ガウシアン王国
遅くなりました。
スレイド視点
ヴァリュームの連中は恐らくヴィローム奪還するだろうな。
このままほっておいても誰が帝国の皇帝になるのかで荒れると思うが…それじゃあつまんねぇ。
それにあの闘争の神の奴、わざと俺を隣国のしかもレドナクセラ帝国を狙ってたガウシアン王国に飛ばしやがった。
俺は結構な知名度がある。素性が割れるのを避けるため、今いるガウシアン王国のセイバートゥースの町で顔まで覆う軽量の兜を買った。
「後は名前だな」
せっかくの新たなスタート地点だし、この町から取って、トゥース…この響きなんか嫌だな…セイバーでいいか?
よし、今日から俺はセイバーとして生きるか!
ここがセイバートゥースの領主が住む館か。
「何か領主に用か?」
「おう、領主に飛び切りの情報持ってきたぜ」
「怪しいヤツめ、兜を取れ!」
「雑魚に用は無いんだがなぁ」
門番がウッと声を上げ倒れる。んん〜ん、本当にいい切れ味だぜ。
フローズンデスで突き刺し抜く。血は一滴も流れず霜がついたようになっているだけだ。
「入らせてもらうぜ。ってもう死んでるか?」
俺は館に入り込む。当然ながら館に控えていた兵士が俺を取り囲みやがる。
それにしても随分数が多いんじゃねぇか?
「貴重な情報を提供してやるってのに邪魔すんなら皆殺しだぜ?」
「ふざけるな!この人数相手に勝てると思ってるのか!」
「試してみるか?」
フローズンデスを構える。
「待て。お前らじゃ相手にならん。
貴様、今貴重な情報と言ったか?」
「陛下!」
奥の部屋から突然現れた男、陛下だと!
じゃあコイツが親を殺して若くして王位継承した狂王と呼ばれているレフィクルか。
まったく闘争の神さんは用意がいいねぇ、感動して涙が出てくるぜ。
狂王レフィクル、飽く事なき征服欲と残酷とも言える支配から狂王と呼ばれている。
あらゆる種類の武器に精通した優れた戦士の様に普段は装っているが、その実幼い頃に親である王を殺しに来たアサシンに見初められ、秘密裏に教育を受けたアサシンである。
アサシンになる為の条件である、親しい人物の殺人で平然と両親を殺せるほどのサイコパスでもある。
なお、技術をマスターした後、師も殺害しているためレフィクルがアサシンである事を知る者はいない。
「あぁ、言ったぜ。あんたが泣いて喜ぶような情報だ」
「貴様!陛下にたいして無礼だグワッ!」
陛下と呼ばれた男は兵士の1人を蹴り飛ばして道を開けると、俺に向かい剣を向けてきやがった。
「おもしれぇ!狂王とやらがどんなもんか試してやるぜ!」
「……」
無言で切り掛かりやがって、っと!危ねぇ、どさくさに紛れてスローイングダガーを投げてきやがった。
コイツ…狂王は伊達じゃ無いってことかよ。
いいぜ!ならこっちだって手加減なしだ。
俺は腕輪で得た騎士魔法の予測を使う。
へっ!狂王さんの動きが見えるぜ!
「ほぉ、騎士魔法を使うか。貴様ただの傭兵風情ではないな。
名前を言ってみろ」
「俺の名前はスレ…セイバーだ」
「スレセイバーか、聞いたことがないな。
それで、まだ続けるか?」
やべぇ名前が変わっちまった。って言うかお前から攻撃しかけてきたんだろうが!
「別にあんたを殺しに来たわけじゃねぇ。ここへは領主に飛び切りの情報持ってきたつもりだったが、狂王がいるなら話はもっと早ぇ」
「ほぉ、それは余を愉しませるものだろうな?」
そこでレフィクルが剣を収めたから俺もそれに習った。
「言ってみろ。聞いてやる」
「あぁいいぜ」
俺はレドナクセラ帝国に起こったことを教えてやった。
今なら皇帝は死にヴァリューム以外なら余裕で分捕るチャンスだとな。
もちろんサハラやルースミアの事は言わない。あの鞄を手にしないといけないからな。
それにこの狂王レフィクルはどうにも信用出来ねぇ。一緒にいたらいつ首切られるかわかんねぇってぐらい危ねぇ奴だ。
フムと考え込んだと思えば、数秒も経たずに兵の準備に取り掛かりだす。
「随分簡単に信用しやがんだな?」
「嘘にしては出来過ぎだ。
それより貴様もついてきてもらうぞ。嘘であれば死んで償ってもらわねばいかんだろう?」
「いいぜ」
どうせ嘘じゃねぇから問題はない。
「貴様、余の配下にならんか?」
「悪いがお断りだ。誰かに仕えるなんざ考えただけでゾッとするぜ」
「その腕惜しいな」
勘弁してくれよ。他の奴なら少しぐらい考えるかもしれないが、コイツだけは危険な香りがプンプンするぜ。
ガウシアン軍おおよそ2千って所か?随分と少ないねぇ。まぁ王都に兵の派遣させてたからすぐに集まってくるみたいだけどな。
驚きなのは一国の王が先頭切って進軍してるところだ。
少なくともレドナクセラ帝国の皇帝はついては行くが後方からだと思う。じゃなきゃ帝都まで撤退する前に死んでたはずだ。
そんな事を考えながら馬を走らせた。
「貴様の言う通りだったな。
全軍に通告、レドナクセラ帝国の帝都に進軍。生きている者がいれば鎮圧し城を奪え」
側近の将らしき奴がレフィクルの言葉を聞くと全軍に大声でレフィクルの指示を連呼している。
「はぁっ!」
掛け声をかけるとレフィクルが1人帝都に向けて馬を走らせた。
「おいおい、随分と勢いのいい王様だねぇ。
それにしてもオークじゃなく生きている者かよ」
王が先陣を切るのを合図に全軍も置いていかれまいと進軍し始めた。
しかしあれだな。決断してから行動までが早すぎる。しかも移動速度を考えて騎馬隊のみで軍を形成させ進軍とはな。
少数であっても機会があれば迅速に行動するレフィクルは確かに優れた将だな。
こいつぁ…俺、ミスっちまったか?
なぁ、闘争の神エナブさんよ。
その後レフィクルはレドナクセラ帝国の帝都をあっけなく制圧した。
この数年後、狂王レフィクルが大陸を掌握するとはこの時誰も思わなかった。
いつも読んでくれてありがとうございます。
やっと更新出来ました。遅くなってすみません。
次回更新は土日お休みを頂きまして、月曜日の17時を予定しています。
お楽しみに




