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第8話 二度目の刺客が学校に潜入してセシリアを狙ってきた。

暗く冷たい空間。

氷の奥に揺らめく巨大な影が、静かに目を細めた。


「シオン」


呼びかけに応じて、銀髪の女が跪いた。

紫色の瞳が冷たく輝いている。


「ガルドが失敗した。レイン・ヴァルディスは完全に使命を放棄し、村娘に溺れているようだ」


魔王の声は低く、苛立ちを帯びていた。


「はい、魔王様。私が確認いたしました。あの男は……幸せの幻想に浸かり、完全に堕ちています」


シオンは淡々と答えたが、その唇の端がわずかに歪んだ。

魔王はゆっくりと続けた。


「ならば、命令を変える。レインが改心の兆しを見せない場合……抹殺せよ。アシェルの残留魔力は惜しいが、もう期待できん。お前は同化率が高い。結界の影響も少ないはずだ。セシリアという村娘を餌にし、奴の心を徹底的に壊せ」


シオンの瞳に、暗い喜びが浮かんだ。


「了解いたしました。……幸せそうな恋人など、見ているだけで吐き気がしますから」


影が揺らめき、シオンの姿が消えた。





翌朝。


俺は基礎魔法学校の教室で、隣に座るセシリアの横顔をぼんやり見ていた。


ここ数日、セシリアはさらに俺にくっついてくるようになった。

昨日の帰り道も「レインくんの手、温かいね」と言いながら、ずっと握っていた。


(……このまま平和に過ごせればいいのに)


そんなことを考えていた矢先、教室の扉が開いた。

先生が新しい生徒を連れて入ってきた。


「みんな、今日から新しい友達が加わる。シオンという薬師の娘だ。よろしく頼むぞ」


銀色の長い髪に、紫色の瞳をした美しい女性だった。


年齢は十五、六歳前後。静かで、どこか冷たい印象を受ける。


シオンは教室を見回し、俺とセシリアのところに視線を止めた。

その唇が、ほんのわずかに微笑んだように見えた。


休み時間になると、シオンはセシリアに近づいてきた。


「あなたがセシリアさん? 村の人の噂通り可愛いわね。私はシオン。よろしく」


セシリアはいつものように明るく微笑んだ。


「わあ、綺麗な髪……! シオンさん、よろしくお願いします!」


二人はすぐに打ち解けたように話し始めた。

俺は少し離れた席から、じっとその様子を観察していた。


(……あの女、間違いなく刺客だ)


魔力の気配が、ガルドより明らかに強い。

しかも、セシリアに近づく距離が妙に自然だ。





昼休み、シオンはセシリアに薬草の話をしながら、さりげなく俺のことを探ってきた。


「レインさんは最近、夜中に外に出たりするの?村の外れで魔物の気配がしたって聞いたわよ。心配じゃない?」


セシリアの表情が少し曇った。


「え……レインくん、そんなこと……?」


俺は内心で舌打ちした。


(この女……セシリアを不安にさせる気か)


放課後、シオンはセシリアに「一緒に薬草採りに行かない?」と誘っていた。

俺は自然にその間に割って入り、セシリアの手を軽く引いた。


「……セシリア、今日は俺と帰ろう」


セシリアは少し驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうに頷いた。


「うん! レインくんと帰る!」


シオンの瞳が、冷たく細められた。



その夜。


俺は再び村の外れの森に向かっていた。

シオンの気配が、明らかにセシリアの家の近くに近づいている。


「……もう我慢の限界だ。」


俺は誰もいない森を歩きながら、静に魔力を解放していった。

黒い翼を広げ、紅い瞳で夜の闇を睨む。


遠くから、銀髪の影がゆっくりと近づいてくる気配がした。

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