最初に降りた子
冷域九からの第一便が霧生四へ到着したとき、保安主任の久住律は担架の数を先に数えた。七隻から降りた乗客のうち、治療を必要とする者が予定より多かった。病院区画の寝台が足りない。
「医療船へ回せますか」
看護師が訊く。律は航路の許可を確認し、灯標七の『冬星』へ連絡を取った。移送できる患者と、いま動かせない患者を医師に分けてもらう。
一番最初に降りたのは、小さな少年だった。手には紙で作った採掘機を握っている。少年は母親の所在を尋ねたが、名簿には『次便予定』としか書かれていなかった。
「ここで待てる?」
律が聞くと、少年は首を横に振った。彼は待合所の扉を離れず、やって来た人の顔を一つずつ見た。
律は同行してきた女性へ頼み、少年と一緒にいる人を探した。偶然にも、隣の艇から叔父が降りてきた。少年は紙の機械を握ったまま駆け寄った。
叔父は少年の小さな手を握り、最後まで列から離れなかった。
待合所の時計は遅れていた。律は直すよう手配した。戻ってくる時刻を聞かれる場所で、時計まで不正確であってはならなかった。
病院区画の医師は、重症者だけを優先するのではなく、短い処置で帰れる人も別の場所へ案内した。律は空いた通路に椅子を並べ、診察を待つ人の列を作った。子どもの叔父には、次便の情報を届ける方法を教えた。親族が一人見つかっても、残る家族の不安は消えない。律は叔父の名前を預かり、冷域九の指揮官へ伝える名簿に加えた。
待つ人を迎える場所には、たどり着いた人のための椅子も必要だ。律は床へ新しい線を引き、次便を待つ人の列を作った。係留口はまだ明るいままだった。




