ヴァリューム新領主
ギャレットの処刑の日になった。
本当は見になんか行きたくはないが、こう言うのは最後をしっかり見届けてあげるのも大切なことらしい。
なにより彼は罪人ではない。
時間は正午に行うが、中には早めに行って感謝を述べる者達でいっぱいらしい。
俺は出来るだけギリギリまで行きたくはなかったため、やり切れない思いのまま過ごしていた。
「やっぱり納得いかない。なんで一戦もすることなく降伏したのに騎士が処罰されなきゃいけないんだよ!」
「サハラ様は知らないかもしれませんが、これはガウシアン王国に逆らう者がどういう末路を辿るかという見せしめなんです」
「見せしめ?そんな事をすれば余計に怒りを買うだけじゃないか!」
「少なくともギャレットの従者のセッターは間違いなく恨むはずだ。いや、ほんのわずかな間だったけれど、俺だって絶対にガウシアン王国を許さない!」
ギャレットは俺を友と言ってくれた。この世界に来て色々あったけど、友と呼んでくれたのはギャレットだけだった。
「サハラ…」
レイチェルが心配そうに声をかけようとするが、かける言葉が見つからなかったようで、名前を言っただけでそれ以上は何も言わなかった。いや、言えなかったのだろう。
時間は無情に過ぎていき正午が迫る。
「サハラ様、そろそろ…」
聞きたくない行きたくない見たくない。
「サハラよ、勇敢な友の最後を見てやるのも友としての務めだぞ」
ルースミアが普段あまり人の生き死にに関与しないのにそう言ってきた。
分かったよ。そう言ってノロノロと向かう準備をする。
そんな俺を見て怯えるセーラムに気がつき、この子には処刑を見せたくないなと思った。
「セーラムはここに残っててくれるかな?」
「いや!おいていかないで」
まだ小さいから分かってないんだろうな。
「私がセーラムと一緒にここにいるわ。サハラは行ってきて」
「いいの?」
「処刑されるところなんて見たくない」
そうだよな。レイチェルだってまだ18歳だ。
目を輝かせて見ていた騎士様が処刑されるところなんか見たくないはずだ。
「頼めるかな?」
「うん…」
セーラムをレイチェルに任せて俺とルースミア、カイにそれとレイチェルの両親と従業員の方達と一緒に処刑を行われる広場へ向かった。
広場はすごくたくさんの人で溢れかえっていて、泣いている者、感謝を述べる者、祈る者様々な人達の姿があった。
そしてギャレットと他2名が立たされていて、兵士が10名ほどいてその後ろに目立つ椅子に座ったたぶん2メートルはある巨漢の男がいた。恐らく新しい領主だろう。
兵士の1人が書面を開き3名の罪状が述べられる。
罪状が述べられると見に来ていた人達から、罪人じゃないなどの声が上がり、広場がざわついたが気にすることなく読み上げられていく。
そして最後に処刑方法が述べられた。
「…よって3名を引き裂きの刑に処す!」
その瞬間広場から我慢が出来なくなったヴァリュームの民が罵声や怒声をあげはじめた。
兵士達が黙らせようとするが一層激しくなっていった。
「し・ず・ま・れぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」
突然耳を塞がないと痛くなるほどの大音量の声が聞こえた。
声の方を見ると先ほどまで目立つ椅子に座っていた巨漢の男が立ち上がっていた。
「皆の者聞けぇぇい!儂が新たにこの地の領主となったノーマ侯爵である!」
とにかくデカイ声だ。あまりのうるささに一気に静まり返った。
「お前達の騎士を思う気持ち、儂の心を大きく震わせた!
よって3名の騎士達は儂と正々堂々と闘い!名誉ある処刑としよう!」
は?何言ってんだ?
周りを見ると同じように首を傾げたりしている。そして誰かが叫んだ。
「領主様が負けたらどうなるんで?」
うん、俺も思った。
「負ける事がないから処刑なのだ!
おい、直ちに儂の武具とそいつらの武具を持って参れ!」
「ノーマ侯爵、それでは陛下の命に逆らうことになります」
「どのみち死ぬのだ!儂がどう処刑しようと勝手であろう!」
「いえ、ですが…」
「おい、コイツ誰か処刑しろ。あぁコイツの希望通り引き裂きの刑にしてやれ」
他の兵士がすっ飛んでくるとノーマ侯爵に口を挟んでいた兵士が捕らえられ、手際よくロープを腕と足に繋がれ馬4頭にそれぞれが繋がれる。
「な!なぜ!何故ですか侯爵様ぁぁぁぁ!」
それがその兵士の最後の声だった。
合図で馬4頭が別方向に歩き出し獅子を引きちぎられ絶命した。
処刑を見に来たはずの民衆はその状況に唖然となっていた。
「よし!お前!儂の武具とそいつらの武具を持って参れ!」
「はい!直ちに!」
ものの数分で武具が持ってこられ、ノーマ侯爵が装備を身につけ始めた。
「そこの3名も早く準備するのだ!」
ギャレット達は呆気にとられながらも武装していく。
ヴァリューム騎士団の装備だ。
ノーマ侯爵も武装し終わ…る。なんだアレは!
そう思ったのは俺だけではなく周りもノーマ侯爵の装備を見て驚いていた。
二本の巨大なツノが生えたような兜を被り、手には小さなハンマーと上半身裸でズボン一丁という出で立ちなのだ。
そしてその裸になった上半身はボディビルダーのような筋肉だった。
「実に身が引き締まるわい!
騎士ども決闘の用意は出来たか!」
ギャレット達もさすがに驚きを隠せないようで、本気でアレで戦うつもりなのか?といった状況なのだろう。
「では処刑を始める!
が!その前に一騎打ちか?それとも3人同時でくるか?」
かくして公開処刑?が始まろうとしていた。
読んでくれてありがとうございます。
次回更新は本日17時予定です。
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