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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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1075 新たな発見

「もう無理~。休憩してえ! こんな一気に進むことねえから!」

情けない声を上げるクラスメイトたちに、すかさずまとめて回復魔法をかけてあげる。

でもなぜか、段々悲鳴があがるようになってきたのだけど。

「ちがうっ! 休憩っ、休ませてよぉ~!」

「ううう、なんだこの感じ……こ、心が……俺の心が限界を訴えている!!」

でも、身体は大丈夫なわけだし。しかも今は、急ぐ理由もあるしね。

適宜交代しながら戦闘しているものの、思ったよりみんなは消耗が激しいらしい。

「やっぱり、懲役が科されてしまったね~」

……オレは、そうやって後ろから追い立ててるラキがいるからだと思うけど。つまりは、ラキ刑の方じゃないかな。


それにしても、と周囲を見回した。

「どうして誰もいないんだろ……」

難しい顔で呟いた途端、口々に返事が返って来た。

「魔物が多いからだろ!!」

「こんなリスキーな状況じゃ、普通は引き上げるわよ!!」

みんなはそう言うけれど。でも、魔物は強くないし、多いと言っても知れている。

ただ、採取をメインにする冒険者なら、頷ける。だって、魔物が少しいるだけでも邪魔だもの。

つまり、採取系の依頼に向くここは、普段は魔物が少ない場所だったんだろう。


「でもそれだと、彼らのパーティもいない可能性があるよね」

最奥まで行ったけど無人、というのは中々ガッカリ感がある。ラピスたちに見に行ってもらおうか……クラスメイトかどうかなんてわかるはずもないけれど、人間が存在するかどうかくらいは分かるはず。

――任せるの! 生きてる人間がいるかどうかは分かるの!

そうだね……そういう不吉なことはあんまり言わないでほしいけど。

急に不安になってきて、少し歩みを早めた。ううん、ここらの魔物レベルなら大丈夫なはず……。


「……蘇芳、いるよね?」

『スオー、いる』

ほわっと、うなじがあたたかいふわふわに包まれた。

オレの後頭部に張り付いた蘇芳が、ぽふぽふオレの頭を叩く。

「オレの不運と頑張って戦ってね」

『……難敵』

ふよっと飛び上がった蘇芳が、目の前で難しい顔をした。そ、そんなにかな……。

『いつもなんとか、悪運ですんでいるものね』

うんうん頷くモモが、肩で弾んでいる。

いや本当、助かってる。どこまでが幸運の作用なのかは、サッパリ分からないけれど。


大丈夫、と気を取り直して前を向いた時、しばらく大人しかったタクトが歩みを緩めて寄って来た。

もっと派手に暴れたいとか、そんなところかなと見上げて、その顔に首を傾げる。

「どうしたの?」

こんな場所で、タクトが眉尻を下げて首を捻っている。戦闘を前に、こんな顔は覚えがない。

少し考える仕草をした彼が、逡巡しながら口を開いた。

「なあユータ、なんか分かんねえんだけどさ。俺、変な感じする」

「変って? 具合が悪い?」

「いや、全然」

タクトの具合が悪いなんて、恐ろしいことが起こる前触れかも、なんて緊張したけど、あっさり首を振られた。


「どういう感じなの~?」

ラキまで寄ってきたけれど、クラスメイトたちは大丈夫だろうか。

「うーん。なんか、近くに魔物がいる感じ? そわそわする」

「魔物、いるからな?! いないみたいに言ってんなよ!!」

途端に戦闘中のクラスメイトから茶々が入ったけれど、そういうことじゃないんだよね。

タクトの野生の勘は侮れない。だけど、たとえば見えない魔物がいる、なんてことになればきっとオレも気付く。それに、何かが近くにいたとして、攻撃を受けないのも変だ。

「本当に何かが近くにいるなら、脅威なんだけど~」

「んーー。それだともっとぞくぞくするような……」

「……どういう感覚なの、それ~」

ラキが呆れ顔をした時、前線から小さな声が上がった。


「何かいたっ! 何あれ?!」

「蜘蛛か? 今までいなかったヤツだよな!」

え、と顔を上げたオレたちも、急いで前線へ駆け戻る。

ちょうど、離れた場所で炎が直撃していた。なるほど、何か蜘蛛っぽいのが燃え上がって崩れ落ちたのが見えた。

「何がいたの?」

「なんか、蜘蛛っぽい割と動きが速いヤツだったぞ」

それを見事捉えた魔法の腕は、中々のものだ。そして、魔法の一撃でやられる魔物なら、まあ何であっても脅威ではないかな。


「だけど、普通洞窟ってそこにいる魔物の種類は変わらないものなんだけどね~」

「けど蜘蛛だろ? どこにでもいるんじゃね?」

初心者向け洞窟なので、あまり速い魔物はいなかったはず。蜘蛛系は割と手強いことも多いので、本来ここにはいなかったらしい。

「倒せるなら問題ないと思うけど、次出たら呼んで!」

「いやお前らが前行けよ! そろそろ交代してくれよ?!」

それも一理ある。どうしようかな、と腕を組んで――

「うわっ?! なんだコイツ!!」

「え、キモ!」


ドン、ドン、と魔法の弾ける音がして、慌てて前へ出た。

「何がいたの?!」

「さっきと同じヤツ! なんかキモくて速攻でやっちゃった」

うわあ、さすがのドラゴン世代。何というか、視線もぬるくなろうというもの。

「弱いやつかあ……けど、気になるから前行くぜ!」

わあっと歓声が上がって、みんなが一斉にタクトの後ろへ下がった。いやいや、タクトは一人だよ?! 全員分のカバーができるかなんて……愚問ではある。

とろとろ進んでいた歩みが、一気に早くなった。


オレも気になるし、しょうがないな、と前へ駆け出した。

その時。

スススッと視界をよぎった影。

そう大きくもない。イエネコくらいのサイズ感だろうか。

多脚をわさわさと動かして這う、中々のスピードだ。

本当だ、蜘蛛――

「ええええ?! 何これ、気持ち悪ぅううい!!」

ざっと総毛だつ感覚に思わず叫び声を上げて、ついシールドを張った。

蜘蛛じゃない……!


「い、嫌だぁあ! オレ、これ嫌!」

「ユータ、こういうの嫌いだよね~」

のんびりそう言ったラキが、容赦なく数発撃って破片が散った。

「えー、これ、どこ切るんだよ」

困惑顔のタクトの前に、もう一体。

「切るより、踏みつぶせばいいんじゃない~?」

「あ、そうか」

どん、と躊躇なく下ろされた足の下、ぐしゃりと潰されたそれには、ちっとも凄惨さがにじまない。


『……草ね』

『主、草だぜ!』

身を乗り出していた両肩のもふもふが、そう言ってつまらなさそうにする。

「く、草だけど! うわあぁ!」

また来た! 草、というか花? 何の変哲もなさそうな一株の花が、その葉っぱをわさわさ動かして移動してくる。速い、速いんだよ! やめて?! いっそそれなら、触手の方が思い切りがいい!

草がわさわさ移動してくると、こんなに気持ち悪い。初めて知った。

「何なのこれ?! こんなのが生息してたの?!」

タクトのそわそわは絶対コレでしょ! オレだって今、ぞわぞわしてるもの!!


「これ、ここらにいないはずのヤツでしょ? なんでいるんだろ……『這い寄る花』よね」

「這い寄るってレベルじゃなくない?!」

そういうのってもっとつつましく、ゆっくり近づくものであって! 井戸から這い出てくる髪の長い……ああいう感じでしょ?! あれはあれですごく嫌だけど!!

見たくないオレは、何かが動いた瞬間に氷結作戦を決行する気満々で、タクトとラキの後ろへ回った。

ふいに、ぽんっと間近で音がして飛び上がる。

――任務最高してきたの!

遂行かな、と考えつつ、そう言えばお願いしていたことを思い出した。

群青の瞳をきらめかせながら、高らかに報告してくれる言葉に耳を傾ける。

――生きてる人間はいたの! 盛り上がってるの。会場はメッキに包まれてるの!

純白のふわふわを見つめて、オレはにっこり笑った。

……全然分からない。


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私のAmazonアカウントから作品探せると思います!!

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ついに20巻!お祝い感溢れる表紙が目印です! 今回はランキング結果あり、書下ろし特別編もあり! 奥付のQRコードで抽選プレゼントがありますのでお見逃しなく?!
今回も最高~のイラストですよ!!

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― 新着の感想 ―
 大型の蜘蛛の肉は旨いぞって言っておく。
会場がメッキで覆われてるって空気穴が無くて酸欠になるのでは?(スットボケ
ラピスさん、人間がメッキに包まれたらお迎えが来ちゃうよ(^_^;)
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