三つの港の返事
共同防衛評議会の書記官、榊原千景は、三つの補給港から届いた回答を並べていた。灯標七は護衛艦の修理部品を求め、霧生四は水再生装置の交換膜を求め、瑞帆六は医薬品の保存容器を求めている。どの港も自分の不足を正直に書いていた。しかし交換可能な物資の欄は空白だった。
「交換できないものばかりです」
若い書記が呟いた。千景は回答用紙を裏返し、港ごとの得意な作業を聞き直すことにした。瑞帆六には冷却材の加工設備がある。灯標七には検査室がある。霧生四には水の循環効率を測る技師がいる。物を送れなくても、試験結果や工程を送れるかもしれない。
評議会では、こうした小さな協力に軍の通信網を使うべきか議論になった。戦況の報告が最優先なのは当然だ。それでも補給を支える知識が届かなければ、艦も港も動かなくなる。
千景は通信時間を細かく分ける案を提出した。緊急通信を妨げない時間帯に、技術資料だけを一括送信する。決議にはまだ至らなかったが、三つの港からは担当者の名前が返ってきた。
評議会の議長は、戦場からの急報が入った場合にはすべての資料送信を停止する条件をつけた。千景はそれを受け入れたうえで、停止後に再開できる仕組みを提案した。途中まで届いた設計図は役に立たないことがある。通し番号と受領確認を残すだけで、通信時間の無駄が減る。地味な手続きだったが、三つの港の技師たちが同じ図面を見られるようになる。書記は決議前の草案に小さな丸印をつけた。
千景はその名前を一つずつ台帳に書き込む。星図では小さな点にしか見えない港々にも、困っている人と答えようとする人がいる。彼女の机に、初めて空白ではない連絡先が三つ並んだ。




