第四部「偽物の王子」
パットンがジェーンとカックラウを呼び、シオンを拘束した。
シオンは抵抗しなかった。
詩を完成させることができなかった時点で、すべてが終わったことを理解していた。
高級宿から出たシオンを、騎士団が連行していった。
グライムとパットンが残された。
「おい、大丈夫か……。まだ目の焦点があってないぞ。それに気付かれたら、シオン・ヴォーカルが術式を続けていた可能性もある」
「大丈夫だ。テンパった人間は人の目を見ない。ヤバかったのは、段階的な術式だと気付かなったことだ。三行目で催眠だ。三行目の最後まで聞いてたら、ヤバかったかもな」
パットンが椅子に座った。
「詩の添削、あれは作戦だったのか」
「いいや、パットンが来たからとっさに思いついたあがきだ」
「なぜ突然詩の批評を?」
グライムが窓の外を見た。
「詩人はナルシストだ。批評を無視できない。反論したくなる。反論する間にリズムが崩れる。リズムが崩れたら術式は成立しない。よかったよ、アンタが王賊教育で詩を習ってるを教えてくれて」
「読める程度だ。王族教育の詩の知識があれば、十分に指摘できたがな」
パットンが立ち上がると、続きを話した。
「詩で人を殺す……。そんなことを考える人間がいるだなんてな……。たしかに詩には闇深い側面もある。だが、それは言葉の上でイーブンにするから価値のあるものだ」
「言葉で人を変えることはできる。その究極が、詩で人を殺すことだと、奴は思ったんだろ」
「言葉は確かに力を持つ。だがそれを人を殺すのに使えば……」
「犯罪者になる。でも、英雄にもなれる。そして、英雄になったのは国の王だ」
「王と賊を一緒にするな……」
「……本当にそうか?」
グライムは真面目な顔になった。
その表情の変化は、思わずパットンが気圧されるほどだった。
「どういう意味だ……」
「パットン。ここは高級宿屋だ。ふいの事件の現場でもある」
「そうだな。だからどうした」
「つまり、城の監視も、オレの仲間もいない空間だ」
「……なにが言いたい」
「ここに盗み聞きする者はいない。突然、降って湧いて現れたセーフティーゾーンだ。わかるな?」
「……どうだろうな」
パットンは警戒した。グライムが情報戦を仕掛けているかと思ったからだ。
だが、グライムは驚くほどあっさりと、パットンが聞きたかった言葉を口にした。
「……第二王子はいつから、偽物と入れ替わってる」
次の話で、シーズン1ラストの話です




