届かなかった青灯
霧生四へ向かう連絡艇から、青い識別灯が途切れたと報告が入った。監視員の秋元莉央は、機器の故障か赤色未同定群による障害かを調べた。どちらとも決められない。
「呼び続けましょうか」
通信士が聞く。莉央は呼出し間隔を広げた。返信を急がせて燃料を使わせるより、一定の時刻に短く送ったほうがいい。
周辺の民間船から目撃情報が届く。小さな艇が一度だけ回転したように見えたという。別の船は何も見なかったと答えた。莉央は証言の違いをそのまま残した。
やがて弱い信号が戻った。連絡艇は通信機の故障で送信できず、動力を落として修理していた。乗員に負傷はない。ただし予定の航路から外れている。
莉央は現在位置を確認し、霧生四までの最短距離ではなく、星図にある中継灯を順に辿る経路を渡した。間違いを減らすための道だった。
通話の最後に若い操縦士が謝った。莉央は『帰ってから報告書で聞く』と答えた。責めるより先に、機体を戻してもらいたい。
通信室で一緒に待っていた技師は、帰港した機体をすぐに点検したいと言った。莉央は整備棟へ連絡し、空きを作ってもらった。
連絡艇の位置が確定すると、莉央は近くの民間船へ信号の中継を依頼した。民間船の船長は乗客がいるため接近できないが、通信を届けるだけなら手伝えると返した。無理に危険へ向かわせず、届く範囲の仕事を分ける。莉央は中継した船名を航行記録に残し、後で港へ補給を頼めるようにした。受けた親切を、ただの偶然として忘れたくなかった。
赤い反応は遠い場所に残っていた。連絡艇の青い灯が監視画面へ戻ると、彼女は一つだけ確認の印を入れた。




