第12話 大きな地震の夜にセシリアたちの様子を見に行ったら、遠くの空が赤く染まっていた
夜中、突然の大きな地震が村を襲った。
ゴゴゴゴゴ……!
家全体が激しく揺れ、棚の上の物が落ちる音が響く。
俺はすぐに外へ飛び出した。
「セシリア……!」
村のあちこちで悲鳴と戸の開く音が聞こえる。
人々が次々と家から出てきて、不安げに空を見上げていた。
俺は夜着のままセシリアの家に向かって走った。
到着すると、ちょうどエレナが子供たちを抱えて外に出てきたところだった。
「レイン様……!」
セシリアが俺の姿を見つけると、裸足のまま駆け寄ってきた。
彼女は震える体で俺に抱きつき、顔を胸に埋めた。
「レインくん……怖かった……すごく揺れて……」
「……大丈夫だ。もう落ち着いたぞ」
俺はセシリアの背中を優しく撫でながら、周囲を見回した。
ルークは強がって「大丈夫だぜ!」と言っているが、手が少し震えていた。
ミアはエレナにしがみつき、泣きそうな顔をしている。
村人たちも外に出てきて、不安そうに空を眺めていた。
「あれ……見てみろ……」
誰かが指差した方向——はるか北の夜空が、不気味な赤色に染まっていた。
山の方向だ。遠くても、その異様な光ははっきりと見えた。
「なんだ……あれは……?」
「火事か……? いや、こんなに広い範囲が……」
村人たちのざわめきが広がる中、俺は胸の奥で確信した。
(魔王の封印……さらに緩んできたな)
この地震と赤い空は、ただの自然現象ではない。
アシェルの魔力を持つ俺には、それがはっきりと感じ取れた。
翌朝、学校へ行くと村中が昨夜の話題で持ちきりだった。
「北方の山で大噴火があったらしいぞ」
「溶岩が流れ出してるって話だ……こんなに遠くまで影響が出るなんて……」
先生も授業の最初にその話をした。
「皆、昨夜は怖かったろう。幸い村に被害はなかったが、遠くの山が活発化しているようだ。気をつけるように」
俺は窓の外を見つめながら、静かに考えていた。
(魔王の力が、現実世界にまで影響を及ぼし始めた……封印が、確実に弱まっている)
放課後、セシリアと一緒に村の外れを歩いていると、彼女が俺の袖を軽く握ってきた。
「レインくん……昨夜の地震、怖かったね。でも、レインくんがすぐに来てくれたから……安心したよ」
「……ああ。俺も、セシリアが無事でよかった」
セシリアは照れくさそうに笑ったが、その瞳の奥にまだ少し不安が残っているように見えた。
♢
その日の午後、村はずれの森の中。
一人の木こりが、いつものように木を切っていた。
「ん……?」
木の陰に、蹲っている女の姿を見つけた。
銀紫色の長い髪が、木漏れ日の中に浮かんでいる。
「おい、大丈夫か? 怪我でもしたのか?」
木こりが心配そうに近づいた瞬間——
女の背中から、黒く太い蜘蛛の足が8本、音を立てて飛び出した。
女はゆっくりと顔を上げ、妖しく微笑んだ。
紫色の瞳が、獲物を前に輝いている。
「次の獲物……見つけたわ」




