第12話 沼男
五人で遊園地に遊びに行った時、三組に別れてお化け屋敷に入った。私は鈴と一緒になった。
鈴と一対一になるのは珍しい。鈴はいつも凛と一緒にいるから二人だけで話をするのは中々新鮮だ。
「美奈と一緒じゃなくて良かったの?」
「じゃんけんで決めようって言った本人がそれ言う?」
「それもそうか」
薄暗くて今にもお化けでも出そうな道を歩いてるが鈴は全くと言っていいほど怯えた素振りがない。
かくいう私もホラーは苦手ではない。流石に目の前にいきなりお化けが出たら多少はびっくりするだろうが叫び声をあげるほどではない。
「なんか盛り上がんないね」
「ホラー耐性ある二人で組んじゃったから仕方ないよ」
「早く歩いて凛に追いつこ」
「一人で怯える凛を楽しむんじゃなかったの?」
「やっぱ近くで見ないと面白くないじゃん?」
「じゃあ最初から三人でよかったじゃん」
「細かいことは気にしない」
「キャーーーーーー!!!!!!」
突然、甲高い悲鳴が自分たちの進む道の先から聞こえた。
「今のって凛だよね」
「だろうね。早く行こ」
そういって鈴が歩くスピードを上げたので私もそれに合わせて速める。
「変なこと聞いていい?」
「なに?」
「身近な人が見た目や性格、全部が全く同じ何かが成り代わっていたらその人は元の人と同一人物だと思う?」
「スワンプマンみたい」
「なにそれ?」
「そういう思考実験があるの」
「へぇー」
「それでさっきの質問のことだけど、元になった人は死んでるの?」
「そうだね。死んでその何かがその人の代わりに生きてるって感じ」
「……知らなければ何も変わらないんじゃない?」
「どういうこと?」
鈴の言葉を理解することができず質問を返す。
「全く同じなら本人から伝えられるか実際に成り代わるのを見ない限り気づけないでしょ?だから、知らないままなら相手が本物でも成り代わっていたとしても何も変わらない」
「……同一人物かどうかを聞いてるんだけど……」
「それでいうとわたしは多分別人だと思う。でもその事実を知らなければきっと何も変わんないと思う。仮に凛が成り代わられていたとして、そのことを知らなかったらいつも通り話したり遊んだりする」
鈴の言ってることは凄く正しいと思った。仮に大切な人が成り代わられていたとして知らなければ気持ちが揺らぐこともないだろう。知らずにそのまま過ごして人生を全うすれば残酷な真実を知ることはないし本人は幸せなままだと思う。
「でも、それって良いのかな……本物が死んでることに気づけないってある意味不幸なんじゃない?」
「そうかもね。でも成り代わられてることを知ってたとしてもどうしようもなくない?」
私は美奈に殺された人が成り代わられていることを知っている。でも私には何かを変える力なんてないんだからどうしようもない。
良いか悪いかという考えは俯瞰視点で全てが見えてるからこそだし何が正しいかなんてわかる訳がない。
「そうだね」
鈴の考えに納得するほかなかった。
「あ、凛いた」
鈴の指をさす先に怯えながら亀のようにゆっくり進む凛の姿があった。
鈴はこっそりと近づいていく。
「わぁ」
「きゃあっ!って鈴と結じゃん」
「凛が遅いから追いついちゃった。さ、早く行こ」
そう言って鈴は凛の手を握って歩き出した。あんなこと言いつつ凛のことを大切に想っているのだなと思うとなんだか二人の姿が微笑ましく思えた。
「結、なんかニヤついてる」
「え?そうかな?」
そんなことないと適当に誤魔化しながら三人で出口を目指して進んでいった。




