採掘場の天井
冷域九の居住区画で、保守員の柴野誠は、天井の灯りを一つずつ落としていた。採掘装置の動力を退避艇へ回すためだ。天井の照明を消すたびに、下の通路で人が顔を上げる。
「外はどうなっているんです」
若い作業員が尋ねた。柴野は監視室で見た画像を思い出した。赤い光。星の輪郭が細く伸びる映像。それ以上は分からない。
「通信が不安定だ。先に艇を動かす」
冷域九には二十六隻の作業艇があったが、長距離を飛べるものは七隻しかない。残る機体も牽引すれば使えるかもしれない。柴野は推進器を外し、電力を融通する準備を始めた。
避難の順番を決める会議では、危険区域で働く者を先に載せる案が出た。別の者は子どもと病人を先に出すべきだと言う。柴野は席を外し、居住区画にある非常用空気瓶の数を調べた。数え直すと、思ったより多く残っていた。
彼は会議に戻り、地下の避難室で一定時間待てる人がいると報告した。選ばれなかった人をただ置き去りにするのではなく、待つ方法が少し増えた。
作業員の一人が、停電した採掘機のそばに私物を置いてきたと話した。柴野は戻ることを許さず、持ち主の名だけ控えた。
別の保守員は、地下室の食料が想定より少ないと報告してきた。柴野は倉庫へ降り、期限の切れかけた保存食を確かめた。箱の封印は保たれている。彼は医療担当と相談し、食べられるものだけを分けるようにした。子どもの分を黙って減らさないことも決めた。蓄えの数字は隠すより示したほうが、人々は配る量の理由を理解してくれる。作業を終える頃、足元の灯だけが通路を照らしていた。
窓のない通路で、柴野は最後の照明を切った。足元の誘導灯だけが細く光っている。




