レドナクセラ帝国の滅亡
第5章最終話
「そこの2人止まれ!」
ヴァリュームに着くと突然停められた。
素直に従うと今度は尋問が始まる。
「お前たちは何者か?またどこからやって来た」
よくよく見るとヴァリュームの入り口に掲げてあった旗が前と違うことに気がついた。
「あの、ヴァリュームはガウシアン王国に負けたんですか?」
「まずは質問に答えろ」
「すいませんでした。私たちは冒険者でヴァリューム湖の遺跡に行ってまして、今日戻ってきたところです」
そう言うと冒険者証を提示させられ確認を取った。
「ここは今後正式にガウシアン王国領となった」
「領主とかはどうなったんでしょう?」
「元領主は我らの軍を見て自殺したそうだ。
またこれから騎士団を率いた騎士団長などを責任者として処刑することとなった」
ギャレットが処刑?
処罰ぐらいはあると思っていたが処刑だと!
「なぜですか?」
「なぜだと?国王の命令だからだ」
うわ、マジ基地かよ。
こりゃあ確かにガウシアンの王は聞いてた以上に残虐非道なんだろうな。
俺は騎士団長と少し顔見知りなので挨拶だけとお願いしたところ、別れの挨拶は許可され、兵士に連れられ牢に行った。
「おい面会だぞ」
そこに綺麗な姿勢で座ったギャレットがいた。俺を見るとギャレットが優しく微笑む。
俺とルースミアはギャレットの牢の前で話をした。
まず俺たちが町を出た2日後にガウシアン軍が城塞都市ヴァリュームの前で軍を待機させ、降伏勧告の返事を聞いてきたそうだ。
もちろん即答で降伏には応じられないと伝えると、なんとガウシアンの王自らが声をあげたそうだ。
降伏に応じれば領主及び騎士団長とその責任者の処刑のみで後は咎めない。だけどもし応じない場合は全員皆殺しにすると…
ひでぇな、想像以上だぞ。
もしその場にいたらさすがに俺も黙っちゃいなかったな。バルロッサのところでの足止めはその為か…
これにはさすがに町中が大騒ぎとなるが、領主は徹底して降伏などはしない、ヴァリュームは守りに入れば圧倒的に有利だと譲らなかったそうだ。
そして3日目の朝に領主が自殺していたそうだ。発見したギャレットと騎士たちはおかしいとは思いつつも、これで町の人達を守れると騎士団で話し合い、4日目に降伏することにしたそうだ。
もちろんギャレット達数名は死ぬ覚悟でだ。
降伏を受け入れると早速ギャレットとその他副団長達は捕らえられたそうだ。
ギャレットが俺にそっと手紙を渡してきた。
「これを私の従者のセッターに渡して欲しい。そしてこれは出来たらでいいが、セッターを守ってやって貰いたい」
「従者にですか?」
「私には妻も子供もまだいなかったが、私によくなついてくれて、セッターは息子のような存在だったんだよ」
あー、これ断れないやつだ…
「今の状況から保証は出来ませんが、俺にできる限りのことはします」
「ありがとう。そして君ならきっと私のところへ来てくれると思っていたよ。
君とは短い間だったが友だと思っている。君に会えて本当に良かった。
そして、さらばだ。我が友よ」
ギャレットはそう言うと面会を終わらせた。
俺は辛かった。あの時やっぱり無理にでも戻っていれば、俺が始原の魔術使っていたら、そうしたら結末が変わっていたかもしれない。
…たら、ればを今更言っても変えられないんだよな…
気がついたら俺の頬を涙が伝っていた。
その足ですぐにセッターの元に向かった。場所は元ヴァリュームの騎士に聞いて直ぐに教えてくれた。
「どちら様でしょうか?」
俺はギャレットから受け取った手紙を渡した。
セッターは手紙を黙って受け取ると読みはじめ、時折涙ぐみそれを堪えながら読んでいた。読み終え手紙を大事そうに懐にしまう。
「サハラ様?でしょうか。手紙を持ってきていただきありがとうございました。
今後はサハラ様の従者として頑張ります!」
「はいぃ⁉︎」
「え?その様に手紙にありましたのですが、何か間違っていたでしょうか」
「ちょっとその手紙を見せてもらえますか?」
手紙を受け取ると中を見るが読めなかったよ。
困っているとルースミアが代わりに読んでくれた。
中にはセッターに今までのことや息子の様に思っていたことなどが書いてあり、最後の締めくくりにこうあった。
この手紙を届けてくれたサハラに従いなさいと、彼は騎士ではないけれど立派な考えを持っていて、今後を担う新しい騎士に必要な事をきっと教えてくれるだろうと。
…あいつめ。でもこれはギャレットの遺言みたいな物だしな。
「俺はギャレットの思ってる様な立派な人間じゃないかもしれないですが、それでも俺についてくるつもりですか?」
「ギャレット様を信用していますから!」
ここまで言われては仕方がないな。渋々ながらも俺は引き受けることにした。
セッターはギャレットの最後をしっかり見てきたら準備をして向かうという事だったため、俺は半ば住まいと化している宿を教えておいてその場を離れた。
そしてすっかり帰りが遅くなって心配しているであろうカイとレイチェルの待つレッドエンペラードラゴンインへと向かうのだが…
「サハラよ」
「ルースミア、言うな分かってる…」
そう、俺のエルフの外套を掴んで着いてくる女の子がいるのだ。
俺は足を止め外套を掴んでいる女の子を見るためにしゃがんで目線を合わせる。
「君は誰?パパとママは何処かな?」
女の子は元は白かったであろう薄汚れた服を着たエルフの女の子だった。首を傾げて俺を見た後、指を差してパパと言う。振り返るが誰もいない。
「パパ」
今度はハッキリと俺の外套の裾を掴んで言った。
ちょっと待て。俺にいつ子供が出来た?しかもエルフだぞ?って違うだろ。目の焦点が合ってない?目が見えてないのか?
「目が見えないのかい?」
「うん」
「ママはどうしたのかな?」
「ママ、昨日出掛けて帰ってこないの。だから探しにきたの」
これは困ったぞ。目が見えないから母親の姿がわからない上に家もわからない。
「どうして俺がパパなの?」
「お洋服からエルフの魔力を感じたの」
それだけでパパかよ。
「サハラ、その子はソーサラーだ。エルフの外套から魔力を感じて主をエルフと思っているようだぞ。
おいエルフの小娘、サハラは貴様の父親ではない。離れろ」
ちょ、言い過ぎだルースミアと思っていると案の定泣き出した。
人の往来もあり目を引くためため、仕方なく一時宿に連れて帰る事にした。
こうしてレドナクセラ帝国は崩壊し、ガウシアン王国によって支配される事になったのだった。
読んでいただきありがとうございます。
次回更新は明日の17時予定です。
明日からいよいよ最終章に入ります。
それでは




