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真実の愛? どうぞご自由に。その後は私の知るところではありません。  作者: 茉莉花


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第6話『公爵である条件』

先代公爵の裁きはいかに。

 カレンが公爵邸に戻ると、応接室に案内された。そこには一組の夫婦が優雅に座っていた。


「君が例のご令嬢か。私はカルヴィン・ホワイトフィールドだ。こっちが妻のジョアンナだ」


 ウィリアムの両親、つまり先代公爵夫妻だった。


「あっ、お初にお目にかかります……、カレン……、マリオットと申します」


 カレンは力なくゆっくりと頭を下げた。


「そんなところに立ってないで、かけなさい」


 カレンは言われるがままソファに座ったものの、顔をふせたままあげられずにいた。


「君の話は聞いてるよ」


(あっ、これって……、あまりいい噂じゃないやつだ……)


 貴婦人たちが話していた公爵の話は笑われていたことを思い出す。

 そこに、ティーセットが運ばれてきた。カチャカチャと侍女らが用意する中、ジョアンナが口を開いた。


「お茶会に参加してきたそうね」

「……はい」

「お務めはできまして?」

「……」


 とても次期公爵夫人として務められたと答えられるものではなかったカレンは口ごもる。

 目の前のジョアンナは流れるような所作でお茶を口にしていた。その美しさに本物の公爵夫人の姿を突き付けられた気がした。



 どれくらいの時間が経っただろうか。お茶が減っていないのを見るにそこまで経っていないのだろうが、カレンの体感は長く感じた。


「大旦那様、ウィリアム様がお戻りになりました」


 フランクの声掛けにカレンは顔を上げる。

 フランクの後ろにはウィリアムの姿があった。


「父上! 母上もおそろいで! いつお戻りになったのですか?」


 ウィリアムは久しぶりの両親の様子に弾むような口調で笑みを浮かべている。

 先代公爵夫妻は横目でちらりとウィリアムを見上げていた。


「おや? カレンも戻っていたのか」


 ウィリアムの視界に入ったカレンに気付くと、ウィリアムは華やいだ笑顔を見せた。


「父上、ちょうどよかった。彼女を紹介しま──」

「その必要はない」


 ウィリアムが言い終える前にカルヴィンは答えると、鋭い視線を送った。




◇◇◇


「スカーレット、この度は大変申し訳なかった」

「いえ、カルヴィン様の所為ではございません」

「あいつは離縁を望んでいると?」

「ええ。正妻として迎えたい女性がいるからと」


 カルヴィンは大きくため息をついた。


「あの愚か者が……」

「引き留めるよう説得するべきなのだろうが、その様子では聞くまい。手続きを済ませよう」

「ええ、こちらで間違いなく」


 処理は滞りなく行われた。


「持参金は全て回収します。それから資産運用の利益も」

「……ああ、それで構わん」

「それで、お一つ確認なのですが……」

「ああ、今回の件は公爵家の継承条件に反する。早急に対応するよ」


 スカーレットの訪問と共に事の成り行きを知ったカルヴィンは、ジョアンナと共に公爵邸に戻る準備を整えて静養地を後にしていた。



◇◇◇


「その必要はない。なぜなら、お前たちにはこの屋敷を出て行ってもらうからな」

「……な、何をおっしゃっているのですか? 当主である私を出すとは」

「お前はもうすでに当主ではないだろう? スカーレットと離縁したのだから」



「……え?」



 何のことかわからずウィリアムは固まった。


「公爵の継承条件を忘れたわけではあるまい」

「け、継承条件ですか?」

「ああ。スカーレット・ランチェスター侯爵令嬢と結婚すること。これがお前が公爵を継ぐ条件であっただろう?」


 これは両家の契約であり、ウィリアムの義務であり、ホワイトフィールド公爵家維持のための絶対条件だった。



「……あっ!」



 すっかり忘れていたのだろう。ウィリアムは失念していたとばかりに口に手を当てた。

 静観していたカレンは、前公爵夫人が侯爵令嬢であるということを知り、再び血の気が引くのを感じた。


「もう手続きは終えておる。そのため、お前はもう当主ではない。それから、その令嬢と一緒になるようだから、公爵家から除籍させてもらう。出ていくといい」

「あの、それですと公爵は誰が継ぐのですか?」


 除籍と告げられても動揺することなくウィリアムは公爵家を気にかけた。


「キャサリンのところにいるエリオットに継がせればいい。まだ幼いからそれまでは私が戻る」


侯爵家に嫁いだ長女キャサリンには子供が三人いるが、その一人に継がせるという。


「そうですか。それならば仕方ないですね。カレン、荷物をまとめるとしよう」


「……え? あ、はい」


(責務というものはないの?)


 あっさりと公爵家を後にしようとするウィリアムに疑問を抱く。


 しかし、ここにいる資格がない以上、カレンには残るという選択肢はなかった。

 そして、スカーレットのあの言葉が脳内にこだました。



『あなたが務めることはございませんから』



 ウィリアムに公爵の資格がない以上、公爵夫人になることはない。スカーレットと離縁した時点でもうその資格を失っていたのだ。


 何も知らない。無知がどれほど恥ずかしいことか、カレンは一人居た堪れなくなった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


カレンの疑問、その感覚は正しいのか。

次回、スカーレットが再び登場。

いよいよ明日、最終話まで更新予定です。ぜひ最後までお付き合いいただければ嬉しいです。

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