八人の交代
霧生四の水再生施設では、川瀬弥生が夜間班の人数を数えていた。必要なのは十二人、今いるのは八人。残る四人は『星渡』の受け入れで別の部署へ移ったままだ。
「八人で回せます。ただ、休憩は取れません」
班長が告げた。弥生は頷きかけ、言い直した。
「休憩が取れないなら、回せていないのと同じです」
彼女は給水量を一時的に落とし、貯水槽に余裕をつくった。港湾局へ応援を頼んだが、誰もすぐには出せないという。そこで非緊急の検査を昼間へ移し、夜の作業を四つに絞った。
夜、応援に来たのは退職した技師が二人だった。最新の装置には慣れていない。弥生は危険な作業を任せず、計測表の確認を頼んだ。二人は古い設備の癖をよく覚えていた。
「この弁、閉めるときに音がするだろう」
年配の技師が言った。確かに、小さなきしみが聞こえる。
交代の手順をまとめるため、弥生は紙の当直表を施設の入口へ貼った。停電しても作業する人の名前が分かるようにしたかった。
退職した技師たちは、昔の施設で起きた小さな事故の話もしてくれた。弥生は年配者の言葉をすべて正しいと決めなかったが、古い弁の音については現物で確かめられた。作業を終えると、二人に夜食を渡した。仕事の礼にしては控えめだったが、技師たちは嬉しそうに受け取った。明日も来られるか聞くと、一人は家族の介護があると答えた。弥生は無理に誘わず、来られる日に来てほしいと伝えた。
弥生は弁の点検を予定へ追加した。人を増やすだけでは仕事は続かない。知っていることを分け、休める順番を決める必要があった。水の流れる音が落ち着いた頃、最初の班がやっと休憩室へ戻った。




