途中で減った灯
護衛艦『芦月』の艦橋で、篠宮航は冷域九から出た七隻の識別灯を数えていた。護衛艦自身の冷却器はまだ完全には直っていない。そのため彼らは前線へ出ず、後方の通信と誘導を受け持っていた。
七つの灯のうち、一つが画面から消えた。
「敵の攻撃ですか」
当直士官が問う。篠宮は答えを保留した。通信遅延か、機器の不調かもしれない。ほかの六隻へ位置を尋ねると、最後尾の艇が減速しているらしいことが分かった。
しばらくして通信が戻る。艇の冷却装置が過熱し、一時的に送信機まで落ちていた。篠宮は速度を下げるよう助言した。遅れれば補給の計算が変わるが、機体を失うよりましだ。
艇から礼の通信が入った直後、遠方の赤い反応が一つ増えた。篠宮は艦内を緊張させる必要はないと判断し、監視だけ強めた。
「七隻とも戻れると思いますか」
白石が訊いた。
「戻れるようにする。その先はまだ分からない」
艦長は途中で居眠りしかけた当直士官を休憩へ回した。
艦内の記録係はその情報を霧生四へ送り、退避艇が同じ障害物を避けられるようにした。別の艦が使える記録なら十分に意味があった。
『芦月』の砲術長は、撃てないまま待機することに苛立っていた。篠宮は彼を観測卓へ呼び、救難艇の位置を確かめる仕事を任せた。砲を動かす手順に慣れた者ほど、時間差を読むのが上手い。砲術長はしばらく無言で画面を見つめ、帰港路にある小さな障害物を見つけた。撃たずに守れる船もあるのだと、彼は報告書へ淡々と記した。
篠宮は帰着先の霧生四へ、予備の冷却材を用意するよう頼んだ。彼の艦が撃てる砲より、いま届く一通の通信のほうが役に立つ時間があった。




