↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真珠艦隊――人類が敗走する宇宙に、オーケストラが響いた  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
85/228

三度鳴った退避灯

霧生四の監視所で、秋元莉央は退避警報を三度目まで鳴らさなかった。赤色未同定群を示す反応は、まだ遠い。だが冷域九という小さな採掘拠点から、同じ警戒信号が繰り返し届いていた。


「現地が攻撃を受けているのでは」


部下は言った。莉央は通信の時間差を照合する。三通とも内容が同じで、発信時刻が微妙に違う。機械の再送かもしれない。生存者が何度も送っているのかもしれない。


莉央は警報を一段だけ上げ、冷域九への航行を止めるよう各船へ告げた。採掘拠点からの退避船が来る可能性もあるため、霧生四の受入れ台を準備させる。


一時間後、短い音声が届いた。『自力出港を試みる』。誰の声なのか分からない。けれど少なくとも信号の一つは、人間の手で送られたものだった。


莉央は受信内容を繰り返し聞き、不要な雑音を除いて保存した。冷域九の方角には、赤い反応が薄い帯のように広がっている。船が抜けられるかどうかは判断できない。


当直表には、赤い反応が消えても監視を続けることを明記した。後任の職員が警戒解除と取り違えないためだった。


冷域九の識別符号は古い規格のままで、霧生四の自動受信機には警報として登録されていなかった。莉央は手動で優先順位を上げ、後任にも理由を伝えた。新しい設備だけを信じれば、古い港からの叫びを聞き逃す。いま人が住んでいる場所の一覧と、機械が警報を出す場所の一覧は同じではなかった。夜勤に交代するとき、彼女は符号の一覧を印刷して机へ置いた。


監視所の職員たちは避難船の見張りを交代で続けた。霧生四へ来ると決まったわけではない船のために、空いた係留口を一つ確保する。その小さな余白だけが、いま遠い人々へ用意できる場所だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。