うすい赤の向こう
霧生四の監視員、秋元莉央は、遠方の赤い反応を示す図を見つめていた。三日前から、位置の推定が毎回違う。増えたように見えた点が消え、別の位置に現れる。観測機器を入れ替えても変わらなかった。
「同じものを追っているんでしょうか」
部下が問う。莉央は反応の時刻を記した表を指した。
「それもまだ分からない」
避難船団への警告はすでに出してある。問題は、どの航路が使えなくなるかだった。星図上では安全とされた細い道に、観測の空白が伸びている。
彼女は灯標七の湊透へ、星が細く見えた記録だけを送った。赤いものの数を無理に推定しないためだ。透からは、別の港でも似た現象が報告されたと返信があった。ただし同じ原因かどうかは不明だという。
監視所の窓には、自分たちの居住星の青い光が見えていた。港へ降りる小型艇が点々と動く。その一つが遅れただけでも、救援の通信が届く。
監視席では誰かが休憩に立つたび、別の職員が同じ図を引き継いだ。疲れた目で赤い印を追っている人を、一人にしないようにした。
夜間、監視所では小さな星図の修正が続いた。位置の曖昧な赤い印を太くするほど、危険に見える範囲が広がる。かといって細くしすぎれば、艦長が誤解するかもしれない。莉央は信頼できる部分だけ線を引き、不確かな範囲には薄い陰影をつけた。地図を受け取る人が判断できるよう、元の観測条件も添えた。分からないことを正確に示す地図は、見た目が美しくなくても必要だった。
莉央は遠い赤い点と近くの小さな航行灯を同じ画面で見ていた。後者の位置だけは、いま正確に分かる。彼女は点検中の航路標識へ連絡し、故障した灯を先に直すよう頼んだ。




