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第5話 村に不審な青年が現れてセシリアに近づいてくる。めんどくせえ……でもあいつがセシリアを悲しませるのは許せない

基礎魔法学校に通い始めて五日目。


俺はいつものようにセシリアと一緒に学校の帰り道を歩いていた。


「レインくん、今日の授業で風魔法、すごく上手かったよね! 先生も驚いてたよ。熱病の後で才能が開花したって、本当みたいだね」


セシリアは隣でスキップするような軽い足取りで話しかけてくる。

胸の奥が少し温かくなる。


「……たまたまだよ。 お前の方が頑張ってたじゃないか」


「えへへ、褒められちゃった!」


セシリアは照れくさそうに髪を指でくるくる巻きながら笑う。 この数日で、俺は完全にこの日常に毒されていた。


セシリアとこうして歩いているだけで、十分すぎるほど幸せだった。


村の入り口近くまで来たとき、セシリアがふと足を止めた。



「あ……あの人、誰だろう?」


道の脇に、荷車を引いた黒髪の青年が立っていた。 年齢は二十代後半くらい。目つきが少し鋭く、無愛想な印象だ。 村では見かけない顔だった。


青年は俺たちに気づくと、ゆっくりと近づいてきた。


「こんにちは。僕はガルド・レインズ。最近、この村に越してきた行商人だ。 よければ、道を教えてもらえないか?」


丁寧な口調だが、どこか探るような視線を感じる。 特に俺に向けられる目が、妙に冷たい。

セシリアはいつものように明るく答えた。


「えっと、行商人さんですか? この村は小さいから、迷いやすいですよね。 どこに行きたいんですか?」


ガルドはセシリアを見て、わずかに口元を緩めた。


「君は優しいね。実は、宿を探しているんだ。 できれば、安くて静かなところがいい」


セシリアは俺をちらりと見てから、笑顔で言った。


「それなら、村の東側に小さな宿屋がありますよ! 私が案内しましょうか?」


(……おい)


俺は内心で舌打ちした。 この男の視線が、明らかに普通じゃない。

魔王から与えられた感知能力が、弱いながらも「魔族の気配」を捉えていた。


ガルドは俺を一瞥すると、薄く笑った。


「君は……レイン・ヴァルディスだな? 噂は聞いているよ。熱病から奇跡的に回復した準男爵の三男だって。 随分と……元気そうだね。」


その言葉に、微かな挑発が混じっている気がした。


俺は無表情で答えた。


「……ああ、そうだ。 お前は新入りか。村に用があるなら、早く用を済ませて帰れよ」


ガルドの目が細くなった。


「ふん……素っ気ないな。 まあいい。ゆっくり話す機会はあるだろう」


彼はそう言い残し、荷車を引いて去っていった。


セシリアが少し心配そうに俺を見上げた。


「レインくん……あの人のこと、知ってるの?」


「……いや、初めて見た。 ただ、なんとなく……気味が悪いな」




その夜。

俺は自分の部屋の窓から、暗い村の外れを見つめていた。


微かな、だが確かな魔族の気配が、ガルドの方角から漂ってくる。


(なにをしに来たか……だいたい察しはつく)


魔王の声が、頭の奥で小さく響いた気がした。 まだ完全ではない精神干渉。


だが、確かに監視されている。


ガルドがセシリアに笑顔を向けた瞬間を思い出すと、胸の奥に苛立ちが湧いた。


セシリアの笑顔を、悲しませるようなことは誰にもさせない。


たとえ、それが魔王であっても。



俺は静かに拳を握りしめた。



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