少し昔ばなしをしようかな【がっしょうこんくうる】1818
皆様ご機嫌麗しゅう。
今日は、筆者の灰色の青春時代の話をするよ。
灰色だから、青春じゃないね。灰春だな。……まあいいかそれは。
あれは、筆者が中学生の時だった。
三年生の秋頃、だっただろうか?
あの学校には、合唱コンクールというものが、あった。
妙に女子が張り切る、アレだ。
筆者は、嫌いだった。
集団で歌う? 何故、そんな無意味なことをしなくてはならないのか。やりたい奴だけでやればいいのだ。
そう、思っていた。
だが、強要されるのだ。
「ねぇ、なんで練習してくれんの?」
「は? そんなんやりたい奴でやれよ。オレ、やりたくねぇもん。巻き込むなよ」
「クラス目標もあるじゃん!」
「で? それ、オレが決めたわけじゃなくね? 関係ないよな」
「全員が一丸となってやらないとダメなの!」
「おん。だったら、オレいない方がいいだろ。そしたら、全員が一丸となって出来るよな?」
「アンタいなかったら全員じゃないじゃん!」
「あのさー。不登校の奴とか、欠席する奴もいるだろ? そういうクラスは全員じゃねーじゃん。目標達成してなくね? だったらオレもやらんくていいだろ」
「でも、今いるじゃん!」
「ハッ。だから帰るっつってんだろが。じゃーな」
そんな問答のあと、女子生徒が無言になった隙に、筆者は鞄をロッカーから取り——廊下に出て、階下へと向かったんだ。
涙目になってた女子?
ハッ。知らねぇよ。
強要、押し付け、断固拒否。納得いかねーことはやりたくねぇ。と。筆者は、とある病気を患っていたのだった。
つまり、病欠だ。仕方がないのである。
肩から提げているボロボロの学校指定の鞄には、大量の安全ピンを突き刺し。
中身はというと……ハサミ、カッターナイフ、ドライバー、モンキーレンチ。
教科書? 全部学校に置いとけばいいだろ。
……そう。厨二病だ。中々に重篤だったと思われる。
ペッタペッタと歩き、階下に向かう階段まで、半分程度の位置にきた頃。
「まてぇ! どこいくんだ!」
背後から、数人の怒鳴り声が聞こえた。
振り向くと、教師たちだった。
筆者は、走った。
——スリッパで。
……数分後。
「まだ合唱の時間だろ! 勝手に帰るな!」
「戻りなさい!」
「うるせぇ! 離せやクソが!」
あえなく御用となった筆者は、教師二人にドナドナされ、教室へと戻されてしまった。
そして。始まっていた、合唱の練習。
筆者は、ベランダ側へと、歩いた。
教室内を見渡す。
オルガンを弾く女子、指揮する女子、ロッカー側には、生徒たちが立ち並ぶ。標本かよ。
前後ふたつの扉の前には、それぞれ教師が門番のように立ち塞がっていた。
——あーうぜぇ。こんなクソくだらねぇことに付き合ってられっかよ。
筆者は、非常に苛々としていた。
そっと、ベランダに出た。
少し東へ歩くと、昇降口の軒がある位置の、二階の教室だった。
タタッとベランダを走り、ヒョイと柵を乗り越え、昇降口の軒へ飛び降りた。
「あ! 逃げた!」
教室が、ざわついていたように聞こえた、気がした。
——知るか。
昇降口の軒から、地面へと飛び降りた。
もちろん、膝のクッションは総動員だ。
素早く立ち上がると、昇降口の下駄箱へと急ぎ、靴を引っ掴んで履き替え、走った。
走った。
「まてー!」
走った。
「まてってー!」
数が、多いな……? と、振り向いた。
男女入り乱れ、生徒も教師も、ダカダカと足音を上げながら、必死の形相で追い縋ってきていた。
——おいおい、マジかよ……。なんでこんな必死なんだ……。捕獲ゲーム楽しんでんのか……?
筆者は、酸素の足りなくなってきた脳で、そんなことを考えていた。
が。
哀しきことに。持久力は、まるでない。
当然だ。喫煙者だもん。
見るも無残に、息も絶え絶え。
トボトボ歩いていたところを、またしても御用になったのだった。胴上げでもされるのかって感じの人数で、な。
——やりてーんなら、勝手に練習してりゃいいのに。何をわざわざ追いかけて来るのかねー。犬なんですかねー。
と、内心で少々悪態を吐きながらも、精根尽き果ててしまった筆者であった。
そして、思ったんだ。
次からは、気付かれないうちに、帰ろう……と。
という、くだらない昔ばなしなんだけどさ。
配信で喋ってたら、「書いたら?」って言われたから、書いた。
そんな、嘘のような本当の話。
みんなは、合唱コンクールみたいなのあった?
好きだった?
嫌いだった?
参加……した?
ちなみに筆者は。
市民ホールで行われた本番の日。
ステージに上がって歌っているクラスメイトたちの雄姿を、客席から見ていましたよ(笑)
合掌。




