表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1100/1107

1084 威圧

「ただいま!」

誰にともなくそう言って、ロクサレンの自室に降り立った。

もちろん、返事が返って来るとは思ってなくて。

「――おかえりなさいませっ!」

床に火がつきそうな様子で、滑り込んできたマリーさんに飛び上がる。

「び、びっくりするよ……! そんな毎回お迎えに来なくていいからね?!」

「うふふ、ユータ様もそろそろ慣れてもよい頃合いかと」

あ、オレの方が慣れる側なのか。

なるほど? と思いつつ、連れ立って歩くマリーさんを見上げた。


「ねえ、マリーさんも威圧ってできるよね?」

「それは、もちろん。嗜みですので」

何の? メイドでも淑女でもないよね? ああ、もしかしてAランクのかな。

「オレ、威圧ができなくて。どんな風か、やってみせてくれない?」

「構いませんが、相手がいないことには……」

「オレがいるよ?」

「それは無理ですね」

スパッと否定されてがっくりする。


「な、なんで?」

「有象無象ならともかく、庇護対象には向けられません。特にユータ様には」

どうして特にオレなの。庇護対象であることも不服だけれど、まあ……相手はAランクだし。

「ですが、威圧などユータ様には不要だと思いますが」

「そんなことないよ! やっぱり迫力というか、そういう戦わなくても分かる実力、みたいなのがあった方がカッ……無駄な諍いも減るでしょう?」

カッコいいから、ではさすがにダメかと誤魔化して真剣な顔をする。

「減りますでしょうか……? マリーはむしろ無駄な諍いの時に使う気もします」

「ええ……」

た、確かにそういうのを使うって、既に諍いは始まっているかもしれない。


「ああ、ちょうど……」

ふと足を止めたマリーさんが、階下へ視線をやった。

――途端。

熱砂が吹き抜けたような。

ごう、と重い質量ある何かが、周囲に渦巻いた気がする。

じりじり肌が焼け付くような、端から食われていくような、おぞましさ。

オレには、向けられていないのに。

跳び退った執事さんが、ギリッとこちらを見上げて、オレを視界に入れる。

今にも膨れ上がりそうだった冷たい気配が、すっと収まって行く。

同時に、重苦しい渦も消えていく。


「いかがですか? このように――」

何事もなかったかのように説明するマリーさんを前に、オレの方はまだ、やっと息をしたところ。

「……あなたは、老人の心臓を止める気ですか」

珍しく青筋を浮かべた執事さんが歩み寄って来る。

「ご、ごめんね?! オレが威圧を教えてって言ったから!」

「そうでしたか。けれどユータ様は私を威圧せよとは言ってないでしょう」

「そうだけども……」

マリーさんが怒られてしまう。急いでありがとうを言うと、マリーさんはいつものようににっこりして立ち去って行った。


ふう、と息を吐く執事さんに飛びついて抱きしめる。

「あんな風だとは思わなくて……怖いね」

しがみついた身体が、しっかり汗をかいていることに気が付いて余計に申し訳なくなる。

苦笑した執事さんが、そうっとオレを抱き上げ、深呼吸した。

「……あのクラスの威圧を受けることはそうありませんので、老体にはなかなか堪えます。私は、一般人ですので……すみません、少々このままで……」

そりゃあそうだよね。なんとなくだけど、マリーさんの威圧ってAランクの中でも相当な気がする。

珍しくオレを抱き上げたままの執事さんを、ぎゅうっと抱きしめて生命の魔力を流してみる。


強張っていた身体から、力が抜けるのが分かった。

「執事さんが一般人だったら、他の一般人が怒ると思うよ? 執事さんも、きっと威圧得意でしょう?」

「ふふ、ユータ様にそう言われてしまうと何とも。ええ、威圧は得意ですね。私はあれらよりも力がありませんので、ハッタリで場をしのぐ必要がありますし」

あれらって、マリーさんとかカロルス様? 確かに執事さんは魔法使いだもの。近接戦闘には向いてな……うーん? でも執事さん、魔法なしで結構無双していたような。ああ、カロルス様みたいな規格外を除いてということか。

「ちょうどよい機会がありますので、しばし気配を消していただけますか?」

「え? うん……」


それって……。

オレを抱えたまま、音もなく扉が開かれる。

案の定部屋の主がカクリと頭を落としたところで、溜め息を吐いた執事さんの気配が膨れ上がった。

真っ暗な、氷の海の底。方々から身体を貫く、細い氷の槍。

そんな感覚に、ふるりと震える。すごく、寒い……。

「ぉお?! いや起きてる! 起きてる!! 待て待て、今寝たばっかだからな?!」

凍り付きそうな気配の中、部屋の端まで跳んだカロルス様。言ってることが無茶苦茶だけど、よくこの中で動けるものだ。


「なんだよ、何も切羽詰まったもんなかっただろ! ちょっとくらい……ん? ユータ?」

「おはよう、カロルス様。もうお昼だよ?」

くすっと笑うと、ゆるゆると冷え冷えとした気配が霧散していく。カロルス様が、ほっと息を吐いた。

「ユータ様の手本に、ちょうどよいかと思いまして」

「は? 手本?」

しれっとそう言ってオレを下ろすと、では、とその場を去って行く。

くすくす笑って、ありがとうと手を振った。

ねえ、これって、執事さんの八つ当たりな気がする。いいな、カロルス様。執事さんがそんなことをできるのって、もしかして世界でカロルス様だけなのでは。


「なんだっつうんだ……せっかく人が気持ちよく……」

「寝たらダメだからね?!」

くわあ、と大あくびするカロルス様に駆け寄った。

「すごいね、執事さんの威圧。威圧ってどうやるのか教えてもらってたんだよ」

「あー、どうりで。まだ、あそこまでやられるほどじゃねえと思ったわ。とばっちりかよ」

不服そうにオレを持ち上げて、膝の上に乗せた。

「とばっちりかなあ……寝てたからじゃない?」

「アレは、もっとサボってた時のやつだ」

うん……結構日常なんだね。


「カロルス様の威圧は? どんな感じなの? 二人ともオレにはやってくれないから」

「あんなもん、受けていいことなんかねえだろ! そこらのヤツにやってみろ、意識飛ぶぞ」

「そんなになんだ……カロルス様も?」

こうして眠そうにだらけている姿からは、想像もつかないけれど。

「だろうよ。そういや、昔やってみてくれっつうから軽く威圧して、腰が立たなくなったヤツがいたな」

懐かしそうに笑うカロルス様に、じゃあオレも言わない方がいいのかも……と身震いする。

でも……やっぱり興味はあるわけで。


大腸検査でやられてました……まだ気持ち悪ぅ


いましたよね、覚えてる方いらっしゃるかしら?

12巻外伝、若かりし頃のカロルス様たちの話に出て来た、彼ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ついに20巻!お祝い感溢れる表紙が目印です! 今回はランキング結果あり、書下ろし特別編もあり! 奥付のQRコードで抽選プレゼントがありますのでお見逃しなく?!
今回も最高~のイラストですよ!!

ツギクルバナー
小説家になろうSNSシェアツール
小説家になろう 勝手にランキング
ランキングバナー https://books.tugikuru.jp/20190709-03342/
― 新着の感想 ―
 威圧のやり方もいろいろあるからなぁ、ヤンキーなんかのガンをつけるのも威圧だし武術とかで体中に力を入れて筋肉を張っての臨戦態勢の移行でも発生する。
1100更新おめでとうございます(^^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ