表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/17

第10話 二度の刺客を乗り越えて、セシリアと穏やかな日常に戻れた。

シオンを倒してから五日が経った。


村はいつも通りの静けさを取り戻していた。

誰も、夜に何が起きたのかを知らない。


俺は準男爵家の庭で、セシリアと並んで座っていた。

午後の柔らかな日差しが、彼女の栗色の髪を優しく照らしている。


「レインくん、今日は一緒にハーブを育てようね。この前、レインくんが元気にしてくれた場所に、新しい苗を植えたいの。」


セシリアは小さな籠を抱え、楽しそうに笑う。

最近、彼女は俺の側を離れなくなっていた。

刺客事件の夜に感じた不安が、まだ少し残っているのかもしれない。


「……ああ、いいよ。セシリアが植えたい場所でいい。」


俺がそう答えると、セシリアは嬉しそうに俺の袖を軽く掴んだ。

その仕草が自然すぎて、胸の奥が温かくなる。


庭仕事をしていると、ルークとミアが駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん! またお姉ちゃんと遊んでるのかよ〜」


ルークがからかうように笑う。


「おねえちゃん、レインおにいちゃんに花冠作ってあげて!」


ミアが無邪気にせがむ。


セシリアは顔を赤らめながらも、笑顔で弟妹の相手をした。

俺は少し離れたところで三人を見守りながら、静かに思う。


(この時間が、俺のすべてだ)


母親のエレナも庭に出てきて、温かい声をかけてきた。


「レイン様、セシリアが本当に生き生きしているわ。あなたが来てから、この子は毎日が楽しそうで……ありがとう」


俺は軽く頭を下げた。


「……こちらこそ、家族のように接していただいて感謝しています」




午後遅く、セシリアと二人で村はずれの丘に登った。

風が心地よく、村全体が一望できる場所だ。


セシリアは俺の隣に座り、膝を抱えてぼんやりと景色を眺めていた。


「レインくん……最近、時々遠くを見る目をするよね。何か、悩んでいることがあるの?」


彼女の声は優しく、でも少し不安げだった。

俺は一瞬、言葉に詰まった。


魔王の使命、アシェルの力、封印が緩み始めている気配。

そして、本当の自分。


すべてを話すわけにはいかない。


「……昔のことを、少し思い出してただけだよ。でも今は、セシリアとこうしている方が大事だと思ってる」


セシリアは少し寂しそうに微笑みながら、俺の肩にそっと頭を預けてきた。


「うん……私も、レインくんと一緒にいるのが一番幸せ。ずっと、このままだったらいいのに……」


その言葉に、胸の奥が熱くなった。


(このまま使命をサボり続けていいのか……?でも、この笑顔を失うくらいなら、俺は——)


夕陽が村を赤く染めていく。

セシリアの髪が、風に優しく揺れていた。




その夜、部屋に戻った俺は窓の外を見つめた。

魔王の気配が、以前より明らかに強くなっている。

封印が、確実に緩み始めていた。


次に来る刺客は、もっと強い——おそらく、肉体を伴った本格的な存在になるだろう。


「……まだ、来るんだろうな」


俺は小さく息を吐いた。

考えたらキリがない。


それでも―――

セシリアの笑顔を守るためなら、何度でも影で戦ってやる。



この穏やかな日常を、絶対に守り抜く。


静かな夜の闇の中で、次の嵐の予感が、ゆっくりと近づいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ