22話 サブ
ダイブギヤの意識が仮想世界に落ちていく感覚が終わり目を開けると宿屋のベットの上にいた。ベットの上から出た僕は、取り敢えず今日やる事を考える。
あのイケメン並の実力を付けないと大会に出られても上を狙えないのだから、やる事は1つモンスターがでるエリアに行って戦闘だ。
この前のエリアボス戦を経て僕は反省した事がある。それはサブウェポンの未所持。この前はフライに刀を投げてもらったお陰で勝てたが、次は武器が壊れたから戦えませんなんて言い訳したくない。
それに戦っては最中に武器の耐久値が減らない様に注意を払って戦うなんてやりにく過ぎる。だから、2振り目の武器を用意してし長期戦も大丈夫なプレイヤーになるのだ。
そうと決まれば、武器やだ武器やに行くぞ。僕はやる事が決まった為、勢いよく宿屋の階段を降りる。フロントでにこやかに会釈する宿屋のお姉さんにお辞儀し武器屋を目指して走り出した。
数分後僕はナイトレラ北通りの武器屋にて武器屋のおばちゃんとお金の相談をしていた。
「金が無いなら帰んな」
「えっと、ローンとか組めない?」
「ダメだ。うちはそういうのやってないんだ!!」
目的の店に着いたのは良いが、完全に失敗した。そういえば僕所持金500ゴルしかなかったよ。店長のおばさんに退店を勧められるが、此処で転けてる場合では無いのだ。なんとかして、サブウェポンをゲットしなければ。
「えー、じゃあ500ゴルで買える凄く強い剣無い?」
「あんた、うちの店をなめてんのかい?」
やっぱ無理かー、ていうかこれ桑の単衣着物と灰帯を買わなかったらサブウェポン手に入ったのでは?でもなーこの着物、超気に入ってるしなー。これ迄の戦いで防具の重要性を知った今あの時この装備等を買った事を今更後悔したりはしない。
僕みたいに武器か防具のどちらを先に揃えるかで悩む初心者は多いんだろうなー。無駄な考えを巡らせていると武器やのおばちゃんが、代案を出してくれた。
「素材は、あんたが持ち込めばその分マケテやるよ」
「おばちゃーーーん。僕、500ゴルで作りたくなる様な素材取ってくるよ!!」
「お前、やっぱりうちの店舐めてんだろ?!」
「ごめんって、じゃあ金策もしてくるから。待っててねー」
「待ちな!!」
「ん?」
おばちゃんの代案に乗った僕は早速店を出ようとして、呼び止められる。僕を呼び止めたおばちゃんは、店の奥からツルハシを持ってきてカウンターの上に置く。
「素材を獲ってくるならこのツルハシレンタルしていきな」
「ありがとう。じゃあ借りてくね」
「何勝手に持って行こうとしてだい。1日レンタルで500ゴルだよ」
「……」
なんか、このゲームボッタクル人多くない?僕は残りの全財産をツルハシに取られ一文無し状態で、金策と素材探しをしにフンバナ大森林に向かった。
絶対にあのおばちゃんが腰抜かす様な素材取ってきてやるーーーーーー!!
ツルハシをしまい愛刀を装備し直した僕はフンバナ大森林を北上しながら森の素材を求めて探索を始めた。
この大森林には採取エリアなる物が存在しており森の中でツルハシを振る場所があるらしい。そこが今回の目的になるだろう。
暫く進むと森から聞き覚えのある高音の鳴き声があちこちから聞こえ出してくる。この前アンネロゼが殲滅していた猿型モンスター、フルモンキーの群れだ。
森という地形を活かした高い機動力と群れという集団戦を仕掛けてくる厄介なモンスターだ。普通のソロビギナーなら逃げるのが定石だけど、こいつ等がどんな動きをするのかはアンネロゼの戦闘を間近で見れた為知っている。
「やってやろうじゃん」
あの居残り稽古を経て強くなりたいっていう想いが一層強くなったのをこの判断に感じる。僕はゲーム内の経験値以上の経験を欲して刀を正眼に構えて奴らが攻めてくるのを待ち構える。
数秒後視界の右斜上から仕掛けて来たフルモンキーを足捌きと身体を捻り最小限の動きで避け、お返しにと刀を振り下ろす。
振り下ろした刀はフルモンキーの胴体から大量の出血エフェクトを出させフルモンキーを光へと変える。どうやらこのモンスターは数で攻めてくる分HPは、低めに設定されているのだろう。
この刀ならノーガードで、まともに当てられれば充分一撃で葬ることが出来る事を確信し、勝機は自分次第ではある事に笑みが溢れる。
「お前等全員僕の経験値にしてやる」
僕の宣言が、理解できたのか四方八方からフルモンキーの怒りが感じられる声が聞こえてくる。僕は包囲された事を悟り走り出す。
多対1の場合足を止めたら集団リンチに遭う為スタミナが尽きない内に何匹か光に変える必要がある。僕はアンネロゼがやっていた方法を真似る。
勢いよく大地を蹴り、上空に飛び上がり木の上にいるフルモンキーに突っ込む。フルモンキーは、余裕の表情を浮かべながら隣の木へ飛び移ろうとするが、それも僕の計算の内だ。
現実なら出来ない動きもレベルアップで上がった身体能力と組み合わせる事でこの仮想世界のみ、実現出来るその事をアンネロゼは僕に教えてくれた。
僕は木の茎をパルクールの壁キックの感じで、2回目の跳躍で逃げた先のフルモンキーへ斬りかかる。
流石は高い機動力を誇るだけはあり刀の先が脚に掠るだけで留まるが、フルモンキーのバランスを崩すのには十分だった。
枝の上で怯んだフルモンキーを枝に掴まりながら串刺しにする。実体が維持できない様に光にとなって消えるフルモンキーを確認し、軽くガッツポーズを作る。
よし!!アンネロゼの動きは真似できた。今度はあのイケメンの打突の真似だ!!このまま全員叩き斬ってやる。
僕は次の練習台を見定め枝から手を離し着地と同時に走り出した。




