↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真珠艦隊――人類が敗走する宇宙に、オーケストラが響いた  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/228

誰も責めない港

出航前検査室には、船を止めてほしくない人々が並んでいた。


検査官の真鍋修司は、避難船『暁環』の空気循環弁に微細な亀裂を見つけた。運航責任者は顔色を変えた。船には出発を待つ三千人以上がいる。


「交換部品はありますか」


「正規品はありません。互換部品なら二つ」


「二つとも検査履歴が切れています」


修司はそう答え、出航票を一旦保留にした。運航責任者は机に手を置いたが、怒鳴らなかった。理由を知らないわけではないのだ。


代替弁を調べた整備士が、金属疲労のない一品を選んだ。修司は自分で圧力試験を追加し、規定より長い時間をかけて接続を確かめた。


「止めてくれて助かりました」


運航責任者が言った。修司は苦い顔をした。


「出発が遅れたことは消えません」


「でも、出てから壊れるよりいい」


検査室の時計が次の交代を告げた。外では待ちくたびれた乗客に温かい飲み物が配られていた。気の立った者もいる。それでも、交換作業を見ていた子どもたちは整備士に拍手した。


修司は承認印を押す前に、弁の製造番号を台帳へ写した。いずれ誰かが同じ型の部品を使う。そのとき、今日の試験結果が役に立つかもしれない。


交換した弁の近くには、古い塗装の下から別の製造番号が見えた。修司は記録を調べ、二十年前の改装時に流用された部品だと突き止めた。前任者の検査履歴が残っていたおかげで、圧力試験に使う基準が分かった。誰かが丁寧に残した記録が、年月を隔てて人を助ける。修司は次の担当者にも同じものを渡そうと決めた。


船がゆっくり動き出す。修司は窓から見送り、次の傷んだ船を呼び入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。