなり俺は慌てて鞄に手をかける。

スレイドは空いている方の手を出してほれ早くしろと言わんばかりに手をパタパタさせている。


「おい、人の財宝を勝手に渡すな」


その声で俺の手が止まりルースミアを見る。

腹から剣が突き出ているままだ。


「この程度で死ぬとでも思ったか?」


ルースミアの平然としたその言葉に焦ったのはスレイドだ。


「フザケンナ!腹突き刺されて平然としてる奴がいるか!

ならこのまま切り裂いてやる!」


そう言うとスレイドが腕に力を入れて、突き刺したままから斬りおろそうとした。


「う、ん!、な、んだ?切れねぇ!」

「当たり前だ愚か者。我の鱗は確かにその剣で貫けたようだ。だがな、切るとなると我の鱗に加えて切り裂きに強いこのローブで容易くはなくなる」


それを聞いて慌ててスレイドは剣を引き抜いた。


「クソッ、バケモンが!」


引き抜くと同時に俺の方に駆け寄ってきた。状況が飲み込めてない俺は動くことを忘れていた。


「ならサハラ!お前だ!」


ルースミアは引き抜かれた直後攻撃しようとしたが、スレイドに分かっていたと言わんばかりにかわされてしまった。

そして俺に剣が迫った瞬間、カイが素早くスレイドに飛びかかった。


「クソッ!じゃますんじゃねぇ!」


カイはあっけなく地面に転がる。


「取った!サハラ様!」


カイが飛びかかって狙ったのは腕輪だった。

それを俺に向けて投げつけるのとスレイドが気がつくのが同時だった。


「このクソアマ!」


そう叫びながら宙を舞う腕輪を取ろうと手が追うが、高さがあるため虚しく空を切り俺の元に飛んできた。

素早くキャッチして腕輪を身につけると、コマンドワードを言いそして…


「杖術習得!」


俺は杖術を習得しなおした。

なんとなく他人に奪われたら、また取り直しになる気がしたからだった。


逆手に持った棒を素早く振るい、スレイドの腕に突き込み剣を押さえつけると首筋に叩きつける。


「勝負あったな、スレイド」


短剣を手にしたカイが、リストブレードの刃を出したルースミアが、そして棒を構えた俺がスレイドを囲んだ。

さすがに腕輪を取られて能力を失い、ルースミアとグランドマスターの杖術に戻った俺とエキスパート級以上の腕を持つカイに囲まれては勝てる見込みは万に一つもないだろう。


「ちくしょう!せっかく力を手に入れたのにここまでかよ!」

「貴様が強欲でなく、腕輪だけで我慢していればこうはならなかった」


ルースミアにそう言われ、スレイドはもはや諦めきったのかその場に座り込んだ。


「あーそうだよそうだよ。さぁ煮るなり焼くなり好きにしろってんだ」


俺は…殺すのを躊躇う。

腕輪を取り返せばもうスレイドに危険はない。今後は注意さえ怠らなければ大丈夫なはずだと思った。

ふとカイがスレイドに近寄るとその手からフローズンデスを取り返していた。


「貴方には剣を教わりました。けれど貴方はやってはいけないことをしました。お父さんの剣を奪ったこと。ルースミア様を傷つけた事。そしてサハラ様を傷つけた事です。

…サハラ様は優しい方…たぶん貴方を許されると思います。けれど、私は…絶対に許さない!」


そう言うと剣を振り上げ振り下ろす。

スッと腕に傷をつける程度に切った。


「私は…これで我慢します。後はルースミア様次第…」


そう言うとレイチェルの元に駆けていった。

スレイドは許されたと勘違いしたのかヘラヘラしながら立ち上がると、そのまま立ち去ろうとする。


「我を傷つけておいて、生きて帰れると思っているのか?」


スレイドが立ち止まり恐る恐るといった表情でルースミアを見る。


「塵と化せ、分解(ディスインテグレイト)


ルースミアがそう言った直後、スレイドの体はまさしく粉のようにファサッといった感じで崩れた。



こうして力を求め、欲を制御しきれなかった男、スレイドはこの世から死体すら残さず死んだ。




読んでいただきありがとうございます。

本日17時にもう一度更新します。



それでは

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