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王賊 Crown & Crime  作者: ふん
模倣犯

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63/108

第四部「敵か味方か」

 オルドレン王子への報告はすぐに行われた。


 盗まれたはずの小皿が城内で見つかったという内容だ。

 衛兵の隊長が報告し、オルドレン王子は直接現物を確認した。


 パットンとグライムはその場に呼ばれ、彼が確認する様子を見ていた。


「こちらの小皿ですが」衛兵の隊長が言った。「どうやら猫が盗んだようです」


 オルドレン王子はグライムを見た。


「グライム殿、またお世話になりましたな」


「いいえ」グライムは言った。「こちらが猫の毛を利用したと言ったせいで、混乱させてしまいました。まさか猫そのものが犯人だったとは……お恥ずかしい」


 グライムの芝居がかった喋り方を、パットンは訝しく見ていたが、すぐに視線をオルドレン王子に戻した。


「まだアモーレは城に潜伏しているかも知れません。探したほうがいいです」

「当然捜索させています。ですが、怪盗はプライドが高い。わざわざ予告状を出すくらいだ。今頃必死に逃げているでしょう」

「でしょうね」


 グライムがにこやかに笑うと、吊られるようにオルドレン王子も笑った。


 パットンはグライムを横目で見たが、グライムは前を向いたままだった。






 報告の場が終わり、二人は客室へ向かった。

 廊下を並んで歩きながら、パットンはしばらく何も言わなかった。

 角を曲がった先の、人気のない廊下に差しかかった時、パットンが口を開いた。


「猫が盗んだ?」


 その口ぶりは、端からグライムを疑っていた。


「そう決定づけたのはオレじゃない」

「印象づけたのはオマエだ。猫やら、猫の毛やら、猫を使った手口やらとな」

「おまけにオルドレン王子の前では猫を被るってか?」

「グライム……。オマエが何かやったのは分かっている」


 グライムは前を向いたまま、何も言わなかった。


「宝石細工が施された小皿が戻ってきた。アモーレという怪盗はオマエの元恋人だ。そして、猫の話がきっかけで使用人たちが動いた。全部が繋がっている」

「繋がっているように思うか? オレには繋げたように聞こえたけどな」

「繋がっている」

「そういう見方もできるな」


 パットンは少し間を置いてから、ため息まじりに言った。


「ここは他国だ。私がオマエの行動について責任を取ることに限界がある。だから強く言えない」

「わかっている」

「わかっていて、やったということだな?」

「どうした? 言葉に棘があるぞ? 今回はそもそも盗まれてなかったんだ。問題あるか?」

「問題ないのが問題だろう……」

「そんなことはない。問題だらけだ」


 グライムは上着の内ポケットから畳んだ紙を取り出し、パットンに渡した。

 アモーレが書き写した、魔牢の設計者の情報と、その後が書かれているものだ。


「オマエ……どこで手に入れた。本当なのか? この情報は……」

「オルドレン王子も猫を被ってる可能性がある。もしくは化けの皮か」


 パットンが開いて読んだ。しばらく視線が動いた。


「なぜ隠す?」

「一般的な考えだと、魔牢の情報を他に流さないためだ。よくある曰くだろう? 最強の剣を打った鍛冶屋は殺される」

「だが、この情報を信じるなら殺されてないのだろう?」

「そうだ。理由を考えるなら。魔牢はまだ完成してない。欠点があることを知っていた」

「だから……グライム、オマエを国へ呼んで、魔牢の欠点をあげさせた? 完成させるために? なるほど……ヴァレンからの情報か」

「だろうな。ヴァレンはオレが城壁の欠片一つで、城壁の魔法陣をいじったのを見てる。どこまで繋がってるかはわからない。これも含めてヴァレンの作戦の可能性は十分ありえる」

「考えるだけ無駄だな……」


 パットンは紙を折り畳むと、返さずに懐へいれた。


「もう少しだけ、この国へ残る必要があるな……。オルドレン王子は……敵か……味方か」

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