港を離れる前に
『星渡』の船長、浦上柊は、霧生四で受け取った整備報告を読んでいた。帰着時に傷ついた船団のうち、航行可能なのは予定より少ない。次の航路には、まだ避難を待つ居住区があるという。
「すぐ出ましょう」
若い乗員は言った。浦上は即答しなかった。燃料だけなら積める。水も補給できる。だが護衛艇の計器はまだ直っておらず、医療班は休めていない。
「全船の当直表を持ってきてくれ」
船員の勤務時間を並べると、連続勤務の者が想像以上に多かった。浦上は乗員を交代させるよう命じた。出航が遅れれば困る人がいる。それでも疲労で船を失えば、待っている人々の道も閉じる。
午後、霧生四の川瀬弥生が、水再生装置の交換膜を一つ貸すと伝えてきた。戻る見込みは分からない。それでも彼女は『向こうで使ってください』と言った。
浦上は礼を述べ、代わりに古い濾過器の修理手順を残した。小さな港同士が、ただ物を取り合うだけにはしたくなかった。
操縦士の浅海朔は、出航時刻が曖昧なままになることを気にしていた。浦上は、決まっていないと正直に掲示するよう命じた。待つ人々にとって空欄は不安だが、守れない時刻を書いても何も変わらない。朔は次の進捗報告を出す時刻だけを決めた。出航できるかどうかとは別に、知らせを待つ人へ連絡する責任がある。廊下には新しい掲示板が設置され、船員たちが交代で状況を書き込むことになった。
出航予定欄にはまだ確定の印がない。浦上はそれを責めず、夜勤を終えた船員が寝台へ戻っていくのを見届けた。船団が再び出るとき、誰かの眠りを借金のように積み上げたくはなかった。




