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第15話 学校に戻ったら、ドラ息子たちとセシリアが待っていた。守ったはずの日常が、少しずつ変わり始めている件

学校の裏口から戻ると、教室はまだ混乱の余韻が残っていた。


机が倒れ、ノートが散らばり、数人の生徒が泣きじゃくっている。

その中心で、セシリアが俺の姿を見つけると、目に涙を浮かべて駆け寄ってきた。


「レインくん……!」


彼女は迷わず俺の胸に飛び込み、強く抱きついた。

体が小刻みに震えている。


「無事だったの……?本当に……本当に心配したよ……!一人で外に出て行っちゃうから……怖かった……」


「……悪い。心配かけたな」


俺はセシリアの背中を優しく撫でながら、周囲を見回した。


少し離れたところで、上級貴族のドラ息子三人——アルフレッド、リカルド、バルドが疲れ果てて壁に寄りかかっていた。


三人とも服が乱れ、息を荒げ、恐怖の色がまだ顔に残っている。

アルフレッドが俺を見て、苦々しい表情で口を開いた。


「……お前のおかげだ。正直、死ぬかと思った。でも……お前が指示を出さなかったら、もっと被害が出ていた。……ありがとうよ」


リカルドとバルドも、しぶしぶ頭を下げた。


「俺たち、ただ震えてるだけだった……お前が『守れ』って言ってくれたから、動けた。……借りは返すぜ」


俺は少し驚いた。

先日まで俺を病弱だと馬鹿にしていた連中が、こんな言葉を言うとは思わなかった。


「……ああ。お前ら、意外とやるじゃねえか。恐怖に耐えて生徒たちを守ったんだ。さすが貴族のご子息だ」


アルフレッドが照れくさそうに鼻を鳴らした。


「ふん……お前も大概だぞ。一人で外に出て行って、何してたんだよ」


俺は軽く肩をすくめた。


「森に蜘蛛の化け物がいたからな。そいつをやっつけた。化け物って言っても、しょせんは蜘蛛だからな。子犬くらいの大きさだから斧で何とかなったぜ。おまえらがいたからできたんだよ」


三人は一瞬顔を見合わせた後、わずかに笑った。

それは、初めて見る素直な表情だった。



(……友情、ってほどじゃねえけど……少しは、変わってきたのかもしれねえな)


セシリアが俺の胸から顔を上げ、涙を拭いながら微笑んだ。


「レインくん……みんなを守ってくれて、ありがとう。レインくんがいて、本当に良かった」


彼女の温かい言葉と、ぎゅっと握られた手に、俺の胸が熱くなった。



放課後、セシリアと一緒に村の道を歩きながら、俺は静かに考えていた。

守るべきものが、セシリアとその家族だけじゃなくなってきた。


学校の仲間、村の人々……少しずつ、守りたいと思う範囲が広がっている。


でも、それは悪いことじゃないと思った。



夜、部屋に戻った俺は窓の外を見つめた。

遠くの山の噴火の影響か、空がまだ少し赤く染まっている。

魔王の封印が、確実に緩み続けている気配がした。





地獄の最下層。

永劫の氷獄の中で、巨大な影がゆっくりと目を開けた。


「ヴォルド。悪魔騎士ヴォルド」


魔王の声が響く。


黒い鎧に覆われた巨体が、氷の玉座の前に跪いた。


両肩と腹に獣の顔があり、三本角の兜のような頭部が低く垂れる。

背中には巨大な戦斧を携えた、悪魔騎士ヴォルド。


「魔王様。お呼びでしょうか」


「封印がさらに緩んだ。お前は配下を連れて最初に実体を伴って地上に出られる者となる。レイン・ヴァルディスを抹殺せよ」


ヴォルドの赤い瞳が、暗く輝いた。


「承知いたしました。あの小僧がどれほどのアシェルの力を宿していようと……

我が冥鉄の斧の前では、無意味でございます」


魔王の笑い声が、地獄の底に響き渡った。

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