189 フィックスの魔法と禁断の魔法
フィックスの魔法と禁断の魔法
むかし、「スプーン曲げ」なる超能力とかいうインチキなモノがテレビ等で拡散しました。
何故インチキと言ってしまうのか?
魔女からしてみれば、超能力というのは魔法でも何でもなく、インチキとしか見えないのです。
本当に超能力なら、こういう事をして欲しかったのです。
折れたスプーンを、「元通り」にして欲しかったのです。
壊すだけなら、力が強い人なら、誰だって出来るのです。
壊れたものを直してこそ、「超能力」ではないでしょうか?
メーカーで修理を断られたり、古過ぎて部品が無いからと言われた家電品を、直してくれる人がいます。
そういう人こそ、「超能力者」なのです。
子供の頃から大人になっても、いつも一緒にいてくれたヌイグルミを、綺麗に、殆ど元通りにしてくれる人もいます。
そういう人も、「超能力者」なのです。
でも、こういう人達は「超能力者」であっても、魔法使いではありません。
魔女と魔法使いがいます。
一応、同じ魔法を使う人達ではありますが、基本的に、魔女は呪文を唱えなくても魔法が使え、呪文を唱えなければならないのが魔法使いです。
でも、魔法ですから、よく使う魔法の呪文を一括りにして、呪文を唱えなくても良い魔法が編み出されました。
魔女であっても、全ての魔法を使える訳ではありません。
ある限界数を越えた魔法は、魔女と言えども呪文を唱える必要があるのです。
その為には、魔女もあまり使わない魔法の呪文を一括りにして、呪文を唱えなくても良い魔法を取り入れたりしているのです。
普通の人間も、使わない能力は衰えていきます。
常日頃からの修練が必要なのです。
そんな訳で、魔女と魔法使いの分岐点は分からなくなってきています。
魔女や魔法使いは、超能力ではなく魔法を使います。
テレビで流行った偽物の超能力の様に、「物を壊すだけ」などという事はありません。
建設的なのです。
魔法には特殊なものがあります。
言ってしまえば、全てが特殊ではありますが ・・・
「フィックスの魔法」と「禁断の魔法」というのがあります。
「フィックス」とは「Fix」で「固定」という意味ですから。「固定の魔法」でも良いのですが、気分で、こういう風にいう事になっています。
「フィックスの魔法」は、魔女が自分勝手に魔法を掛けたり解いたり出来ない魔法です。
魔女を守る事を目的にした魔法で、母親か親族と、他にもう一人の魔女が一緒にならないと、解けない魔法なのです。
因みに、魔女を守る事を目的にしているので、母親であれば、子供にその魔法を掛ける事は容易です。
この物語によく出てくる「人から見えづらくなる魔法」と「美人と思われない様にする魔法」が、この「フィックスの魔法」です。
両方の魔法は、魔女が産まれた時、母親の魔女が子供を抱いた時に自動的に掛る魔法です。
ただ、普通は、魔法が効果を表すのは、魔女が中学校に通う年齢になってからです。
もう一つ、「危機管理システム」も「フィックスの魔法」です。
以前からこの魔法はありましたが、確立したのは近年で、完成させたのはナオミです。
魔女を、良からぬ男から守る為の魔法です。
昔の魔法は、男の「欲望粘液」を無効にするものだったのです。
男に好き勝手にされるのは我慢が出来なかった魔女達が、何とかしようと色々考えたのです。
あの「行為」の前に対処してしまおうとする魔法です。
結果、男の良からぬ考えを察知し、身体に近付こうとした時点で、弾き飛ばしてしまうものになりました。
普通に男を弾き飛ばすのには、沢山の魔力が必要になりますが、それを解消したのがナオミです。
詳しい方法は分かりません。
何たって、魔法なのですから ・・・
最初は中学生くらいの年齢からの設定でしたが、近年は保育園クラスの女の子にも、良からぬことをする男が出てきたので、産まれた時から効果が発揮出来る様な魔法に変わりました。
昔からの魔法、新しい魔法、もう使われなくなった魔法 ・・・ と色々ありますが、データで管理して、使える魔法の見直しをしているのもナオミです。
「禁断の魔法」もあります。
普段は使わない、いや、使えない魔法です。
その一つが、魔女の夫や子供に危害を与える相手を「消し去る魔法」です。
この魔法を使う時、何故か、魔女は「黒い魔女」になって現れます。
ただ、昔の様に黒いマントに黒い尖がり帽子ではありません。
現代の魔女は、黒いミニスカスーツに黒いピンヒールで現れるのです。
まあ、一種の「流行」です。
夫や子供に危害を与える相手の前に現れた魔女は、腕を斜め上に動かします。
それだけです。
そうすると、夫や子供に危害を与えようとした相手の首が、胴体から地面に転げ落ちます。
転げ落ちた首も、首の無くなった胴体も、ドロドロに溶けて、どこかに流れて行って、無くなります。
「禁断の魔法」は一つの魔法ではなく、複数の魔法で構成されています。
夫や子供に危害を与える相手を「消し去る魔法」の場合は、こんな感じです。
夫や子供に危害を与える相手を魔女が検知します。
「検知の魔法」です。
瞬時にその場所に移動します。
瞬間移動している間に、黒い魔女に着替えます。
黒い魔女で現れるのです。
「瞬間移動の魔法」と「お着替えの魔法」です。
凄惨な場面を見せたくないので、夫や子供には「忘却の魔法」を掛けます。
そして、危害を与えようとしている相手の首を切り落とします。
魔女に躊躇はありません。
一瞬で、相手の首を撥ねます。
直接手を下さない「見えない刃の魔法」です。
切り落としたと同時に、首と胴体をドロドロに溶かして、排水溝等へ流してしまいます。
「完全消去の魔法」です。
周りに関係ない人がいれば、その人達にも「忘却の魔法」を掛けます。
近頃は防犯カメラなどもありますので、それらの機能を停止させて、一切映らない様にもします。
「データ消去の魔法」です。
最後に、夫や子供にキスをして、黒い魔女は消えていなくなります。
「キスをする」行為が、この魔法の終了の合図なのです。
黒い魔女がいなくなると、何事も無かった様に、みんなは動き出します。
勿論、溶けて流れて行った連中はどこにもいません。
そんな連中は、居なくなっても何の問題もありませんから ・・・
他にも色んな「禁断の魔法」があります。
色々ありますが、殆ど使われない魔法です。
でも、多分、使っている魔女がいると思われる「禁断の魔法」があります。
魔女は、18歳になると男を探します。
「色に狂う」のではありません。
一生の伴侶を探すのです。
普段は「人から見えづらくなる魔法」で、美人でスタイルの良いのを隠していますが、18歳から暫くの間は、その魔法が弱くなるのです。
「人から見えづらくなる魔法」は、普段、道を歩いている時に目立たなくするための魔法です。
「目立たなくなる」というか、「気にならなくなる」が正解かもしれません。
美人でスタイルの良い女性が歩いていれば目立つのですが、目立たない、気にならないのです。
学校や仕事の時には、「美人と思われない様にする魔法」を使います。
この魔法の場合も「思われない」というか、「気にならない」が正解かもしれません。
でも、スタイルの良いのは隠しようがありません。
18歳から暫くの間は「美人と思われない様にする魔法」の効果も弱まります。
何処に将来の伴侶に適した良い男がいるのか、分からないからです。
魔女は、男と愛し合ってしまえば、その男と一緒になるしかありません。
一人の男と一生を添い遂げるのです。
ですから、徹底的に調べて、調べつくして、男を探すのです。
でも、「これだ!」と思う事もある様です。
よく、「ビビっときた」という、直感みたいなものです。
魔女だって女性なのです。
魔法が使える女性なのです。
ただ、魔女と言えども、失敗はあります。
安易に「これだ!」と思ってしまう事もある様です。
優秀なのですが、完璧ではないのです。
そんな時に使うのが、もう一つの「禁断の魔法」なのです。
この「禁断の魔法」は、魔女が18歳になった時に母親から、直伝で教わります。
18歳を過ぎた魔女はみんな知ってはいるのですが、魔女の仲間内では公然の秘密の魔法なのです。
それは、「無かった事にする魔法」なのです。
何が「無かった事」なのか?
男とヤッテしまってから、「この男は違う」となった場合に使う魔法です。
”その時” は双方が愛し合っていたのでしょう。
でも、そうでない場合もあるのです。
「冷めてしまった ・・・ 」のかもしれませんが、女性の心理は複雑なのです。
愛していたのは魔女の方だけで、その男が魔女を巧妙に騙していた場合もあるのです。
ただ、よくある「既婚者なのに独身」というパターンはありません。
そのくらいの事を調べるのは、魔女に取って難しい事ではありません。
しっかりと、徹底的に調べて、調べつくしてからの事なのです。
でも、騙されていたり、やはり「間違え」だったと気付く場合もあるのです。
でもでも、ヤッテしまっているのです。
まあ、魔女にとっての「この男は違う」という事ですから、複雑な内容なのでしょう。
でも、その男とヤッテしまったのです。
普通なら、諦めてその男と一緒になるしかありません。
でもでも、どうしても「嫌」なのです。
許せないのです。
相手の男ではなく、自分がです。
そんな時に使うのが、禁断の魔法、「無かった事にする魔法」なのです。
無かった事にするのです。
元に戻るのです ・・・ ?
戻りたいのです。
でも、ヤッテしまったしまった事は、ヤッテしまったのです。
でもでも、魔女は簡単には子供を造れません。
昔、いや、大昔、美人でスタイルが良い魔女は、権力者に狙われたのです。
魔女だけなら戦って勝てたのかもしれませんが、親などを人質を取られたりした場合は、どうしようもありません。
そんな時に、泣く泣く、権力者に遊ばれてしまった事があったのです。
そんなことが無い様に、いまは「危機管理システム」で魔女の身体を守っているのですが、大昔には無かったのです。
そんな時に作られたのが、「無かった事にする魔法」なのです。
「禁断の魔法」ですから、複数の魔法の集合体です。
無かった事にするのは、まず、魔女です。
魔女の記憶から、ヤッテしまった事を消し去ります。
そして何故か自動的に、魔女とヤッタ相手の記憶からも、ヤッテしまった事を消し去ります。
ついでに、魔女の事を忘れさせてしまいます。
大昔に、急いで無理矢理作った魔法なので、基本は「忘却の魔法」の応用編です。
ただ、残念なことに、アソコは元には戻りません。
精神的には「処女」のままですし、ヤッタという記憶はありません。
でも、身体は「処女」ではありません。
安易ではありますが、「気持ちの問題」を解決すれば、それで良いという考え方です。
まあ、仕方がないと言えば、仕方がないのです。
大昔の様な無理矢理ではなく、現代の魔女が自分では「この男」と思ったのですから ・・・
それに、自分自身ではヤッタ事を覚えていないのです。
ですから、次の男にバレる事はありません。
次の男が、自分としては「初めて」なのですから ・・・
そして、魔法を掛けた途端に、自分の記憶が無くなるのですから、この魔法を使ったと思っている魔女はいないのです。
都合が良いと言えば、「都合が良い魔法」なのです。
もしかすると、結婚してからこの魔法を使った魔女がいるかもしれませんが、本人の記憶に残っていないので、定かではありません。
きららも18歳になりましたから、おかあさんがこの「禁断の魔法」を教えていると思います。
真面目なきららですから、「信じられない魔法」だと思うでしょう。
さて、ナオミです。
ナオミはこの「禁断の魔法」を使った事があるのでしょうか?
あるのかもしれませんし、無いのかもしれません。
何故なら、もし使ったとしても、ナオミ自身が覚えていないのですから ・・・
「禁断の魔法」かどうかは定かではありませんが、こんな魔法もあります。
いつもより何オクターブか高い声を出せる魔法です。
普通の魔女では、呪文を知っていてもそれ程の効果はありません。
特殊な魔法なのです。
魔女は日本の女性の様に、キンキン声を好みません。
電話に出た時に、声のトーンを1オクターブくらい高くするのが「それ」です。
魔女は欧米系なのか、声が低めなのです。
「落ち着いた声」を好むのです。
でも、この魔法を使いこなせる?、魔女がいます。
原宿のカフェのオーナーのおば様です。
当たり前ですが、今は「おば様」でも若い時があったのです。
「清純可憐な女の子」だったとは、本人の弁です。
写真を見るとその通りで、魔女ですから美人でスタイルも良かったのです。
驚きです ・・・ ?
音大を卒業したおば様なのです。
それも声楽科で、ソプラノだったのです。
オペラの魔笛の「夜の女王のアリア」を歌いこなせる逸材だったとの事です。
将来を期待され、オペラ界からも勧誘があったとの事ですが、卒業すると、あっさりと今の旦那様と結婚してしまいました。
ここまでの話では、どこが「禁断の魔法」か分かりませんが、ここからです ・・・
オーナーは、当時は「清純可憐な女の子」だったので、教授達にも人気だったそうです。
卒業が近付いた頃、その頃には結婚すると噂が広まっていたそうです。
その教授の中の一人が、「清純可憐な女の子」だったオーナーに横恋慕して、謝恩会の後に襲い掛かろうとしたそうです。
当時ですから防犯カメラも無く、人気の無い路地に連れ込まれたのだそうです。
オーナーは魔女ですから、魔法を使えば男など一撃なのですが、声を出したそうです。
オーナーの最高音なのですが、魔法を使って何オクターブも高い音に変えたのです。
人間の耳には聞こえない音域だそうですが、その音がその出来損ない教授の胸を直撃したのです。
あっさりと、心臓発作であの世行きだったそうです。
「清純可憐な女の子」だったオーナーは、後処理をしてその場からいなくなったそうです。
そんな、自慢話?を、ゆたかが議事録を纏めている横で、延々と話して聞かせられたのです。
原宿の設計事務所の帰りに、いつもの様にカフェでパソコンを開いて仕事をしていたゆたかです。
いつもは、美智子がコーヒーを持ってきてくれるのですが、保育園に預けている子供が愚図ったのか、オーナーがコーヒーを持ってきてくれました。
よせばいいのに、ゆたかがレクの時のオーナーの出し物について話をしてしまったのです。
オーナーは、レクの時、ソプラノの歌声を聞かせるのが常なのです。
以前は、オペラの魔笛の「夜の女王のアリア」くらいでした。
今回は事前リクエストがあって、映画フィフスエレメントの「デーヴァ・ダンス」も歌ったのです。
折角なので、映画のデーヴァの仮装をするするつもりだったようですが、旦那様に止められたという事でした。
そして、自宅で練習する時はバリアーを張ってするそうですが、いつの間にか旦那様に唇を奪われてしまうとの事でした。
その時は、可愛く赤くなってしまうオーナーなのです。
でも、ゆたかだけでなく、周りにいた魔女のお姉さん達も「聞きたくないお話」でした。
お話し好きのオーナーなのです。
そんなお話を延々と聞かされて、その日はマトモな議事録にならなかったゆたかだったのです。




