第11話 学校で貴族のドラ息子たちに絡まれたけど、みんなの前で平手で一蹴したら喝采されて、家に帰ったら家族に怒られた件
学校生活が始まって二週間が経った。
今日の魔法実技の時間、いつものようにセシリアの隣で座っていると、教室の空気が少し変わった。
「へえ……レイン・ヴァルディス。熱病で死にかけたはずの病弱坊ちゃんが、最近随分と調子に乗ってるみたいじゃないか」
声をかけてきたのは、村では数少ない上級貴族の息子たち、三人組のドラ息子だった。つまり、こいつらは陽キャだ。
リーダー格の名前はアルフレッド。病弱だった頃の俺を散々見下していた記憶が、ぼんやりと蘇る。
周囲の生徒たちが息を飲む中、アルフレッドはニヤニヤしながら続けた。
「最近、魔法の才能が開花したって大評判だな。でも所詮は辺境の落ちぶれ準男爵の三男だろ?調子に乗るんじゃねえよ」
彼はそう言いながら、軽く風属性の魔法を放ってきた。
教室内に風が渦を巻き、俺の机の上のノートを吹き飛ばそうとする。
俺はため息をついた。
この陽キャめ。
立ち上がるなり、右手で軽く平手を振るった。
パァン!
乾いた音が教室に響いた。
アルフレッドの頰が派手に吹き飛び、彼は床に転がった。
魔法はあっさり霧散し、残りの二人も目を丸くしている。
「な、なんだ……!?」
二人が慌てて魔法を放とうとした瞬間、俺はもう動いていた。
左手の平手で一人、右手の平手でもう一人。
三人とも床に転がり、魔法など一度も完成させられなかった。
教室が一瞬、静まり返った。
次の瞬間。
「すげえ……!」
「レインくん、強すぎ!」
「病弱だったって本当かよ!?」
生徒たちから喝采が上がった。
特に男子生徒たちが興奮気味に俺を見てくる。
セシリアは驚いた顔をした後、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
「レインくん……かっこよかったよ」
俺は内心で舌打ちした。
(……やっちまった。目立ったな)
♢
放課後、俺はセシリアと一緒に家路についた。
彼女は俺の腕に軽く手を絡めながら、楽しそうに話しかけてくる。
「今日のレインくん、みんなびっくりしてたね!」
「……ああ、まあな」
家に着くと、予想通り家族が揃っていた。
長男のディオン(22歳)が腕を組んで立っている。
次男のエドガー(19歳)はため息をつき、父である準男爵が厳しい顔で俺を待っていた。
「レイン」
父の声が低く響いた。
「学校で貴族の息子たちを三人まとめて平手で張り飛ばしたそうだな。
しかも、みんなの前で」
俺は肩をすくめた。
「……向こうが先に絡んできたんだ。魔法まで使ってきたから、仕方なく」
ディオンが呆れたように言った。
「仕方なく、で三人まとめて倒すのか?お前、熱病の後で本当に人が変わったようだな……だが、目立ちすぎだ。我が家は辺境の落ちぶれ貴族だぞ。目立つのは得策じゃない」
エドガーがため息をついた。
「まあ、腕は確かになったみたいだが……もう少し控えめにやれよ」
父は最後に静かに言った。
「レイン。お前が強くなったのは喜ばしい。だが、力の使い方を間違えるな。
この村で穏やかに暮らしたいなら、目立つ真似は控えろ」
俺は素直に頭を下げた。
「……わかりました。以後気をつけます」
部屋に戻り、一人になった俺は小さく笑った。
(家族に怒られるなんて……久しぶりだな)
転生前は、誰にも怒られることすらなかった。
この家族の温かさが、妙に心地いい。
夜、窓の外を見ていると、突然、地の底から低い地響きが聞こえた。
ゴゴゴゴ……!
家がわずかに揺れ、棚の上の小物がカタカタと音を立てる。
大きめの地震だった。
「……なんだ、これ?」
俺は眉を寄せた。
魔王の封印が、さらに緩んできた予感がした。
まだ小さな揺れだが、確実に何かが変わり始めている。




