まだ出せない二便目
冷域九の保守員、柴野誠は、二便目を待つ住民のために地下避難室の換気を調整していた。子どもたちは出発のたびに扉の方を見る。残る人々は表情を変えずに食料を分けていた。
「いつ来るんですか」
少女に訊かれ、柴野は出発した七隻の帰還予定を見せた。ただし同じ時刻に戻るとは書いていない。通信の届き方によって変わるためだ。
室内の二酸化炭素が上がり始めた。外へ通じる換気管を動かせば電力が要る。柴野は医療区画の予備電池を借り、換気装置の出力を交互に切り替えた。
避難室の隅では、年配の採掘員が昔の仕事歌を小さく歌っていた。子どもが真似し、何人かが笑った。柴野は歌を止めなかった。人が落ち着いて呼吸できるなら、換気の負担も少し減る。
だが計器の数字は容赦なく進む。彼は電力を節約する案をもう一度考え、不要になった採掘機の蓄電池を回すことにした。
別の採掘員は古い発電機を動かそうとしていた。柴野は試験時間を決め、空気を汚す故障が起きたら即停止する条件をつけた。
柴野は子どもに、地下室の空気がすぐになくなるわけではないと説明した。ただし節約するため、誰も使っていない通路の照明を落とす必要がある。子どもたちは暗くなる場所を見に行きたがったが、柴野は危険な扉を開けなかった。代わりに避難室の小さな図面を描き、使える区画を一緒に色分けした。自分がどこにいるか分かるだけで、少し落ち着く人がいた。
『あと一度、艇が戻ればいい』。そう思いかけて、柴野は首を振った。戻らなかった場合の準備も必要だ。地図の端に、徒歩で移れる別の密閉室を記した。




