消えなかった誘導灯
霧生四で冷域九への無人補給器が準備された。川瀬弥生は水と酸素の容器を確かめ、浅海朔は誘導航路を計算した。護衛艦『芦月』からは、遠方の赤い反応について更新情報が届く。
「もう少し待てば、安全な道が見つかるでしょうか」
若い職員が聞いた。朔は黙って星図を見た。安全な道が見つかる保証はない。待てば冷域九の空気が減る。
二人は積荷を絞り、まず無人機一隻だけを出した。通信が途切れても自動帰還する設定にし、危険な区域へ入った場合は中継点で停止するよう組んだ。
出発後、最初の航路標識までは順調だった。次の標識から返信が遅れる。職員は機体を戻そうとしたが、朔は規定の待機時間を確かめてから判断した。
やがて弱い位置情報が届いた。無人機は進路から外れていない。ただし中継点の一つが正常に動いていなかった。
弥生は交換できる標識灯が港にないか調べ始めた。朔は新しい補正値を送った。
灯りの交換を頼まれた整備員は、出発前に家族へ短い連絡を入れた。弥生はそれを待ってから作業の許可を出した。
無人補給器が戻す測定値にはばらつきがあった。朔は安全と断言する代わりに、再測定が必要な地点を地図へ記した。弥生は作業員の疲労を考え、標識の交換を翌番へ引き継いだ。小さな灯の修理を焦って事故を起こせば、冷域九に届ける物資も届かなくなる。港の職員たちは積荷の容器をもう一度数え、次の発進に備えた。冷域九からの通信はまだ途絶えていなかった。
冷域九へ続く航路は、まだ人を乗せられる状態ではない。遠い宇宙の中で、小さな誘導灯が一つだけ消えずに残っていた。その位置が分かったことで、次に手を伸ばす場所ができた。




