↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真珠艦隊――人類が敗走する宇宙に、オーケストラが響いた  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
99/228

ひとつ減った名前

共同防衛評議会の法務官、尾関貴和は、冷域九の退避者名簿を照合していた。第一便に乗った人の欄から、一人の名前が消えていた。受入れ記録の入力時に、似た名前の二人を一つにまとめてしまったという。


「見つかったんですか」


申請に来た男性が聞いた。消えた名前は彼の妹だった。


貴和は決して『見つかった』とは言わなかった。船に乗った記録はある。霧生四へ降りた記録は別の名義になっている。本人を確認する必要があった。


保安主任の久住律へ照会すると、該当する女性が医療区画で治療を受けている可能性が出てきた。だが病室の記録には姓しかなく、本人の意識もまだ戻っていなかった。


貴和は男性へ現状を説明し、直接面会する手続きを整えた。


「間違いだったら、どうしましょう」


男性が問う。


「間違いなら、次に探す場所を調べます」


二人は通信越しに病院の返事を待った。しばらくして、女性が目を覚ましたという知らせが来た。名前と家族の呼び方が一致する。貴和はやっと『ご本人です』と伝えた。


兄は妹が別の名義で登録された事情を聞いたが、誰も責めなかった。


医療区画からは、女性が意識を取り戻したあと、故郷の住所を何度も言っていたと報告があった。貴和は兄へそれを伝えた。故郷へ戻れる道があるかは分からない。兄は『今は会いたい』とだけ答えた。貴和は面会用の通信時間を確保するよう病院へ頼んだ。事務室の端末から家族が顔を見合わせたとき、彼はそっと席を外した。自分がそこにいる必要はなかった。


書類上の一人が戻っただけではない。どこかの家族の夜が少し変わった。貴和は重複した記録をそのまま訂正履歴へ残した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。